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第十二話:【第二幕:抹消された設計者】

 第一位。


 聖白学院一年一組。


 記事の扱いは、驚くほど小さかった。


 そこには、公式文書のような短い説明があるだけだった。


 今回の対抗戦における最大のダークホース。同クラスは堅実な戦略を採用し、試合開始直後から人里離れた峡谷に拠点を置いた。各クラスが激戦に突入する中、聖白学院一年一組は戦力を温存し、終盤に大量の旗を奪取。撃破点こそ低かったものの、圧倒的な奪旗点により総合第一位を獲得した。審査委員会は、同クラスが規則内における戦術的知恵を見事に体現したと評価している。


 アーガスはその文面を読み、微かに眉をひそめた。


 堅実。


 戦術的知恵。


 規則内。


 称賛に見える言葉の一つ一つが、遠回しに彼らを持ち上げている。だが同時に、正面からの戦闘については意図的に触れられていなかった。


 教室で、疑問の声が爆発した。


「待って。聖白学院?」


 ある学生が呆然と言う。


「あの、一日中『正々堂々』を口にしている聖白が?」


 ヴァレリウスは青ざめた顔で報道を睨みつけた。


 そして、皮肉を込めて聖白学院の院訓を読み上げる。


「聖なる光を鏡とし、我が心の正々堂々たるを映し出す。神に従い、光明なる行いを」


 短い沈黙。


 次の瞬間、誰かがこらえきれずに吹き出した。


「我が心の正々堂々たるを映し出す、だって? 峡谷に隠れた心が映し出したのが、これかよ」


 教室のあちこちから、低い笑いが漏れた。


 アーガスは、その嘲笑には加わらなかった。


 彼は入学時、聖白学院の学生が真っ先に自分を嘘つきだと非難した場面を思い出していた。


 そして今。


 言葉では形にしにくい皮肉が、胸の奥でじわりと広がる。


 アーガスは、さらに記事を読み進めた。


 第二位。


 青風学院二年一組。


 記事の中心にいたのは、マルコ・ドラクロワだった。


 勇ましい挿絵と共に、校内報は大きな紙面を使って彼を称えていた。


 マルコ・ドラクロワ君は、果断な意思決定と卓越した戦略配置により、青風学院二年一組を率いて優れた戦績を収めた。副官マシュー君へ適切に指揮を委任し、正面強襲を成功させたその判断は、貴族にふさわしい騎士道精神と指揮能力を示すものである。審査委員会は、彼の気迫と統率力を高く評価した。


 アーガスの視線は、記事の中で一つの名前を探していた。


 ようやく、目立たない隅に、それを見つける。


 リナ・ヴァンデルさんは後方において、陽動部隊へ安定した支援を提供した。


 それだけだった。


 たった一行。


 アーガスの指が、その文字の上で止まる。


 彼女が、すべての戦術を組み立てたはずだ。


 陽動と主力の連携も、防衛線を崩す鍵も、すべてリナの読みだった。


 それなのに、校内報が彼女に与えた評価は、安定した支援。


 あまりにも不公平だ。


 アーガスは、あの日、砦の中で見たリナの余裕を思い出した。自分の仕組みを読み解き、崩す手順を正確に組み立てていた、あの青い瞳を。


 この報道は、彼女を侮辱しているようにさえ見えた。


 彼は深呼吸し、さらにページをめくった。


 第三位。


 灰色学院一年一組。


 そこには、ヴァレリウスが塹壕で反撃を指揮する挿絵が添えられていた。


 彼は、孤独に陣地を守り抜いた悲劇の英雄として描かれていた。


 灰色学院一年一組は、驚異的な防衛能力を示した。指揮官ヴァレリウス・アウグストゥス君は、優れた軍事的才能と、防衛設備への深い理解により、予想外かつ効果的な防衛体制を築き上げた。地形を利用した戦術思考は、多くの精鋭チームを退ける結果につながった。


 特筆すべきは、ヴァレリウス君が東側防衛線において、青風学院精鋭部隊の猛攻を受けながらも先頭に立ち、最後まで力戦したことである。防衛線は最終的に突破されたが、彼が示した勇気と戦闘精神は、学院の模範と呼ぶにふさわしい。


 あの天を揺るがすような最後の爆発については、記事の端でごく短く触れられているだけだった。


 試合終盤、双方の激しい魔法の応酬により、防衛線内部で不明な連鎖誘爆が発生し、大量の参加者が同時に退場する事態となった。これは予期せぬ事故であり、最終順位には影響しない。


 アーガスの名は、どこにもなかった。


 一文字も。


 彼は静かに文字を見つめていた。


 精密な防衛体制。


 遠隔充填の罠。


 秒単位で計算した自爆式の反撃。


 そのすべてが、ヴァレリウスの軍事的才能へ帰属させられていた。


 そしてアーガス自身は、まるで最初から存在していなかったかのように、公式の記録から完全に消されていた。


 彼はさらにページをめくり、最後の欄にたどり着いた。


 校長からのメッセージ。


 本号の校内報は、私が査読した後に発行された。クラス対抗戦は、各クラスの優れた資質を示す機会となった。すべての学生が、この経験を糧とし、今後さらに精進することを願う。


 パラディア王立魔法学院校長

 オフィーリア


 アーガスの指が、その短い文章の上で止まった。


 何の実質もない、形式的な結びの言葉。


 それが、この選び取られた報道の最後に置かれている。


 つまり、校長は見た。


 この内容を見たうえで、掲載を認めた。


 ぼんやりとした不安が、胸の中に湧き上がる。


 だが、それが何なのか、アーガスにはまだ言葉にできなかった。

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