第六話-【第四幕:深夜の錬金工房。エリートに見捨てられた敗者たちの下克上】(挿絵あり)
数日後、ミリーはアーガスが何日も図書館に来ていないことに気づき、様子を見にやって来た。
彼女がアーガス専用のボロい錬金実験室に向かうと、中から金属を叩きつける「カンカン、ガンガン」という音が聞こえてきた。
不審に思いながらドアを押し開けると、目の前の光景に瞬時に度肝を抜かれた。
実験室の中は、まるで慌ただしい工場のようだった。
アーガスと残った同級生たちが一列に並び、山積みの小さな鉄片に向かって、懸命にハンマーで「スタンプ(押印)」をしていたのだ。
机の上には奇妙な形をした金型や工具が散乱し、空気中には金属の錆びた匂い、化学薬品の刺激臭、そして汗の塩辛い匂いが充満していた。
ハンマーを打つ音が次々と石壁の間に反響し、鼓膜が痺れるほどだった。
「ア、アーガス!? あなたたち、こんなところで一体何をしてるの!?」
ミリーは目を丸くして尋ねた。
アーガスは顔を上げた。
少し疲れていたが、目には興奮の光が輝いていた。
「これは『魔法の鋼印』だよ!」
彼は手元の作業を止め、彼女に説明した。
「俺の模索の結果、本来は原材料しか作り出せない疑似魔法を、『曙光』を直列接続することで、簡単な形状の完成品を直接創り出せるようになったんだ。これがその完成品さ!」
アーガスはミリーに鋼印を一つ渡した。
それは拳ほどの大きさの鉄の塊で、ずっしりとした重みがミリーの手首をわずかに沈み込ませた。
鋼印からはほのかな金属の冷たい香りが漂い、機械油と魔力の残留が混じった微妙な気配があった。
表面には線の細かく少し複雑な魔法陣が刻まれており、灯りの下で冷たい光沢を反射し、触感は粗雑で頑丈だった。
アーガスは製作中の小さな鉄片の山を指差した。
「これがあれば、もう熟練の付与術師が一筆一筆彫刻する必要はない。どんな見習いでも、力さえあれば、一日の間に何百個もの、誤差千分の一以下の全く同じ魔法陣を『印刷』できるんだ」
「俺の故郷じゃみんなこれで家紋のスタンプを押してる。だから魔法陣のスタンプにも使えると思ったのさ。これこそが……工芸の未来だよ」
そう言い終えると、アーガスは鉄片に魔力を注入した。
鋼印の上の魔法陣が微光を放ち始めた。
鉄片は温かくなり、雷雨の前の空気のような、微かなオゾン臭を放った。
「こいつは魔力を受信した後、少しでも圧力がかかると……バーン!って爆発するんだ! 凄いだろ! しかも爆発した後も、再充填すればまた使い続けられるんだ!……」
「あ! 君、隣のクラスだったな! しまった、今の話は聞かなかったことにしてくれ……」
アーガスは遅れて気づき、ミリーに秘密にするよう頼み込んだ。
ミリーは笑って承諾し、その場を離れた。
彼女もこれが一体何なのかは分からなかったが、どうやら見たことのない罠の法陣らしいということだけは、おぼろげに理解できた。
ミリーが立ち去る時、彼女の内心は複雑だった。
彼女はアーガスのあの常軌を逸したアイデアを誇りに思う一方で、彼がこれからこの「未知」の戦術を使って貴族たちと対抗しようとしていることに、深い懸念を抱いていた。
しかし、彼女をさらに不安にさせたのは、一角獣学派の伝承者としての本能的な反応だった。
速すぎる……。
この速度は、先祖の手稿にある「精緻な彫刻」という理念を根底から覆している。
熟練の職人が何日もかけるはずの複雑な陣式が、まるで型抜きクッキーでも作るように、次々と大量生産されている光景だった。
これは工芸ではない。彼女には到底理解できない、乱暴な複製術だ。
しかし……彼女は認めざるを得なかった。
アーガスがその印字された鉄片に魔力を注入した時、魔法陣の稼働は驚くほどスムーズだったのだ。
魔力は「量産された」線の中を自然に流れ、いささかの阻害も歪みもなかった。
これは彼女の世界観を揺るがせた。
先祖たちがこだわり続けた「一筆一筆、心を込めて彫刻しなければならない」というのは、本当に必要なことだったのだろうか?
この工業化された魔法工芸、これこそが本当に……正しい道なのだろうか?
この複雑な感情。友人への関心、未知への不安、そして自身の信念への疑念が、アーガスに対する彼女の思い入れが、自分が思っていたよりもはるかに深いことを彼女に気づかせた。




