表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
a.m.7:30-8:10  作者: 春井 武修
Re;2月
85/95

2月25日 3

 Sは再び教室に入った。彼女にはまだ仕事が残っているのだった。

 先刻前の方で騒いでいた連中の姿はなかった。しかし、彼女らがいた辺りにはまだ何人かの荷物が残されている。今は場所を移しているらしい。それを知ってSは少し気をゆるめたが、彼女らが帰ってくる前に片付けなければ、と、深く呼吸をする。

 時刻は五時前だ。日没はすぐそこに迫っている。窓の向こうに広がる夕闇が、明かりのついた教室の中までも侵そうとしていた。荷物やゴミくずが散乱したままの教室は、人の気配を感じる分、かえって心細さをSに与えた。彼女は未だ、夜を知らない。

 Sは鞄の中から花田の貯金箱を取り出した。彼女が原稿用紙代に使った分で大半を消費してしまったが、それでもまだ二千円ほどは残っているようだった。彼女は貯金箱の出し口を開けると、鞄からグレーの巾着袋を取り、残りの十円玉をすべてその中へ流し入れた。

 それは、決してネコババでも、賽銭泥棒でもなかった。花田の十円玉は、そうするべき、正しい目的で使われたのだ。あるいは、それは何かの代償である。Sはそのことを知っていた。


 Sが貯金箱の出し口を閉めていると、廊下から、いくつかの足音が聞こえてきた。例の一団が戻ってきたのだろうか。Sは慌てて、貯金箱の置き場所を探した。元の場所に戻すのでは間に合わなさそうだ。それで彼女は、やむなく上を見上げ、背伸びをして、黒板の横の掃除道具入れの上に、できるだけ周りから見えないよう深く置いた。これからの数日の間は、持ち主に見つからないでいたほうがいいだろうから。それからSは、急ぎ足で教室を出、廊下を“倉庫”に向かって歩いた。教室を出たすぐのところで数人とすれ違ったが、やはり彼女らは、Sに顔を向けさえしなかった。

 




Info: my good luck!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ