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第十二話:【第一幕:虚構の栄光】

第十二話:無声の戴冠

 学期末を目前にした、最後の数回の授業。


 トーマス導師の教室では、窓の外に粉雪が舞っていた。冷え込んだ空気のせいで、学生たちは厚手の冬着を着込み、指先をこすり合わせながら席についている。


 教室の中には、もうすぐ訪れる休みへの浮ついた気配と、試験を終えたあとの落ち着かなさが混ざっていた。トーマス導師はいつもの疲れた声で、冬休み中の注意事項を読み上げている。


 アーガスは隅の席に静かに座っていた。


 導師の注意は、ほとんど耳に入っていない。彼の頭の中では、今学期の成果が一つずつ整理されていた。


 クラス対抗戦の正式な結果は、まだ発表されていない。


 それでも、少なくとも一つだけは確かだった。


 リナ先輩には、自分の能力を証明できたはずだ。


 その時だった。


 バーン!


 教室の扉が勢いよく開け放たれた。扉が壁にぶつかり、チョークの粉が白く舞う。


 ヴァレリウスが息を切らして駆け込んできた。手には、まだインクの匂いが残る校内報を高く掲げている。導師の呆然とした視線など、まるで目に入っていない。


 どうやら学生会から、最新号をいち早く手に入れたらしい。


 その姿は、まるで戦場から勝利の報を持ち帰った伝令のようだった。


「申し訳ありません、導師!」


 ヴァレリウスの声は、興奮でいつもより高くなっていた。


「ですが、どうしても今、発表しなければならない戦果があります!」


 彼は校内報を勢いよく広げ、待ち望んでいた一面の見出しを大声で読み上げた。


「前代未聞! 創立以来初、一年生による総合第一位獲得!」


 教室が、一瞬で沸き返った。


「なんだって!? 一年生が!?」


「俺たちか? 俺たちのクラスのことか!?」


「絶対そうだ! 俺たちはとんでもない人数を退場させたんだぞ! 最後の爆発だって、どう考えても俺たちだ!」


 学生たちは次々と席から立ち上がり、興奮して顔を寄せ合った。


 かつて塹壕の中で共に戦った中小貴族たちの顔には、信じられないほどの歓喜が浮かんでいた。最初にカテリーナへ従い、攻撃側へ回った貴族の子供たちでさえ、期待を隠せずにいた。


 第一位は、クラス単位で与えられる。


 栄誉は、全員のものになる。


 ヴァレリウスは教室の中央に立ち、晴れやかな笑みを浮かべていた。胸元の雄獅子の紋章までもが、その栄光の中で輝いているように見える。


 彼は校内報を高く掲げ、よく通る声で言った。


「諸君! これこそが我々の戦果だ! 俺は言ったはずだ。団結しさえすれば――」


 彼の視線が、隅に座るアーガスへ向けられた。


 その目には、隠しきれない承認と感謝があった。


「互いを信じ合いさえすれば、不可能なことなど何もない! 観測塔に突き刺さったあの旗こそが、我々の栄誉だ!」


「第一位!」


「第一位!」


「第一位!」


 学生たちが興奮して叫ぶ。


「俺たち、本当にやったんだな!」


 誰かの声が震えていた。


 教室全体が、まもなく訪れる栄光の喜びに浸っていた。トーマス導師でさえ、安堵したように微笑んでいる。


 誰もが待っていた。


 ヴァレリウスが詳しい戦報を読み上げ、自分たちのクラスの名が一面に刻まれているのを確認する、その瞬間を。


 ヴァレリウスは深く息を吸い、ページをめくった。


 だが、そこで声が止まった。


 顔にあった歓喜が、一秒のうちに凍りつく。


 次に、それは砕けた。


 最後に残ったのは、裏切られた者のような激しい怒りだった。


「これ……これは一体、何なんだ!?」


 彼の指が震えながら校内報を指す。声は、喉を締めつけられたように嗄れていた。


「おかしい……こんなの、絶対におかしい!」


 怒りが理性を押し流した。


 ヴァレリウスは校内報を床へ叩きつけた。乾いた音が、教室に響く。


 周囲の学生たちは顔を見合わせた。何が起きたのか、誰にも分からない。


 アーガスは、好奇心と困惑に満ちた視線の中、静かに立ち上がった。


 床に叩きつけられた校内報を拾い上げる。


 紙にはまだ、インクのかすかな熱が残っていた。ヴァレリウスの指が強く押しつけられたせいで、端には深い折り目がついている。

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