第十二話:【第四幕:戦士の誓い】(挿絵あり)
ヴァレリウスは、ようやくその複雑な感情から我に返った。
彼は大股でアーガスへ歩み寄り、校内報をひったくるように受け取った。
そこに書かれた自分の英雄的な功績を指差し、羞恥に震える声で言う。
「英雄? 指揮だと? こんなもの、全部でたらめだ!」
指が、挿絵の上を強く叩いた。
「俺はただ、お前の砦の中で、お前の方法に従って、自分に与えられた役目を果たしただけだ!」
声が、少しずつ低くなる。
最後には、歯を食いしばるような響きになった。
「俺は最初から最後まで、あの仕組みがどう動いているのかすら理解できていなかった。防衛設備への深い理解? 軍事的才能? そんなものは全部、お前が設計したものじゃないか!」
ヴァレリウスは振り返った。
そして、クラス全員の前で、初めてアーガスに向かって高慢な頭を下げた。
「これは俺の手柄じゃない!」
声が教室に響き渡る。
「これはお前のものだ! 奴らは、お前の力を何一つ分かっていない!」
教室全体が呆然とした。
あの誇り高く、決して頭を下げないヴァレリウス・アウグストゥスが、今この瞬間、一介の平民の前で自分の敗北を認めたのだ。
ヴァレリウスは、アーガスの目をまっすぐ見た。
その語気には、もう軽視はなかった。
あるのは、対等な相手へ向ける承認だけだった。
「アーガス・アイアンソーン。俺は、以前のお前に対する愚かな発言をすべて撤回する」
彼は深呼吸した。
「お前の戦術は、正々堂々とは言いがたい。だが、有効だった。お前は、尊敬に値する好敵手だ」
そこで一度、言葉が止まる。
ヴァレリウスは歯を食いしばり、自分にとって最も難しい言葉を絞り出した。
「お前は、この俺、アウグストゥス家の者と同じ場所に立つことができる存在だ」
教室内は静まり返った。
カテリーナ派の者たちは目を丸くしている。中小貴族や平民の学生たちは、複雑な眼差しでアーガスを見ていた。
アーガスは、目の前の軍人貴族を見つめた。
栄誉を命のように扱う、この少年の価値観は、彼にはまだ理解しきれない。
だが、燃えるような瞳に宿る純粋さは分かった。
これは計算ではない。
侮りでもない。
戦士として、目の前の相手を認めている。
「俺は……」
アーガスは口を開いた。
けれど、何を言えばいいのか分からなかった。
最終的に、彼はただ頷いた。
「お前の承認を受け入れる」
ヴァレリウスはそれを聞くと、アーガスの胸を拳で二度、軽く叩いた。
そして、重荷を下ろしたように笑った。
それは彼がアーガスの前で初めて見せた、心からの笑みだった。
教室のどこかで、息を呑む音がした。
軍人の家に生まれた学生たちが、信じられないという顔をしている。
一人が、無意識に立ち上がった。
「あの動作……」
声には衝撃が混じっていた。
「見たか? 胸を二回叩いたぞ……」
「戦士の誓いだ!」
別の同級生が息を呑む。
「知らないのか? 戦場で命を預けてもいい戦友にだけする動作だ」
「心臓の位置を叩くんだ」
三人目の学生が、呆然と呟いた。
「俺の命は、お前の命だ。そういう意味だ。軍人の家では、最も重い誓いの一つだぞ……」
「アウグストゥス家の人間が……平民に……」
誰かの声が、震えていた。
アーガスは呆然とした。
自分の胸元を見下ろす。
そこにはまだ、ヴァレリウスの拳の温度が残っている気がした。
この動作には、そんな意味があったのか。
彼は顔を上げ、ヴァレリウスの炎のような瞳を見た。
それは、貴族が平民へ与える施しではなかった。
上位者が下位者へ落とす承認でもない。
戦士から戦士へ渡された、対等な誓いだった。
その感覚は、とても奇妙だった。
重くて、けれど、どこか温かかった。




