第22話:共有感覚
「ボク達は共有感覚で繋がっていると言えます」
「共有感覚?、ですか・・・」
「はい。お互いの感じた事の一部、考えた事の一部を共有していると言う事です」
婚礼の夜の作法を済ませた翌朝、朝もやに霞む森の奥でローブの上に2人寄り添って座り、焚き火で暖めた保存食と野草スープの朝食を取りながらボク等は話し合っていた。
今の日差しの弱さなら帽子もサングラスも不要なので、森の朝をボクは結構気に入っていたりする。
コスモスが飛翔魔宝を覚えた今、おそらくは今日中にウルスドの森を抜け、カールスの町に到着する事になる。
今までの道すがらの話の中で、クーニエル村の主な生産物は、ライ麦、畜産、魔宝使い奴隷、乳製品だとコスモスは言っていた。
それならボク等を目撃したと考えられる行商人は、村で生産していない野菜類、小麦、塩や調味料、衣類雑貨、もしかしたら薬等、を商いしていたと考えられる。
コヨミを知らされていないとは言え、コスモスが数日に1度行商人を見たという情報は正確だろう。そして葉野菜の保存期間、あの馬車の積載量とコスモスから聞く村の規模から推測しても、行商人は月に何度も村を訪れていると考えられる。
どう楽観的に見積もっても、近日中に行商人からの情報はロイド男爵に伝わり、追手は10日以内にカールスの町に到着する。
だからその前に、試しておかなければならない事が2つ有るのだ。
「共有感覚を使って、コスモスの目をボクにも使わせて下さい」
「私の体はカノン様の物ですからご自由にお使い下さい。どの様にすればよろしいのですか?」
「やりたい事は2つ有るのですが、まずは1つ目です。私が日中に目を守るために掛けているサングラス、おそらくコレを付けて街中へ入ると非常に目立ってしまう事でしょう。追手が来た場合、すぐに居場所を知られてしまいます」
「はい」
「その為、カールスの町ではサングラスを掛けません。照り返しの強い場所では、帽子をかぶっていても目を開けられない事が考えられます」
「はい」
「ですので手を繋ぎ、接触テレパスでコスモスの言葉だけでなく、見える景色もボクに伝えて欲しいのです」
「そのような事、できるのですか?」
「分かりません。ですがコスモスが伝えようと思い、ボクが受取ろうと思えばできるのではと考えてます。今試して見ましょう」
ボクの左に座るコスモスと、肩と肩は触れ合っている。ボクは目を閉じる。接触テレパスでコスモスに話しかける。
・・コスモスの見ている物をボクにも見せたいと意識して下さい・・
(はい、わかりました)
直後ボクの脳裏に、針葉樹の森の中に座る、少しくたびれた双子の弟の顔が映りこんだ。
イヤ、違うか。コスモスがボクの顔を覗き込んでいて、その様子をボクが見ているのだ。
意識の共有が出来ているのだから、接触しての知覚の共有も出来ると考えていたが、思った以上に簡単だった。
・・コスモスの目を通して見る事が、もう出来ました・・
・・コスモスが見ているボクの顔が見えます。不思議な感じです・・
(さすがカノン様です)
意識の共有のおかげでもあるが、コスモスのテレパスの送り手としての才能も良い効果を与えてくれているんだろうなと思う。
最初のハードルを簡単に越えられたので少し余裕が出てきた。いたずら心も手伝って、コスモスに音声で話しかける。
「今度はコスモスがボクの目を使って見て下さい。ボクが良いと言うまで、絶対に目を開けてはいけませんし、声を出してもいけません」
「はい、カノン様」
「では、目を閉じて下さい」
コスモスは素直に目を閉じ、こくりと肯いた。
すぐにコスモスが驚いたのか、体が少し緊張したのが触れ合う肩の感触で分かった。
おそらくコスモスもボクの視線を通して景色を見るのに成功したのだろう。
でも、それだけではまだ終わらない。
ボクの視線は、ネッカチーフを巻いていないV字のベストとカーディガンで大胆に開いたコスモスの胸元を捕らえる。
そのまま視線はカーディガンのボタンに移動する。ボクの視線の中に、ボクの両の手が映り込む。ボクの手が、コスモスの着るカーディガンのボタンを外していく。自分の着る服が脱がされる様子を、コスモスはボクの目を通して見ている。
コスモスは何も言わない。黙ってボクに身をゆだねる。
ボクの手がコスモスからカーディガンを取り去る。コスモスの上半身を覆うのは袖なしのベスト1枚になった。
その最後の一枚、ベストのボタンにもボクの手が伸びる。1つ、また1つ、ボタンが外されていく。ボタンが外れる毎にコスモスの上半身があらわになる。
ついに最後のボタンが外れ、ベストの前が全部開いた。ボクの手がコスモスの体から、その最後のベストを取りあげる。
コスモスの胸は乳房だけではなく、その先端部分も発育途上にあるのか少し小さめである。
左乳房の中央付近に有るその小さめの先端部分にボクの視線が移った時、まるで何かを期待したかのように先端が大きくなったような気がした。
コスモスは黙ってこらえている。
ボクの視線は左乳房の先端から下へ移動する。乳房のすぐ下に、かつてムチで付けられた傷だったものの痕がある。傷の痕の所だけ、皮膚が新しい。
ボクの指が慎重に、コスモスの胸の先端には触れないように、左胸下部から右腹へ斜めに走る傷の痕をなぞる。
「・・・う」
コスモスが少し声を漏らしそうになったが、言いつけを守って声を出すのをこらえる。
ボクの視線と指は、そのままコスモスの背中に回る。
背中の左脇腹から走る傷ももう完治して、真新しい皮膚がかつて傷だったことを教えるだけである。
視線と指が、背中の傷の痕を左下から斜め上にゆっくりとなぞって行く。
視線が、指が、ついに右肩に達する。
聖魔宝で穢れを祓われたその右肩には、焼印などない、美しい滑らかな肌だけがあった。
「・・!!」
言いつけを守って声を出さないコスモスは、上半身裸のままボクをローブに押し倒し、唇に、ほほに、首筋に、耳にキスしてきた。
色々な出来事に興奮してしまった様子だ。
そしてボクの太ももへ手を伸ばし、ロングTシャツの中へ腕を潜り込ませてきた・・・
・・・思わぬ成り行きで昨夜の延長戦をしてしまったボク等は、その後2つ目の課題も問題なく出来ることを確認した。
つまり、離れた場所からコスモスがテレパスで視覚情報をボクに送り、その情報を頼りにボクにとっては未知の場所であるコスモスの元へテレポーテーションで跳ぶ事も、簡単に出来たのだった。
魂の共有、とでも言えばいいのだろうか、コスモスの見た事、聞いた事、感じた事はボクのものであり、ボクの見た事、聞いた事、感じた事はコスモスのものであった。
コスモスが行った場所なら、ボクにとってはもう未知ではなく既知の場所であった。既知の場所へESPで跳んで行くなど造作も無いことだったのである。
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行商人ギースは考えていた。今朝、クーニエルの村を出るとき、男爵様に1人の奴隷少女を伴うよう言われた事に付いてである。
鳥を飼うノウハウを持たぬクーニエル村では、菓子作りに欠かせぬ上に日持ちしない卵は、村の有力者達に高値で売れた。10日とあけず村を訪れていたのはそのためだ。
普段なら、卵、野菜、雑貨を村に運んで行って売り、村ではチーズとハムを仕込んで帰り、町で売っていた。
今回は帰りの荷に、ハム、チーズだけではなく奴隷とは言え少女が付いて来ているのだ。
ギースは御者台の隣に座る少女を観察した。
背は小さく体は細い。胸はよく分からんが、服の下から自己主張するほどは大きくない。
顔は幼いが、奴隷のくせに驚くほど整っている。磨けば美人と言われる部類だろう。
年は幾つ位だろう、さすがに10は超えているだろうが、成人(15才)にはなっていまい。
粗末なシャツ、粗末なズボン、足は裸足、汚い麻の袋が1つ、これが少女の持つ全てだ。
少女はギースの視線に全く関心を示さず、馬車の前方となぜか空を気にしている。
ギースは思う。
昨日村へ引き返さずカールスの町へ行っていれば、今夜あたりは街で女を買って抱いていたはずだ。
男爵様に急いで知らせるため、わざわざ引き返した。男爵様もその辺は御存知のはずだ。
情報を買ってもらおうと引き返した事など忘れ、ギースは都合のいい考えを進める。
男爵様に知らせるため、女を買う機会が先延ばしになった。ソレを男爵様も分かっているだろう。
そして今朝、男爵様は俺に女奴隷を預けた。
俺には少女姦趣味はないが、この奴隷ほど可愛ければ、考えを改めてやらない事もない。
「おい、お前」
水場で馬車を止め、ギースは奴隷に初めて声を掛ける。
「お前、名前は何と言う」
「パンジーといいます」
少女が可愛らしい声で答える。顔だけでなく声まで可愛い。うん、いい奴隷だ。
「パンジー、お前は少し臭う。いつから身体を拭いていない?」
「わかりません」
あぁ、臭うわけだ。俺様なんかきれい好きだから、10日に1回女を買う前には必ず身体を拭いていくんだぞ。
「パンジー、この水場で体を拭いていけ」
「それは指示ですか?」
「そうだ」
「分かりました。旦那様から『ギースの指示に従え』と命を受けています」
やはりそう言う事か、ギースは自分の考えに確信を持った。
荷台にある桶で水を汲み、タオルを1枚用意する。
「パンジー、シャツを脱げ」
「はい」
言われるままに、少女はシャツを脱いだ。裸の胸があらわになる。
控えめな胸、と言うのさえおこがましい、ささやかなふくらみが晒される。
ギースはがっかりする。もう少しは成長していると思っていたからだ。
まぁいい、腰周りも確認しよう。
「パンジー、腰ヒモを解いてズボンを脱げ」
「はい」
ズボンを脱ぐと、少女の体を隠すものは一切無くなった。
腰を観察する、肉付きは良くない。茂みを確認するが、薄っすらとしていて無いも同然である。
ギースは更にがっかりした。彼の女の趣味と真逆だったからだ。
「このタオルと桶の水を使って、よく体を磨け」
「はい」
明るいうちに、この水場でやろうと考えていたのだが、ギースは考えを改める。
顔と声は可愛いく好みだが、身体はあまり好みではない。
夜暗くなってから、あの休憩所で可愛い声を出させて奉仕させよう、はっきり体が見えるうちは興がわかない。
「パンジー、水を汲み替えて、今度は髪と頭を洗え」
「はい」
少女は裸で水辺まで行き、そこに膝を着いて座って水を汲んだ。
後ろから見張っていたギースには、すこし足を開いて座った少女の全てが見えた。
少女は言われるままに髪を洗い、又、水を汲みなおして体を洗った。
体を洗うと、薄汚れた殻を脱いで脱皮したかのように、柔らかできれいな肌が現れた。
「よし、確認する。裸のまま、こちらへ来い」
「はい」
少女が近付くと、ギースは匂いを確認した。特に腋の下とか太ももの合わせ目とか、匂いが残りやすい場所を丹念に確認した。
そして耳の裏やその他気になった場所を、もう一度丁寧に洗うように指示を出した。
少女が言われた場所を洗い終わった。裸のまま、次の指示を待っている。
「パンジー、体を拭いて服を着ろ」
「はい」
「パンジー、これからも俺の指示に従うように」
「はい」
少女が服を着終えると、2人は馬車に乗り出発した。
御者台の隣に座る体を洗った少女から、くたびれた服の汗の匂いとは別の、何か甘い香りがしている事にギースは暫く気がつかないでいた。




