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第二話-【第六幕:朝日の審判】(挿絵あり)

 扉が開いた時、空はようやく白み始めたところだった。


 朝の最初の光が斜めに工房へ差し込み、床に散らばる残骸を照らした。四台の車椅子の破片。散乱した工具。昨夜の実験で炭になった木屑。そのすべてが、白日の下にさらされる。


 入口に、バロックが立っていた。


 金糸をふんだんに使った官服は、荒れ果てた工房の中で、ひどく場違いに輝いていた。背後には、完全武装の衛兵が六人。鎧には竜の紋章が刻まれている。竜の税を徴収する者たちの印だ。


挿絵(By みてみん)


 バロックは工房の中を見渡し、深く息を吐いた。


 まるで心から痛ましがっているような顔だった。


「ブレイク大師」


 その声は低く、重く、そしてよく整えられていた。


「どうやら、昨晩はずいぶんお忙しかったようですね」


 誰も答えなかった。


 バロックも、答えなど期待していなかった。


 彼はゆっくりと工房へ入る。靴音が、静まり返った空間に一つずつ落ちた。


 その視線は、床に膝をつくブレイク、隅で座り込むトール、涙を拭うサラ、顔色を失ったアイリーン、そして無言で横たわる車椅子の残骸を順番に撫でていく。


 彼は工房の中央で足を止め、しゃがみ込んだ。白い手袋をはめた指先で、床の炭化した木屑を軽く弾く。


「町で不幸な事故があったと聞きました」


 声には同情が混じっていた。


「尊敬すべきご老人が、あなた方の車椅子の破損で怪我をされたとか。私はお見舞いと、事情の確認を兼ねて参りました。何か力になれることはないかと思いまして」


 彼は立ち上がり、四台の残骸を見た。


「ですが、今の様子を見る限り、事態は私が思っていたより、ずっと深刻なようです」


 彼は壊れた車椅子のそばへ歩み寄り、灰色になった断面を見た。それから、床の炭を見下ろす。


「火を使ったのですね」


 彼は眉をひそめた。


「いろいろ試されたのでしょう。けれど……」


 視線が、残骸と炭化した木屑の間をゆっくり往復した。


「どれも、成功しなかった」


 ブレイクは顔を上げなかった。ただ、小さく頷いた。


 バロックはその姿を見て、さらに痛ましそうな表情を作った。


「ブレイク大師。私は率直に申し上げなければなりません」


 彼の声はやわらかかった。


 だが、そのやわらかさは刃を包む布のようだった。


「あなた方の状況に、私は大変心を痛めています。アイアンソーン工房は、かつてこの山城の誇りでした。ですが今は……」


 彼はそこで言葉を切った。


 沈黙が、工房の空気をさらに重くした。


「今、あなた方は、自分たちでは解けない窮地に立たされています。あらゆる手を試したのでしょう。だが結果は、床に散らばるこれです」


 彼は炭化した木屑を指した。


「それは、あなた方が無力であることを示している」


 その言葉は、釘のように家族の胸へ打ち込まれた。


 バロックはブレイクの前へ歩み寄った。


「事実を見ましょう。これは、あなた方の手に余る問題です」


 ブレイクの肩がわずかに震えた。


「さらに悪いことに、この事故はすでに山城中に知れ渡っています。昨日の女性の泣き声を、どれほどの人間が聞いたと思いますか。今、町の人々はアイアンソーン工房の品物が安全なのかどうかを疑っている」


 彼は静かに言った。


「信用は、崩れました」


 誰も反論できなかった。


「では、あなたは」


 アイリーンがようやく口を開いた。声は弱かった。


「何をしに……来たのですか」


 バロックは彼女を見た。目の奥に、ほんの一瞬だけ、別の感情がよぎった。


 だがすぐに、それは消えた。


「アイリーン嬢」


 彼は穏やかに微笑んだ。


「私は、あなた方を助けに来たのですよ」


「助ける?」


 トールが顔を上げた。声には怒りと皮肉が混じっていた。


「それが、助けだと?」


「ええ。助けです」


 バロックは少しも表情を崩さなかった。


「山王陛下は慈悲深いお方です。私があなた方の状況を報告した時、陛下は即座に工房を封鎖せよとはお命じにならなかった」


 彼はゆっくりと続けた。


「むしろ、あなた方に機会を与えようと仰せになりました。災いを、転機へ変える機会を」

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物語の続きを待つあいだ、よかったら作者のXにも遊びに来てください。


案内役のOC「考古エルフ」は、実はアーガスたちと同じ世界の住人です。

本編を読んだ方なら、思わぬ繋がりや小さな仕掛けに気づくかもしれません。


▼考古エルフの記録

https://x.com/LowAngleMuse/status/2075863155583185199?s=20


作者X:

Isekai Tour 異世界の旅

@LowAngleMuse


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執筆や読書のお供に、和風ファンタジーBGMもどうぞ。


幻想音坊|和風ファンタジーBGM

https://www.youtube.com/@EPIC-3.1415

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