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第5話 幼馴染からの後押し

「美月…ありがとう」


 俺は幼馴染の美月に感謝を伝え、顔を上げる。


 俺を抱きしめる美月と目が合う。


「うん。そっか」


 美月は少し安心したように微笑を浮かべ、俺から離れる。


「本当にありがとう。助かった。そろそろ朝のホームルームも始まるし、行かなきゃ」


 俺はイスから立ち上がる。そのまま新聞部の部室から退出しようとする。


「ちょっと待って」


 美月は俺を呼び止める。


「…」


 俺は立ち止まり、美月の方へ振り返る。


 俺と美月の目が合う。


「陽太君は悔しくないの? 理不尽なことをされて。悪いことをしてないのに笑いものにされて」


 美月は真剣な目で俺に訴える。美月の強い思いが伝わる。まるで俺のために怒ってるようだった。


「悔しいさ! 復讐して青井と元カノを痛い目に遭わせたいよ。でも、どうすればいいか分からないんだ。俺には、あの悪いことをした2人を不幸に落とす手段がないんだ。その方法すら浮かばない。打つ手なしだ。だから感情に任せて不満を言うことしか出来ない」


 俺は自分の無力さを実感し、悔しさで下唇を噛む。俯きながら新聞部の部室の床を見つめることしか出来ない。


 クソ! クソ! クソ!!


 俺は床を何度も踏み付け、八つ当たりしたい衝動を胸の内で必死に抑える。流石に幼馴染の前で怒りを爆発させる訳には行かない。


「あるよ! 陽太君に悪いことをした2人を不幸に落とす方法が。私に出来るよ!! 」


 美月はビシッと親指で自身の胸を指差す。


「は? なんで美月に出来るんだよ? 」


 俺は眉をひそめる。美月の威勢のいい態度がハッタリにしか見えなかった。


「できるよ! これを使えばね!! 」


 美月は傍の机に置かれた1枚の機械文字の並ぶ紙を手に取る。


「3日後に新聞部の記事を昇降口前に掲載する予定だったの。そのために昨日、記事を完成させたの。でも今は、こんな記事どうでもいい!! 」


 美月は1枚の紙を縦に真っ二つに破る。2つに分かれた紙をくしゃくしゃにまとめて適当に新聞部の部室の床に投げる。


「お願い! 陽太君の経験した辛い出来事を記事にさせて。記事に纏めて3日後に昇降口の前に貼り出すから。そうしたら、事実が学校中に拡まると思う。陽太君に酷いことをした2人を地獄に落とせるかもしれない。陽太君を擁護する人も出てくると思う」


 美月は真剣な眼差しで熱い思いを語る。その目や口調に嘘偽りなど存在しない。


「陽太君は手段が無いって言ったけど、そんなことないの。私が記事にすれば武器を手に入れられる。だから協力させて。陽太君のためにも。私のためにも」


 美月は無言の俺の手を取る。両手で俺の手を包み込む。


「…美月」


 俺は弱々しい目を美月に向ける。本当に大丈夫なのかと不安になる。記事にして上手く行くかも分からない。リスクを取ることになる。もし失敗すればどうなるかも分からない。青井や元カノのあまねに強い恨みを買われ、学校内での居場所すらも潰されるかもしれない。


「大丈夫だよ。私がついてる。どんな時も裏切らないから」


 美月は安心させるように俺に優しい笑みを向ける。幼馴染の美月にとって全て俺の心境は透けて見えているようだ。


「…美月。分かった。頼む。記事を作ってくれ。そして、青井と元カノを地獄に落としてくれ」


 俺は美月に託すように気持ちを伝える。


「うん! 任せて!! 」


 美月は元気よく返事をした。


「記事を作るために色々と聞くけどいい? 」


 美月は俺の顔色を窺いながら尋ねる。


「ああ。頼む。何でも答える」


「分かった。絶対に成功させて見せるから。今日の昼休みに、もう1回ここに来れる? 」


「ああ。もちろんだ」


「オッケー。じゃあ4時間目が終わった後すぐに来て。記事の作成に取り掛かるから」


「うん。絶対に遅れずに行くから」


「うん。待ってる」


 こうして俺と美月は昼休みに再び会う約束をした。

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