第二巻あとがき:C4とバルスと、壊れた心の防衛線
『魔法工芸師』第二巻あとがき
――心の防衛線を抜かれた人たちと、あれこれについて
(お願いです、コメントください)
皆さん、こんにちは。鳳梨酥です。
今回も、あとがきという名の雑談をしに来ました!
先に言っておきます。
第二巻をまだ最後まで読んでいない方は、このあとがきを読まないでください。
普通にネタバレします。読んだあとで怒られても、私は泣きます(笑)
第二巻を書き終えて、今はかなり不思議な気持ちです。
一方では、ものすごく気持ちいい。
「そうそう、こういう戦い方が見たかったんだよ!」という戦略映画を一本見終えたような爽快感があります。
でももう一方では、ちょっとぞっとする。
ふと気づいてしまうんです。
この世界は、優しく主人公を成長させてくれる場所ではない。
いきなり盤面の上に放り投げて、こう問いかけてくる世界です。
「さて、君はどう生き残る?」
前日譚から第二巻まで、私の中では一応、三段階の流れがあります。
前日譚は、アーガスの新手村です。
家族との絆、地球人としての思考、そしてこの世界の法則に初めてぶつかる段階。ぶつかって、擦り傷だらけになって、それでも歩き出す話でした。
第一巻は、小さな池から大海へ流れ込んだ迷いの巻です。
仲間と出会い、学派と出会い、一角獣や雄獅子の価値観に触れます。地球の基礎法則と魔法世界の理が、初めて混ざり合い、お互いを探り始める巻でもありました。
そして第二巻『破防の要塞』。
ここから、物語の手触りが一気に硬くなります。
序盤の数話は、かなり剥き出しに書いたつもりです。
この世界は、アーガスの理念に対してかなり悪意がある。
理系男子を芸大の教室に放り込むようなものです。
君が悪いわけじゃない。
でも、君はここに属していない。
そう突きつけられるような空気を出したかったんです。
そして第二巻で一番書きたかった核が、これです。
騎士精神、貴族精神。
それに対する、効率至上の工業化思想。
なので、この巻では価値観が何度も真正面からぶつかります。
大貴族同士。
ヴァレリウスとカテリーナ。
大貴族と中小貴族。
伝統的な決闘の美学と、流れ作業のような戦術。
みんな、それぞれ自分の要塞を守っています。
この巻で書いていて一番楽しかったのは、やっぱりあの「気持ちいいのに、ぞっとする」降格攻撃です。
はい。
完全に、次元の違う攻撃です。
中世の重装兵が、いきなり第一次世界大戦型の要塞概念に出会ったらどうなるのか。
この絵面は、書いている私も笑いました。
貴族たちはまだ、
「正面から堂々とぶつかってこそ戦いだ!」
と思っているのに、アーガスは地球の戦争観を容赦なく持ち込んでくる。
しかも章タイトルも、かなり直球でした。
「地球から来た悪意」。
そういうことです。
怖いのは、爆発そのものではありません。
むしろ怖いのは、あの冷たさです。
情熱もない。
叫びもない。
英雄の登場もない。
アーガスの塹壕に隠れた生徒たちは、必要な呪文を唱える。
立ち上がる。
狙う。
撃つ。
しゃがむ。
それだけです。
工場の流れ作業みたいに、清潔で、無駄がない。
敵はもはや人間ではなく、歩いてくる点数です。
そして、魔法地雷の発明。
これも、私がかなり好きな、そしてかなり怒られそうな細部です。
あの制御用のボタンに刻まれている言葉。
「光ったら押せ」
はい。
これがアーガス式フェイルセーフの極致です。
皆さん、どう思います?
こんなものが真面目な戦場に置かれていたら、格好いいのか、笑っていいのか、分からなくなりませんか?
ちなみに、もし自分が兵士だったら、あのボタンを押してみたくなりますか?
コメントで教えてください。私は見たいです(笑)
さて、ここからが本題です。
リナ・ヴァンデル。
第二巻のVIPです。
そして、かなり私の私情が入っています。
はい。
今のところ、彼女はかなり女一号に近い位置にいます。
リナは、ただの甘いヒロインではありません。
もちろん、主人公に都合よく恋をするだけの花瓶でもありません。
私の中では、少しだけ『狼と香辛料』のホロや、『まおゆう』の魔王に近い感覚があります。
高知能で、共犯者型の女性キャラクター。
そして、ある意味ではアーガスよりもずっと賢い。
彼女は黒でも白でもありません。
ましてやピンクでもない。
魅力的な灰色です。
切っても中身まで灰色です。
ちなみに、ピンク枠に見えて中身が黒いタイプはクリシーです。
ここは判定済みです。
第二巻は、リナとアーガスの対手戲がかなり多い巻でもありました。
女王の授業。
要塞での対決。
そして最後の部屋での、ほとんど余白だけで進む、眩しすぎて見えないような場面。
知能の高い二人が、真正面から激しくぶつかる。
でも、私が一番好きなのは、リナの賢さそのものではありません。
彼女が初めて見せた、制御しきれない裂け目です。
彼女は本来、盤面を支配する側の人間です。
それなのに、ある瞬間だけ失控する。
焦る。
苛立つ。
そして、ほとんど崩れるように、アーガスの足を折ってでも閉じ込めるべきだったと言ってしまう。
さらに、あの一言です。
「見間違いよ。そこには誰もいないわ」
分かる人には分かると思います。
あの台詞は、隣にいた学生へ向けた言葉ではありません。
完全に、あの鋼の理系男子へ向けた言葉です。
そして、彼女の心の中の「大馬鹿者」。
怪物じみた仕組みを作れる男なのに、自分がどれだけ危険な場所に立っているのか分かっていない。
だから彼女は、怒っている。
心配している。
呆れている。
でも、同時に認めてもいる。
理系男子と心理戦女子がぶつかると、こうなります。
書いていて、私も思いました。
ああ……これはおいしい、と。
こほん。
さて、ここで少し遊びましょう。
第二巻の副題『破防の要塞』には、いくつかの意味があります。
私の副題は、だいたい一つの意味だけではありません。
皆さんも先に考えてみてください。
はい、こういう遊びが好きな作者です。
まず一つ目。
物理的な防衛線の突破。
一番表面的な意味です。
アーガスの要塞は、実際に破られます。
リナとクリシーによって、攻略されます。
二つ目。
伝統的な価値観の防衛線が抜かれる。
エルドリアの伝統的な考え方を代表する教師たちは、地球由来の第一次世界大戦的な発想に真正面から殴られました。
戦争は、決闘ではない。
詩人の討論でもない。
画家の優劣を競う場でもない。
戦争は数学です。
最小の代価で、最大の成果を取る行為です。
三つ目。
ヴァレリウスの防衛線。
彼は最初、かなり嫌な奴に見えたと思います。
「鳳梨酥、もしかして使い捨ての悪役を書いているの?」
と思った方もいるかもしれません。
ふふ。
そんなわけないじゃないですか。
彼は洗白されたのか。
私は少し違うと思っています。
彼は防衛線を抜かれたあと、自暴自棄になりませんでした。
むしろ、自分の頭の中にあった知識の要塞を、自分で解体し始めた。
そして、あの場面です。
戦士の誓い。
胸を二回叩く、あの動作です。
あの意味に気づいた方、お願いです。コメントで教えてください。
どれくらい刺さったのか、私は知りたいです。
四つ目。
カテリーナの防衛線。
錬金薬を飲み、絶対的な力を手に入れたと思い込んだ彼女。
けれど、リナの策に敗れる。
「私が負けるはずがない」
という心が崩れる瞬間。
あれはかなり生々しかったと思います。
五つ目。
ミリィの防衛線。
彼女が魔法鋼印による魔法陣の量産を見た瞬間、あれは中世の写本職人ギルドが初めて印刷術を目撃したようなものです。
魔法とは、精密で、遅くて、一筆一筆積み上げるもの。
彼女はそう信じていました。
でも、それが突然、
「力さえあれば、誰でも押せる」
ものに変わってしまった。
しかも、それを作ったのは、彼女の大切な仲間です。
この防衛線の崩れ方も、私はかなり重いと思っています。
そして、本巻のMVP。
リナの多段式防衛線崩壊です。
第一段階。
要塞の効率を見た時。
彼女の心の中では、たぶんこうです。
「ああ、終わった。アーガスがまた自分で火種を撒いた」
第二段階。
要塞内での会話。
人心を操る側だと思っていた彼女が、制御しきれないほど感情を乱します。
アーガスの足を折ってでも閉じ込めたい、とまで思ってしまう。
これは、かなり危ない感情です。
「あなたを制御できないなら、動けなくしてでも守る」
という、怖い方向の保護欲です。
第三段階。
さらに致命的なのは、彼女が感情の主導権を手放してしまったことです。
すねる。
無視する。
そして、あの台詞を言う。
「そこには誰もいないわ」
人心を玩具のように扱える彼女が、まさかそんな低級で、人間くさい感情に振り回される。
正直、あの侍女の神助攻がなかったら、この二人はかなり危なかったと思います。
そして最後は、アーガスです。
鋼の理系男子が、すねている女性に遭遇するとどうなるのか。
経験がある方なら、分かると思います。
かなり大変です。
あの「俺は何か間違えたのでしょうか」と、リナの「他には?」の応酬。
完全に脳内処理が停止しています。
書いていて、とても楽しかったです。
ごめんなさい。
さらに、読者さんの防衛線も抜かれていたら嬉しいです。
「私は普通にファンタジー小説を読んでいたはずなのに、あれ? いま何を読まされているんだ?」
そう思ってくれた方がいたら、かなり嬉しいです。
この作者、ファンタジー世界で第一次世界大戦と流れ作業をやっている。
ファンタジー世界でフェイルセーフ設計の話をしている。
待って、C4まで出てきた。
しかもバルスって言った。
もしそんなふうに、
「あれ、これ妙に現実的で怖くない?」
と思った場面があれば、ぜひ教えてください。
どの場面からツッコミ始めましたか?
さて、だいたいこんなところです。
もし皆さんが他にも「ここも防衛線を抜かれていたのでは?」と思う層を見つけたら、ぜひコメントで教えてください。
実はまだあります。
でもそこは、いったん隠しておきます。ふふ。
最後に一つだけ。
皆さん、本当に静かすぎませんか。
私は反響がほしいです……!
いつも最新話まで追ってくださっている読者さんがいることは分かっています。
本当に嬉しいです。
でも、皆さん静かすぎます。
更新するたびに、虚空へ向かって叫んでいる気分になります。
作者の心は意外と割れやすいです。
なので、お願いです。
一言でいいので、コメントください。
答えやすいように、選択肢も置いておきます。
あなたが一番気持ちよかった、または一番ぞっとした名場面はどれですか?
A 塹壕の「立つ → 詠唱 → しゃがむ」流れ作業
B 「光ったら押せ」のフェイルセーフボタン
C 「そこには誰もいないわ」の冷たい社交スマイル
D 「C4なら全部片づく」&「バルス」
E 戦士の誓い、胸を二回叩く場面
F 魔法鋼印による量産。ほぼ印刷術誕生の衝撃
あなたはどちら派ですか?
① 栄誉/騎士派
② 効率/工業派
③ 両方ほしい派
リナのアーガスへの感情は、今のところ何に見えますか?
① 欣賞
② 好奇心
③ 独占欲
④ 長期的な投資
⑤ 玩具
ここまで読んだ証として、コメントに
「光ったら押せ」
と書いてくれてもいいです。
あるいは「www」だけでも、私はかなり喜びます。
質問も大歓迎です。
リナはいったい何者なのか。
アマーラ教授は善人なのか、そうでないのか。
ヴァレリウスは洗白されたのか、それとも昇華したのか。
ミリィはどの道へ進むのか。
全部を今答えられるわけではありませんが、
一緒に考えたり、予想したり、少し言い合ったりするのは大歓迎です。
気づけば、またかなり長く話してしまいました。
本文より長くなりそうです(笑)
それでは、次の巻でお会いしましょう。
最後に、少しだけ。
次の巻は、「家」と「故郷」の方向へ戻ります。
でも、家に帰ることが安全を意味するとは限りません。
……はい。
今日はここまでです。
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【あとがき】
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次の章も、全力で鍛えます。
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