第21話:責任
日本の現代魔宝では、七属性魔宝はそれぞれ下記のように考えられている。
<特殊2属性>
・聖:ダイヤモンド:後述
・闇:ガーネット :後述
<一般5属性>
・火:ルビー :熱エネルギー・分子振動制御
・水:アクアマリン:流体分子運動ベクトル制御
・生:エメラルド :細胞活動活性化・制限(治癒)
・風:サファイヤ :気体分子運動ベクトル制御
・土:トパーズ :固体分子(無機物)運動ベクトル制御
一般的な魔宝使いは使える魔宝は1属性、せいぜい2属性までである。同時発動できる魔宝は掛け算で効いてくるので
単体の魔宝力が6:5:4の人達でも、使える属性数1・2・3と違うと全体魔宝能力は6:25:64と能力の差の順位は単体能力のソレと大きく異なる。
単体能力が多少劣っても、使える属性数が3を超えると圧倒的な力となるのが一般的である。
属性数3の魔宝師を、能力が約束されし者の意味を込め、プロマイザーと呼んだりもする。
<魔宝力の計算式>
1属性:単体魔宝力6:全体能力6
2属性:単体魔宝力5:全体能力5x5=25
3属性:単体魔宝力4:全体能力4x4x4=64
※単体の魔宝力が6:5:4でも全体魔宝能力は6:25:64となる例
コスモスは既に火・風の強い属性魔宝を使えている。が、おそらく後2つの属性を持っている可能性が高いとボクは想像している。
ボクはコスモスの体を通して聖属性の精霊と言霊を交わした。コスモスは聖属性と通じる道を持っていると考えるのが普通だ。
聖と闇の属性は特殊だ。一般5属性のうち4属性以上を扱える人の中から特に才能のある人だけが特殊属性を習得できる。
逆に考えれば、聖に連なる道を持つコスモスは、必ず4属性以上の特性を持っていると考えざるを得まい。
コスモスと溶け合ったとき、ボクがコスモスを通して聖の精霊に言霊を届けたことは間違いない。
その証拠に、まだ指先の感触でしか確認していないけれど、コスモスの右肩に刻まれたRRの火精霊の焼印はかき消されている。
コスモスが聖精霊への道を示してくれ、ボクのこの世界での初めての魔宝陣展開を導いてくれたおかげで、ボクの聖属性魔宝を使えたからだ。
・・・ボクはコスモスにしがみ付かれたまま、そんな事を考えていた。
コスモスが混乱していたので、なるべく冷静な考えを持とうと努力していたのだ。
===
ウルスドの森の奥、2人だけの夜、魔宝師の婚礼の作法に則り、ボクとコスモスは1つに繋がった。
「ディア・カノン(親愛なるカノン)」のコスモスの言葉に対して「マイ・ディア(愛する人)」と返したボクの声に、コスモスの心と体が歓喜に溢れたのをボクは感じた。
そして感極まったコスモスがきつくしがみ付いてきた時、ボクは彼女の中で果ててしまったのだ。
一連の感覚の全てを、ボク等は共有していた。
コスモスは泣いていた。声を出さずに泣いていた。
溶け合ったボク達2人は、互いの体も心もその1部を共有しているので、泣いている事も混乱している事も、隠したくても隠せない。
「カノン様の御種を頂きました、光栄で嬉しゅう御座います」
コスモスの喜びの声。
「身篭った場合、カノン様のお子様を奴隷になど出来ません」
コスモスの絶望的な悲しみの声。
「我が身を投げてお詫びしたくても、腹の中のお子様に害なす事は出来ません」
ほとんど狂気の声。
コスモスは泣いて、喜んで、悲しんで、苦しんでいた。
ボクの子供を奴隷の境遇に落とすかもしてない恐怖におびえていた。
本当の意味でボクを受け入れられた事に幸せを感じていた。
コスモスは混乱していたのだ。
「心配しないで、コスモス」
ボクはコスモスに語りかける。
「コスモスが選んだ夫は、妻や子を守れない程弱くは無い。そう信じてください」
出合ってまだ数日だが、ボクにとってコスモスは失う事の出来ない女性なんだ。
「いけません、カノン様」
コスモスが語尾を強める。
「私達は溶け合って心の1部が1つになりました。ですからカノン様に対し私は今までの生活を何も隠せません。臓物と豆だけの食事とか、汚い寝所や便所、糞尿にまみれた仕事、母や妹のパンジーの事等を隠ません。それと同じに・・・」
コスモスの今までの過酷な生活は、知覚の共有を通してボクにも多少伝わって来ている。
コスモスが、ここで少し言葉が詰まった。言葉を選んでいるようだ。
「同じように、カノン様が御自分の国に残してきた生活について、私にも分かります。バラ園や園遊会の開けるお庭、舞踏会のできるお城、豪華な衣装とお食事、魔宝の才能溢れる弟様と、そして美しくて大切な婚約者様、それらが私にも伝わってしまうので御座います」
コスモスが言葉を続ける。
「おそらくカノン様は御国では王侯貴族様であらせられるのでしょう。なら正室には貴族様、側室でも自由市民様でなければなりません。カノン様は苗字を持ってらっしゃいますので最低でも自由市民で御座います。それでも正室には自由市民、側室にも自由民以上の身分が必要で御座います。奴隷身分の私はせいぜい愛玩奴隷まで。決してカノン様のお子を設けてはならないのです」
ボクが考えている以上に、コスモスはボクとの立場の差を気にしているようだ。正直、奴隷も貴族も無い世界で育ってきたので実感が湧かない。
「ボクは、自分の行動に対し責任を持つを尊ぶと教育を受けてきました。今回の事でコスモスの妊娠の可能性は極めて低いと考えてはいます。でも、もし妊娠した場合は全てをかけてコスモスと子を守ります」
「・・・ではカノン様。仮に、カノン様が私を連れて国に帰る事が出来た場合、正室候補の婚約者様を前に同じ事が言えるでしょうか?」
ボクは考え込んでしまった。
コスモスに対する愛情に揺るぎは無い。2度と会えないと思っているが、婚約者に対する愛情も揺るぎは無い。
婚約者に2度と会えないと思ったから、その代償行為で手近なコスモスを好きになったのか?それは無いと思いたい。
ボクは『誠実の刻印』を2人にしている。そもそも複数を相手にして『誠実』も無いよな~とも思うが、誠実の刻印からの戒めは無い。
つまりは、ボクの恋はどちらも誠実なのだと刻印が証明してくれている。
コスモスを愛したことは間違いではないのだ。
一方、立場と言う物も有る。稀代の大魔宝師『英雄』の孫として産まれたボクは、英雄の血を色濃く引く次世代を残さなければ成らない。
その為には、同じく英雄の血を引く婚約者と結婚をする事が、血を引く者の義務であるのだ。
ボクの今までの考えも、おおまかな概念としてはコスモスに伝わっているだろう。
だからしっかり言葉にして、誤解の無いようにコスモスに話す。
「コスモス、最初に言っておきます。私は貴族も奴隷もいない身分差の無い世界で産まれ育ってきました。その世界の結婚の条件は唯一、男性が女性を求め、女性も男性を受け入れる、それを両性の合意と言いますが、それだけです。元の国に戻った時、年齢や戸籍など登録上の問題は残りますが、身分差で結婚が出来ないと言う事はありません」
「しかし」と、ここで言葉を区切る。
「私には『英雄の孫』としての義務があります。だから国に戻れるのなら、私は婚約者と結婚したいと考えます。でも、私の国には『側室』の制度はありませんが『認知』という手段ならあります。婚約者を怒らせるかもしれませんが、コスモスの産む子をボクの子供として育てられます。コスモスや子供に愛情を注ぐことは充分出来ると信じます。
そして国に戻れるのであれば、ロイド男爵の手も届かないでしょうから、むしろコスモスや子供にとって安全と言えます。なぜなら私は、巨大魔宝実験の失敗でこの世界に跳ばされて来ました。同規模の魔宝の発動はほぼムリだと思えるので、元の国へ行ける可能性はかなり小さいからです」
コスモスは黙って聞いている。
「だから今は私の国の生活や婚約者の問題よりも、この世界での問題を優先したいと考えています。まず第1に、ロイド男爵の影響圏から脱出し、もしも追手が存在するなら逃げ切る事。第2に、この世界での安定した生活基盤を作る事。狩猟採集生活は、どちらかが病で倒れると行き詰まります。第3に、可能であればコスモスの契約書を回収し、奴隷からの解放を図る事、ボクはこの3つを優先します」
国に帰る事に付いても、ボクの考えを話して聞かせる。
「国に戻る事を考えるのは第4です。1)ボクの魔宝を取り戻し、2)ボクと同等の魔宝力を持つ魔宝師、3)かつボクの魔宝とシンクロできる魔宝師を見つけ、4)協力を取り付け巨大魔宝実験を再現しないと、私の国へは行けないからです。必要とする条件が難しい上に数多いので、条件を満たすのには長い時間を必要とするでしょう。その為には、まず安全性の確保と安定した生活基盤が必要だからです」
だいぶ落ち着いてきたのかコスモスが質問してきた。
「魔宝実験の時にご一緒だった弟様を探されなくても宜しいのですか?」
少し、残念な結果をコスモスに伝える。
「ボクと弟は七属性魔宝全てが使えました。先ほど、コスモスの力を借りて聖魔宝の魔宝陣を発動し、それをこの世界全体にソナーとして放ちました。この世界にも聖魔宝の使い手は何人かいるようですが、その中に弟の波動は全くありませんでした。弟はおそらくこの世界には居ません。もし居たなら元の世界に返れる可能性が高かったので、残念です」
コスモスは、別の所に反応した。
「たった一度の魔宝で世界全体を調べたのですか?」
「そうです。世界全体です」
「カノン様は本当に巨大な魔宝をお使いに成られるのですね」
「今は使えません。アレはコスモスの力を借りたから出来たのです。もし、この先コスモスが聖か闇の魔宝を覚えたならボクの『魂の称号』を見てください」
「魂の称号、ですか?」
「はい。精霊のお力を借りるたびに、魂にその記録が刻まれます。その中で1番影響力を持った記録が1番上に表れます。ソレを『魂の称号』といいます、。聖・闇属性の魂の魔宝で見る事が出来るのです」
ここで後述としてきた、特殊2属性に付いて説明する
<特殊2属性>
・聖:ダイヤモンド:魂と時間への干渉、等(詳細研究中)
・闇:ガーネット :魂と空間への干渉、等(詳細研究中)
<一般5属性>
・火:ルビー :熱エネルギー・分子振動制御
・水:アクアマリン:流体分子運動ベクトル制御
・生:エメラルド :細胞活動活性化・制限(治癒)
・風:サファイヤ :気体分子運動ベクトル制御
・土:トパーズ :固体分子(無機物)運動ベクトル制御
一般5属性は魔宝無しでも行える物理現象を、精霊の力を借りて魔宝で行うものだ。
特殊2属性は、未だに原理も発動事象も魔宝でどこまで出来るのかさえ全容は解明されていない。
「原理は不明だが、そう言う魔宝が有り、そう言う魔宝が使える人がいる」、特殊2属性は使い手の数が少なく研究が進んでいないため、その程度の事しか分かっていないのである。
先ほど聖魔宝を使ったボクには見えていた。
ボクの魂の称号は「星崩し」。
コスモスの称号は「隷属のくびき」が消え「星崩しの従者」となっていた。
「妻」ではなく「従者」となった原因は、コスモスの魂がまだ「妻」を受け入れられていないからだろう。
ようやく落ち着いてきたので2人で話し合う。
今は、カールスの町まで馬車で1日の距離にある休憩所、そこから少し森の奥へ入った場所だ。
馬車半日の距離を数時間で飛んだコスモスの飛翔魔宝を使えば、明日中にもカールスの町へ着ける距離にいるのだ。
最初に懸案事項1つ目、追っ手に対してのボクの考えを話す。
「まず確認しておきます。ボクとコスモスは、実は掴まる心配はほとんど無いのです。2人一緒にさえ居れば、追い詰められても空間が開いていればコスモスの飛翔魔宝、部屋に閉じ込められてもボクのESPで逃げられます。2人が一緒なら2種の飛翔系魔宝を使えるので、そのような魔宝師はまず捕まえられませんし、捕らえられても逃げ出せるのです。では、ボクとコスモスが別々に掴まった場合、その時は通常テレパスでコスモスが自分のいる風景をボクに伝えてください。それを頼りにボクがコスモスの元へ跳び、そこから2人で跳んで逃げます。この方法は後で練習しておきましょう」
コスモスを安心させるべく言葉を続ける。
「だから、万が一に子供が出来たとしても、ロイド男爵にコスモスと子供が取り上げられる可能性は極めて低いとボクは思ってます。ただしその場合、逃亡生活となってしまいまうので、安定した生活を築くのには時間がかかるかもしれませんね」
次に懸案事項2つ目、コスモスが心痛めていた妊娠の問題についての考えを話す。
「もしも子供が出来ていた場合、心配すべきはロイド男爵の追っ手ではなく、むしろ生活基盤の出来上がっていないボク等2人が子供を育てていけるのか?と、言う事です。男爵の追手がなくとも、安定した収入による住居・食事・衣類が無いと、子供は精霊様の元へ帰ってしまいます。そんな悲しい思いをしたくありません。コスモスが妊娠。出産、育児で私の通訳の仕事が出来ない期間、私が収入を得るのは難しい可能性が高いと思います。ですから、ロイド男爵の問題を抜きにしても、当面の生活を支える備蓄が無いと子育ては困難でしょう。子供のできる可能性の高い行為は自粛する必要性を感じます」
自分で話しているうちに問題点が整理されてきた。
ロイド男爵の追っ手については、事、逃げるという選択肢を選ぶ限りあまり脅威では無さそうだ。寝ている間に暗殺とかされなければ、幾らでも逃げようがある、こちらにはESPと飛翔魔宝があるからだ。
子供に付いては、まずは安定した収入と定住できる場所が必要だろう。定住・・・どこかの教会かギルドに所属して根無し草の状態を改めれば何とかなるのか?
せっかく定職と定住地を得られてもロイド男爵の追っ手が来れば、全てを捨てて逃げなければならない。
ならば、追手の目の届かない場所に定住地を定めるべきだろう。
そして可能ならコスモスの契約書を何とかする。そうできれば、根本的な解決になる。
ロイド男爵領から近いカールスの町は長居する場所ではないな。
カールスの町で旅支度を整え、別の町を目指そう。
考えがまとまってきたのでコスモスに話す。概要は心の共有で伝わっていると思うが、いつぞやの”精髪姫事件”みたいな誤解が有ると困る。
大切な事は言葉ではっきりと伝えることにする。
「カールスの町で私の持っている魔宝石の一部を換金しましょう。そのお金で旅支度を、具体的には・食料・雑貨・衣類・できれば地図と情報を入手し、カールスの町から更に遠方の町を目指します。ロイド男爵の目の届かない遠方で、コスモスに通訳をしてもらって、何とか収入の手段を得たいと考えています。カールスの町では、私は異国の旅人で自由市民のカノン・トーゴー、あなたはその通訳で自由民のコスモス、女2人旅を装います」
それまで黙って聞いていたコスモスが口を挟んだ。
「金銭的に可能なら、カールスの町で奴隷の購入を検討いたしませんか?」
「・・・奴隷ですか。なぜ必要なのですか?」
コスモスは答える。
「カノン様は異国の民、私は奴隷です。この世界で自立して生きる社会の仕組みも知りませんし、文字も充分読めません。全く知らない町で新生活を立ち上げるには、社会や文字を知る人間の助けが必要です。ですが、私は逃亡奴隷ですので、一般の人との深い係わり合いを持つのは危険です。その点カノン様が購入した奴隷であれば、私の秘密がばれる可能性は低いでしょう。私の様な奴隷の子供ではムリですが、貧困に因る身売り奴隷、敗戦国からの戦争奴隷の中には、教育を受けたものも居ると聞きます」
「ではコスモス、あなたは私に奴隷を隷属させるため、奴隷の右肩に”カノン・トーゴー”の焼印を押せと言うのですか?」
「・・・カノン様でしたら、別の方法でも刻印を刻む事が可能です」
コスモスはボクに、奴隷に対して『誠実の刻印』を刻むことを要求したいらしい。
刻印の話が無くても”女2人旅”に同行させるなら女奴隷を選ぶだろうが、『誠実の刻印』をするなら購入するのは女奴隷限定になる。
又、『誠実の刻印』は、互いが深く信頼し合わないと刻む事が出来ない。
信頼を得るまで、危険でも、長くカールスの町に留まらなければ成らなくなるかもしれない。
何より、コスモスはボクが他の女性に『誠実の刻印』を刻むことを何とも思わないのか?
ボクなんか、婚約者とコスモス、2人に刻んでしまっただけでも心苦しいと言うのに。
「問題ありません。『誠実の刻印』だけでなく『種族の刻印』も必要と有らばお願い致します。カノン様の御心の1番には婚約者様がいらっしゃいます。それを変えようが無い事は、心を共有する私にははっきりと分かります。私はカノン様の心の末席に居させて頂ければ充分幸せで御座います」
そうかぁ、ボクの心からそう読み取れるのか。ならコレは、コスモスにはっきり言葉で話しておいた方がいいだろう。
「コスモス、ボクは自分の国に居たとき、もしかしたら自分は半陰陽のような存在なのではないかと疑っていました」
「半陰陽とは何ですか?」
「性器の形の見た目は男性でも体の中は女性だったり、男性と女性の両方を中途半端に持っていたり、その結果、男性や女性としての機能を充分発達できないとか機能そのものを持っていない、大抵は子供を作る事が出来ないようです、大まかにそのような物だと思って下さい(※注)」
(※注:正確ではありません。カノンがその様に考えているのだと解釈して下さい。)
「・・・」
「コスモスも最初ボクを女性と間違えましたよね」
「・・・はい」
「英雄の孫として産まれ、必ず子供を作るよう許婚までいて、でも男として子供をもうける事が出来ないのではないか?それはボクにとって大きな恐怖だったのです」
「・・・」
「コスモスがボクに、ボクが成熟した男性であることを教えてくれました」
「・・・」
「ボクの中の1番は婚約者です。でもボクの中の”男”にとっての1番はコスモスです。婚約者もコスモスも、立ち位置が違うだけで1番なんです」
「・・・」
「1番を大切にしたいので、なるべくなら『誠実の刻印』はこれ以上刻みたくないのです」
コスモスはじっと考え込んでいた。
無意識にだろうか、意識の深い所で考えているのでボクには流れてこない。勿論テレパスで知ろうとすれば分かるのだろうが、意識の一部を共有している今、あえてプライベートを覗きたいとは思わない。
「カノン様、暖かい御言葉、ありがとう御座います。奴隷購入は宝石の売却額と奴隷の購入額、それらを確認してから検討しましょう」
確かに、宝石の売却額と奴隷の購入額が分かっていないと検討の余地もないね。
「カノン様、途中で泣き出して興醒めさせてしまい申し訳御座いませんでした。しかし焚き火の炎もまだ残っております。さすがにもう体で受け止めることは出来ませんが、別の形で精一杯御奉仕させて頂きます」
コスモスの唇と舌が迫ってきた。
夜のトバリに包まれ、2人の間に少しだけあった空間は、ピッタリと密着してきたコスモスの体が消し去った。
それからあと後少しだけ、「恋人の夜」は続いたのだった。




