攻略対象二名に接近しました
さて、まず最初は放課後だよね。昼休みに色々と打ち合わせていたようにホームルームが終わるとすぐ立ち上がる。
「苑宮さん、御機嫌よう」
「みなさんもお気をつけて。可愛い女性につい身惚れてしまう男性は多いですからね」
ウインクと共にそんなことを言えば話しかけてくれたクラスメートがちょっと頬を赤らめる。
うーん、この格好予想外に女子受けするっぽい。
「苑宮、行くぞ」
「あ、うん。カバンありがとう」
「気にするな。澤尻にも頼まれてるし、友人を助けるのは当たり前だろ」
さらりと言い切るあたりかっこいいですね、流石桃香ちゃんが惚れただけの事はある。
そのまま熊谷君と向かうのはもちろん桃香ちゃんの教室で。案の定というか予想通りというか、教室の前にはすでに攻略キャラが待っていた。
俺様、ではなく不思議系の先輩と熱血後輩の二人だ。
不思議系の先輩は和泉玲、若干人見知りがあってとっつきにくく、名前はあきらが正しい読み方だけどレイって呼ばれる方が好きって設定がある。
熱血後輩は池田圭太、スポーツ大好きであちこち助っ人に行くけど、本当にやりたいことを見つけられなくて困ってる設定だったかな。
和泉先輩はヒロインが下の名前をレイと読んだから気に入って、池田君はヒロインがあんまりスポーツ得意じゃないからと放課後一人で練習しているのに遭遇したことから知り合いになるんだよね。
ちなみに俺様ことお坊ちゃんは水瀬文也、水瀬グループの跡継ぎでこの学園の理事長の孫というね、うん。
昔から好きじゃないタイプだったけど、関わってみて嫌いになりました。あのタイプ本当に嫌だ。
まぁ、不愉快な人のことは置いといて。
この二人がここにいるってことは間違いなく桃香ちゃん待ちだろうなーどうしようかなーって思っていたら、ちょうどホームルームが終わって桃香ちゃんが出てきた。
「澤尻」
「桃香先輩!」
二人がそれぞれ桃香ちゃんを呼ぶ。気づいた桃香ちゃんが一瞬困った顔になるけど、私と目があった瞬間それは一気に笑顔になった。
「迎えに来てくれたの!?」
「うん、一緒に帰りたいなって」
「嬉しい!」
ぱたぱたと私に駆け寄ってきた桃香ちゃんがあんまりにも嬉しそうだからか、先に待っていた二人が呆気にとられた顔で私たちを見る。
桃香ちゃんのクラスメートも何事かと言うようにこっちを見て、あれなんか知らない人がいるなって感じの顔になっていた。
「え、え、本当に? 一緒に帰れるの?」
「桃香ちゃんに予定がなければだけど」
「ないよ、荷物持ってくるね!」
歌いだしそうなくらいの上機嫌で教室に戻る姿を見送っていると、和泉先輩が声をかけてきた。
「ねえ、君は誰?」
池田君は恨めしそうな顔なのに、和泉先輩はただ本気で誰なのか知りたいと言うような、不思議そうな顔をしていた。
「君を見るのははじめて、だよね?」
「私を見たことがあるかどうかはわかりませんが、先輩にこうしてお会いするのははじめてですね」
「やっぱり」
当たってた、と笑った顔があまりにも無邪気だったからびっくりした。
こんな、子供みたいな笑顔になるなんて情報持ってなかったんだけど。
「名前を教えてくれる?」
「苑宮と呼んでください」
「苑宮、うん。覚えた」
こくりと頷く先輩が可愛いんだけど。
父親譲りの淡い茶色のさらさらの髪に母親似の顔立ちが中性的なせいか、黙って微笑むと美少女にも見える不思議。
うーん、情報より実物の方が美しいとか凄いな。
「僕は和泉。よろしく」
「はい、和泉先輩」
私もにこりと笑って返した時、桃香ちゃんが帰ってくる。
「ごめんね、お待たせ!」
「ん、和泉先輩と話してたから気にしないで」
「レイ先輩と?」
おいこら桃香ちゃん。なんで既にレイ呼び解禁になってるのさ。解禁は好感度だいぶ上げないとでしょ、なにしちゃってるのさ。
「レイ先輩?」
「あ、えっと……」
視線泳がしても駄目だから、バレてるからね。
……あれ、でもこれってある意味チャンスかも?
「桃香」
わざと意識して名前を呼べば、びくんとわかりやすく反応した桃香ちゃんがこちらを上目遣いに伺ってくる。
こう、ご主人様怒る? って様子見てるチワワっぽいんだけど、なにこの子可愛いな。
これは男子がやられたらいちころでしょうねー、馬鹿じゃないのって叫びたいくらい可愛い。
「私以外をそんな風に呼ぶなんて……悪い子だね」
あ、真っ赤になった、凄い可愛い。そのまま俯いてもじもじしつつ、だってとか本当に可愛い。
可愛すぎて池田君が挙動不審だよ。熊谷君もちょっと視線逸らしてるし、和泉先輩は……あんまり表情変わってないけど、ちょっとそわそわしてるっぽい?
まあいいや、本題はここじゃなくてさ。
「後でじっくり話聞くから。お仕置き、覚悟してね?」
さっと顔色が変わった桃香ちゃん。若干震えてるけど、端から見たらただのじゃれあいだろうとも計算してますよ。うん、本題は「なんで好感度あげてるのかな」だけど。
さて、じっくり聞かせて貰おうかな、桃香ちゃん?
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