第32話:アネモネ・トリフォリア
アネモネ・トリフォリアは、ナハルド公国ダイル公爵領ハルア町の自由市民の富裕層の家に生まれた。
彼女は右手にサファイヤ、左手にエメラルドを持って産まれた、非常に珍しい魔宝石2個持ちだった。
血統外で魔宝石持ちが生まれるだけでも珍しいのに、2人の精霊に祝福されデュアルコアを持って生まれてきた子は奇跡の様な存在である。彼女の両親はとても喜んだと言う、彼女がその瞳を開く前までは。
彼女の瞳は、生まれ持った魔宝石と同じ色を持つオッド・アイであった。右目がサファイヤの緑、左目がエメラルドの青であったのだ。
ナハルド公国において、オッド・アイは聖と悪、相反する2つと契約を結ぶ忌みし存在とされていたのである。
(ナハルド公国は1大公4公爵の合議制で国を運営している。1人で相反する2つの瞳を持つオッド・アイは2面性の象徴として、合議制の国では忌み嫌われたのだ)
それでも生家トリフォリア家の財力に守られ、アネモネは比較的平和な幼少時代を過ごす事が出来た。
しかし、彼女の出生と共に勃発したカイン王国との戦争の勢いは衰えを見せず、その戦火がハルア町の側まで来ると、彼女を取り巻く空気が変わった。
カイン王国の誇る聖魔宝・闇魔宝に押され、戦争に負け続けているのは、聖と悪の2つと契約を結んだアネモネ・トリフォリアが原因である!、そう町の誰もが言い出す様になったのである。
トリフォリア家は苦渋の決断の上、アネモネが12の時、彼女を町にある唯一のカンターク教会の修道女として俗世から切り離し守ろうとした。
カンターク教は敵国カイン王国の国教でもあるので、町の教会は粗末な木造の建屋ではあるが、万が一戦火に巻き込まれたとしても安全だろうと言う思惑もあった。
そしてアネモネ・トリフォリアは次の5の月の5日に、成人である15才の誕生日迎える。
背中の中程まで伸びた美しい金髪、白い肌、緑の右目、青の左目、通った鼻筋、可愛らしい唇、年の割には低めの150cmの身長と、その身長に相応しくないほど豊かな胸の双丘、彼女は教会で本当に美しい少女へと成長していた。
自分のオッド・アイを恥じる事もせず、勿論誇る事もせず、ただただ精霊様に祈りを捧げ、カンターク教の事、ナハルド公国の事、そして敵国たるカイン王国の事に付いて学ぶ日々を、3年間続けていたのだった。
彼女は自分の2つの魔宝石を皮の袋にしまい、隠すようにその皮袋を首から下げていた。
魔宝石を指輪にして左手の『生の人差し指』と『風の中指』にはめ、魔宝使いとしての修練をしようと考えた事も有ったが、それはやめたのだ。
魔宝を発動すると、本来なら魔宝石を中心に魔宝陣が展開する。
ところが彼女の場合、風魔宝を発動すると左の青目を中心に、生魔宝を発動すると右の緑目を中心に魔宝陣が展開し、オッド・アイを際立たせる結果となってしまったのだ。
その為、せっかくのデュアルコア持ちにも関わらず彼女は魔宝使いである事を隠し、自身の持つ魔宝石も隠して生活するようになったのである。
そして運命の朝を迎える。
「おはよう、アネモネ」
「おはよう御座います、司祭様」
今日もいつもと同じ、教会の1日が始まるはずであった。
が、そのいつもの1日は、地響きと時の声と共に、過去の物へと葬り去られていった。
終にカイン王国のナハルド方面遠征軍が、彼女の暮らすナハルド公国ダイル公爵領ハルア町に攻め込んで来たのである。
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今日も朝から宿屋に篭り、裁縫三昧のボクの1日が始まる。
この国の服のリフォームと魔宝力付与は昨日終わった。
だから次は、この国には無い衣類、そうパンツとかブラとかを作るのだ。
天然ゴムも合成ゴムも手に入らなかったので、パンツはヒモで結ぶスタイルにするしかない。
男性用のボクサーパンツなら、それほど問題は無い。
ではコスモス用をどうするか・・・?
サイド部分のひもを結んで止める形式、いわゆる紐パンなら簡単に作れるが、トイレの時にとても使いにくそうだ。
なら男性用と同じボクサーパンツにするか?、それだとライナーとか付けられないので不便なのではないだろうか?
色々考えた挙句、今の日本のショーツと比べて股ぐり寸法を大きく取った、お腹まで引き上げてヒモで縛る感じのデザインにする。
ボク用、コスモス用下着の試作品1号ができ上がる。
早速試着してチェックする。
「カノン様」
「はい」
「実はまだ念の為、T字帯をつけているのですがどうしましょう」
「あぁ、それなら試作したショーツのクロッチ部分に、この薄型のライナーを当てて使って下さい。激しく動かなければズレないと思います」
「今までの当て布と何が違うのですか?」
「今までは漏れないよう吸収力を高めるために布を厚く重ねていました。今回のは単に汚れが他に付かないようにするのが目的ですので薄型です」
試作品は、男性用、女性用とも、普通に活動する分にはまぁ良好だった。
ただ、トイレの時が面倒だ。
ワンピースとコットのスソをめくり上げ、スリムパンツの腰ヒモを解いて下ろし、そこから下着の腰ヒモを解いて脱がなければならない。紐パンにしなかったのは大正解と言えるだろう。
コスモスにトイレに行かせたら、やはりライナーがずれて落ちてしまったという。
ライナーはどうせ使い捨てのつもりだったのでそれでもいいが、新月の5日間はどうしようか。
布が充分手に入ったので使い捨てにするのは構わないのだけれど、ずれたり落ちたりでは量の多い日にはズボンや下着を汚してしまう。
やはり布ナプキンタイプにして、衛生帯も作って、ソレにボタンで固定するようにしよう。
そもそも今まで使っていたT字帯は産褥期、ベッドに寝たままの女性を介護できるようにとデザインされた物だから、立って使うには逆に使い辛いと思う。勿論、使った事はないけれど。
早速、コットンを正方形に切り、ふちを纏る。これは裏用、漏れないように耐物理効果の有る『白銀の糸』で丁寧に処理する。
もう一枚切り出してふちを纏る。こっちは表用、デリケートな場所がかぶれないよう、防毒効果の有る『青銅の糸』で処理する。
2枚を重ね合わせ、対角線上に吸収体であるコットンを入れられるよう袋構造にする。
吸収体の入らない2箇所の角の1箇所に小さな平ボタン、残った1箇所にボタン穴をつける。
このボタンをボタン穴に留めることにより、下着に固定すればいい。いわゆるウイングタイプだ。
衛生帯の方は、この布ナプキンの形から逆算して形状を決めた。
女性用ヒモ留めショーツをハイレグ形状化し、運動してもずれない様にしっかり締め付ける為、生地も全体を2重、クロッチ部は3重にして頑丈にした。
これもコスモスに試着してもらい、T字帯よりはずっと使いやすいことを確認する。
これで”量産”に入れる。
体を清める毎に下着くらいは替えたいので、自分用ボクサーパンツを6枚、コスモス用も6枚、衛生帯は5枚作る。
布ナプキンも通常サイズを4枚、夜用大型の物を2枚作る。手作りなので、不具合が出たらその都度修正しよう。
ライナーのウイング化は次の課題だな。
せっかく違和感が無い様に薄型にしたのに、ボタン留め式にしたのでは意味が無い。使い捨てにするからトイレで取れてしまうのはいいけど、運動中にずれたりとかは良く無いと思うし。
あとかはブラか。
カップとかホックとか肩ヒモ調整アジャスターとか入手不可能だろうから、やはり水着の三角ビキニみたいにするしかない。
コスモスのサイズなら、ホルターネックにする必要は無いだろう。
三角ビキニの後ろで縛る固定タイプと前で縛る遊動タイプ、2つを試作して試す事にする。
後ろで縛るタイプは着用がやや大変だが、左右方向の入力荷重に対し三角布が固定されているため、乳房をサポートする能力が優れている。
前で縛る遊動タイプは着用は容易だが、三角布部分が遊動式になっているため、横方向の荷重に対しサポート力が固定式に比べ劣る。
コスモスの場合はまだ成長途中だから遊動式で充分な気もするが、こればかりは使ってもらわないと分からないし。
試作品着用の結果、量産は固定式3、遊動式3に落ち着いた。
正直なところ、部屋の中で使う分にはどちらでも同じだと言われたからだ。
これから旅に出て、その時使いやすい方を選択すればいいか。
蜜蝋が入手できたので、明日はコンディショナーを作ろう。
スモールヘッドの歯ブラシも、早く作らないと。
テントと言うかツエルトと言うかタープと言うか、それ用の防水布も仕上げないといけないしね。
紅花が入荷したかは少し気になるな。
色々と忙しいので、明日はコスモスに買い物を頼もうか。




