第十一話:【第五幕:無音の白い爆発と、創立以来の特異点】(挿絵あり)
その一瞬、時間が琥珀の中に閉じ込められたように止まった。
アーガスの親指が、押し込まれる。
リナの戦闘本能が思考を追い越した。
手の中の氷の錐が、青い流光となって放たれる。迷いはなかった。刃はまっすぐ、アーガスの胸へ飛んだ。
氷の錐が彼の胸を貫く。
次の瞬間、アーガスの体は青い光球となり、対抗戦の規則によって空へ弾き出された。
彼の顔には苦痛がなかった。
最後に残っていたのは、長い荷を下ろしたような、ひどく静かな笑みだった。
そして同じ瞬間、地表の下で、眠っていた魔力回路が一斉に目を覚ました。
前触れはなかった。
轟音さえ、最初は聞こえなかった。
中央砦の真下から、巨大な白い光が膨れ上がった。
それは火ではなかった。雷でもなかった。昼の太陽を無理やり地面の中へ押し込め、それが内側から破裂したような光だった。
白は石壁を飲み込み、罠を飲み込み、潜んでいた影を飲み込み、リナの凍りついた表情さえ飲み込んだ。
遅れて、衝撃が来た。
地面が獣の背のように跳ねる。土が裂け、木々が根から引き抜かれ、空気が白い波となって外へ押し出された。
砦の周囲に潜んでいた各クラスの精鋭たちは、反応する間もなかった。
青い光球が、一つ、また一つと地上から打ち上げられていく。
それは流星雨に似ていた。ただし、空から地へ落ちるのではなく、地から空へ逆さに降る流星雨だった。
半百近い青い光が、空中で優美な弧を描いた。
この盛大で、残酷で、どうしようもなく馬鹿げた花火に、最後の点を打つかのように。
爆発の中心では、灰色の旗が根元から引き抜かれていた。
一年一組を示すその旗は、衝撃波に呑まれ、まるで神々が投げ放った標槍のように天空へ撃ち上げられた。
旗竿は空中で狂ったように回転しながら白煙を切り裂き、一直線に観測塔へ向かう。
その速度は、もはや投擲物ではなかった。
砲弾でもなく、矢でもなく、戦場そのものが最後に吐き出した意思の塊だった。
次の瞬間。
灰色の旗は観測塔の外壁へ激突した。
石壁が悲鳴を上げる。
分厚い外壁を砕きながら旗竿が深々と食い込み、まるで巨人が城壁へ杭を打ち込んだかのように突き刺さった。
轟音の余韻が消えたあと。
ドスン――という重く鈍い衝撃音だけが、遅れて観測塔全体を震わせた。
旗は、誰の手も届かない高さに掲げられていた。
灰色の布が風を受けて翻るたび、それは勝者の旗というより、神話の終幕に打ち立てられた戦碑のように見えた。
爆発の余波が収まったあと、戦場は白い土煙に包まれていた。
魔力が燃え尽きた後の刺すような匂いが漂い、砕けた石と湿った泥の粉が喉に張りつく。誰もすぐには声を出せなかった。
勝利の歓声はなかった。
敗北の悲鳴も、しばらくは聞こえなかった。
ただ、観測塔の外壁に突き刺さった灰色の旗だけが、風の中で静かにはためいていた。
まるで墓標のように。
この狂気に満ちた、あまりにも正確な大破壊の中心に立てられた、一本の墓標のように。
一週間後。
あのクラス対抗戦が巻き起こした土煙と余波は、ようやく学院の中で沈み始めていた。
学生たちの生活は、一見すると日常へ戻ったように見える。けれど、廊下の声は以前より少し低く、食堂の噂話は以前より長く続いた。
誰もが待っていた。
あの馬鹿げた試合に、学院がどんな名前を与えるのかを。
その朝、最新号のパラディア王立魔法学院校内報が、各学院の掲示板へ貼り出された。
人だかりができるまで、時間はかからなかった。
一面を飾っていたのは、大きすぎるほど大きな見出しだった。
創立以来初。
一年生による総合第一位獲得。
その文字を読んだ瞬間、誰もが同じ光景を思い出した。
白い爆発。
逆さに降る青い流星雨。
そして、今もなお観測塔の外壁に突き刺さったままの、あの灰色の旗。
驚嘆と困惑と、少しの恐怖が、学院のあちこちで静かに発酵していく。




