第二話-【第二幕:作られた平常、見ないふりをする残骸】
早朝の陽光が工房の高い窓から降り注ぎ、わざとらしいほど忙しげな光景を照らしていた。
槌の音が次々と響く。炉は赤い炎を吐き、見習いたちは作業台の間を行き来していた。切る音、削る音、磨く音。空気には煤と熱い鉄の匂いが満ちている。だがその奥には、危機の影を無理やり押し隠そうとする、張りつめた空気があった。
「その車軸に気をつけろ! 傷をつけるな!」
トールは組み立て場の中央に立ち、いつもより大きな声を出していた。声の大きさで、自分の不安まで押し流そうとしているようだった。
「この分は西境へ出す品だ。あそこの貴族は細かい。少しの狂いも残すな!」
彼は笑っていた。だが、その笑みは硬い。
接合部を確かめる手つきは、以前よりずっと慎重だった。指で触れ、目で見て、もう一度指で確かめる。昨夜、父に命じられた三重の確認が、彼を必要以上に神経質にしていた。
ブレイクは作業台の前に座っていた。目の前には注文書が積まれている。彼は粗い指で羊皮紙の表面を撫でていたが、その動作はどこか機械的だった。一枚一枚の注文書は収入であると同時に、今では重圧でもあった。もし問題が広がれば、それらはすべて、彼らを責める材料になる。
「パラディアから、また手紙が来たわ」
アイリーンが車椅子を操って父のそばへ滑り寄った。手には届いたばかりの手紙がある。声は落ち着いていたが、少しだけ早口だった。
「車椅子を三十台、追加で注文したいそうよ。代金の半分を先に払うとも書いてある」
ブレイクは手紙を受け取り、目を通した。そして、しばらく黙った。
その注文は、まだ相手が破損事故を知らないという証拠でもあった。
「なら……受けよう」
少しの迷いがあった。だが結局、ブレイクは頷いた。
「予定通りだ。通常通りに動く」
原因が分かるまで、表面上の平常を保つ。それが、昨夜彼らが決めたことだった。
「当然だ!」
トールの声が工房に響いた。
「俺たちの手仕事に問題はない。すべてのホゾ、すべての軸受けを、俺が自分で三回見る!」
それは、他人へ向けた言葉であると同時に、自分自身へ向けた言葉でもあった。
ブレイクは息子を見た。何も言わず、ただ注文書に署名し、それをアイリーンへ渡した。
工房は忙しく動いていた。槌の音、炉の音、話し声。どれも普段と同じように聞こえる。だがよく見れば、見習いたちの手つきはいつもより慎重だった。
トールは何度も同じ箇所を確認していた。
ブレイクの視線は、時折、工房の片隅へ流れていく。そこには、パラディアから送り返された三台の残骸が置かれていた。
誰もその話をしない。
まるで口にしなければ、存在しないものにできるとでも言うように。
しかし、その残骸はそこにあった。
アーガスは工房の隅に立ち、三台の壊れた車椅子を見つめていた。調査のために残してあるものだ。他の者たちは意識的にその場所を見ないようにしている。だが彼だけは、目をそらさなかった。
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物語の続きを待つあいだ、よかったら作者のXにも遊びに来てください。
案内役のOC「考古エルフ」は、実はアーガスたちと同じ世界の住人です。
本編を読んだ方なら、思わぬ繋がりや小さな仕掛けに気づくかもしれません。
▼考古エルフの記録
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作者X:
Isekai Tour 異世界の旅
@LowAngleMuse
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