第一話-【第五幕:温かな祝宴と、砕ける前の夢】(挿絵あり)
アーガスはその幸福に胸を打たれた。
同時に、これから自分がその幸福を壊さなければならないのだという罪悪感に、内側から押しつぶされそうになった。
自分は、この家を動かした歯車の一つだった。
けれど今は、この美しい光景を砕く役目を負っている。
「行こう」
ブレイクは豪快に言った。
「母さんがご馳走を用意して待ってる。今夜は盛大に祝うぞ!」
夜の帳が下り、アイアンソーン家の食堂は明るい灯りに包まれていた。
豪快に焼かれた肉が、食卓の中央で音を立てている。黄金色の肉汁が火の光を受け、食欲を誘う光沢を放っていた。
泡立つ麦酒の香りが、暖かな空気の中に広がる。
サラは台所から料理を運び、何度も嬉しそうに食卓を見渡していた。
家族は皆、新しい服を着ていた。この数ヶ月の利益で新調したものだろう。
ブレイクは清潔な濃色の上着を羽織り、トールも珍しく髪を整えている。
アイリーンは淡い緑色の新しいドレスを着ていた。その色は、彼女の瞳をさらに明るく見せている。
新しく入った見習いたちも、食卓へ招かれていた。
彼らは少し緊張した様子で座っていたが、その目には敬意と感謝があった。
「さあ、みんな座れ!」
ブレイクの声が食堂に響いた。
「今日はいい日だ。我が家の首席工匠が帰ってきたんだからな!」
笑い声が上がった。
サラは夫の隣に座り、目元を少し赤くしていた。
家族が同じ食卓を囲んでいる。
その光景だけで、彼女の胸はいっぱいになっているようだった。
サラは、アーガスの好きだった料理を覚えていた。
焼きたてのパン。
山菜の煮込み。
香草をまぶした芋。
蜂蜜を塗った小さな菓子。
どれも、幼い頃の彼が食卓で少しだけ目を輝かせたものばかりだ。
それを見ただけで、アーガスは胸の奥が痛くなった。
母は、息子の帰りを祝っている。
父は、家が立ち直ったことを誇っている。
兄は、自分の腕を信じ始めている。
姉は、未来の計画を語る準備をしている。
そして自分だけが、これからそのすべてに冷水を浴びせようとしていた。
「食事の前に」
アイリーンが杯を掲げた。
澄んだ声に、食堂はすぐ静かになる。
「私から、一つ良い知らせを発表するわ」
彼女の目が輝いていた。
「今月、アイアンソーン工房の利益はまた新記録を更新したの。前の二ヶ月分を合わせたよりも多いわ。ヴァンデル商会は、うちの車椅子をさらに多くの都市へ広げることにした。注文はすでに三ヶ月先まで埋まっているのよ」
見習いたちが歓声を上げた。
「それだけじゃないわ。ドワーフの神殿からも特別な注文を受けたの。体の不自由な信徒のために、専用の車椅子を用意してほしいそうよ。これはただの商売じゃない。名誉なことだわ」
歓声はさらに大きくなった。
ブレイクが立ち上がり、杯を高く掲げる。
「我が家の本当の首席工匠、俺の息子、アーガスに乾杯!」




