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第三の刺客、その名は湊山 椿!

『”アンチ呉竜府ゴルフ九神将” 第三の刺客、出ませいッ!!』

 イーカラハの宣言に応えて、次の一人がマントとフードをばさぁっ! と取る。

 さてさて、引きこもりちゃんに貴族のおぼっちゃまと来て、次は何?


「がはははは、ワシが次の相手、湊山 椿(みなとやま つばき)じゃあっ!」

「……土方のオッサンですかい」

 現れたのは工事用ヘルメットにランニングシャツに腹巻き、土方ズボンに軍手に長靴という、どこから見ても工事現場のオジサン丸出しな出で立ちの小太りな中年オヤジだった……だからシルエット時とのイメージのギャップはどうにかなんないの?


「ほんでこれがワシのゴルフ魔具マグ、 ”ゴルフ場解体ユンボ” じゃあっ」

 そのおじさんが自分の乗っている黄金の月面車のスイッチをポチッと押すと、とたんにその車ががっちょんがっちょんと変形を始め、やがて立派な黄金のショベルカーへと変身を遂げた……()()()魔具マグとは?


「で、井伊さんとやら。次に更地にするのはどのコースだい?」

 え……更地にするって、ゴルフ勝負じゃ、ない、の?

『ウム、今から用意する……出でよ ”倒産寸前のゴルフコース”!』

 そう言ってイーカラハがレーキを振るうと、月面の荒野に新たなゴルフコースが出現した……んだけど。


「うわぁ、ヒドいわね、ここ」

 草も木も生え放題、グリーンすら草むら状態で、フェアウェイなんか高い草が生い茂っていて、そこらの場のラフよりひどいコンディションだ。バンカーにも水たまりが出来ていて下手すりゃ底なし沼状態だ。挙句そこいらに使い古しのゴルフバッグやら赤さびたクラブやら手引きのカートやらが捨てられていて、それらに木のツルが巻き付いて、アポカリプス的なオブジェみたいになっている。


 一言で言うと、もう何年もほったらかしにされた天空の城……もといゴルフ場のようだ。

(あー、整備する人がいなければこうなるんだなぁ……ウチの整備員さんご苦労様です)

 ゴルフ場職員として他人事ではない目の前の惨状に、ウチの整備員さんを思い浮かべて心の中で手を合わせる。


『さて孟子 蘭(もうし らん)よ。このホールの勝負はゴルフ対決()()()()

「……どゆこと?」

 イーカラハの提案に首を傾げる。まぁ相手がショベルカーに乗ってるんだから、ここを壊されるのは分かる気がするけど、私は解体なんか出来ないし、ましてそれを阻止する権限も無い。


『お主がこのホールをクリアするのが先か、あの湊山がこのホールのグリーンを破壊するのが先かを競う物であるッ!』

「……は?」


 イーカラハの説明曰く、私が第一打を打ったと同時にあのオッチャンがショベルカーをスタートさせ、グリーンに向かって進撃するそうだ。

『お主のカップインが先か、あ奴のショベルカーがカップをかき出すのが先かを競う、いわばタイムアタックであーるっ!』


 ……


「危ないわあぁぁぁっ!!」

 予想は裏切らずに期待を裏切る提案に思わず絶叫する。っていうか今日の私、叫んでばかりじゃないの?

「作業中の重機の側でゴルフするなんて危ないでしょうが! こっちだって打った球が人に当たったらどーすんのよ……全く」

 ゴルフも工事も安全第一でお願いしたいんですけど!


『案ずることはない。奴のゴルフ魔具は、プレイ中に作業してもお互いに決して怪我を負わせないしゅが施されておる。これにより営業中でも安全に作業が出来るという訳だ』

「定休日に作業するって言う選択肢は無いんかい!」


 抗議している間にも、湊山さんとやらのショベルカーがキュラキュラと私の横にやって来て、スタートラインに並ぶかのようにティーグラウンドの横につける。

「いけるがなお嬢はん、わっしゃはこんな作業ようやっとるで」

「私はそんな状況でゴルフした事無いんですけどー」


『それでは、第三ホール勝負を始める! 孟子 蘭のティーショットと同時にスタートである……さ、いいから早ようせい』

 強引にスタートさせられる羽目になってしまった、どうやら逆らっても無駄なようなんで、仕方なくティーに球をセットする。


 ……で、打つ方向に目をやって、改めてその難易度にぞっとした。なんせフェアウェイは草むらだし、ラフゾーンなんか林からの木が目一杯コースに雪崩れ込むように倒れ生えている。これじゃ低い球を打ったら絶対に植物に捕まるし、そこに紛れたらロストボール確実な状況だ……高い球を打って落としどころをよく見ておいてから、そこまで行って探すしかない。


「じゃ、行きます! ヨイ・ヨイ……ヤァーッ!」

 リズムを刻んでスイングし、出来るだけ丁寧にかっこーんと打ち出す。距離よりも落下点を見失わないことが第一だ。


 バルン、キュラキュラキュラ……

 同時に湊山さんのショベルカーが動き出す。さすが作業車だけあって、草むらやはみ出た木の根っこなんかお構いなしに乗り超えて行く、しかも結構早いし。

「ふんしょ!」

 私も負けじとバッグを担いで、草原と言う名のフェアウェイに分け入って行く。とにかく一刻も早く球を見つけ出してショットを繋げて、壊される前にカップインさせなければいけない、と足を早め……


 ぐにゅ、べちゃっ!


 いきなり、思いっきり転んだ。


「あああああもう! ロストボール踏んずけたあぁぁっ!!」

 見事に泥だらけになった私のすぐ上を、イーカラハが腕組みしたままスゥーッと通過していった。飛びながら首だけこちら(うしろ)にぐるんと回すと『わしがゴルフの妖精イーカラハ、いいから早ようせい』と笑顔で呟いて、そこから飛んで行く。


 果たしてショベルカーがグリーンのカップを掘り起こす前にカップインできるのかなぁ……というかこれってゴルフの上達に何か関係、あるの?

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