第3話 幼馴染
「はぁはぁ…」
俺はしばらく廊下を走り続けた。既にどこに向かっているのかも分からない。ひたすら目的地を定めずに走り続けた。
「はぁはぁ…はぁはぁ…」
体力の限界に達し、廊下の途中で急に立ち止まり、両膝に手を付いて、大きく息を乱す。もうどこに居るのかも分からない。
クソ! クソ! クソ~!!
おかしい! おかしい! おかしい!!
俺が悪いなんて絶対に有り得ない!悪いのはあいつらなんだ! 青井と元カノなんだよ!!! それなのに何で俺なんだよ!! 何で俺が損な役回りなんだよ? 誰か教えてくれよ!!
俺は疲労で息を乱しながらも、先程の教室で起こった出来事に対する怒り、悲しみ、悔しさ、恨み、などの感情は決して消えない。頭から離れることはない。逆に、どんどん増幅している。止まる気配は感じない。
「どうしたの? 新聞部の前で息なんか荒らして」
聞き覚えのある声が俺の鼓膜を刺激する。
「はぁ…はぁ…」
俺は咄嗟に息を整えながら、何とか顔を上げて声のした前方に視線を向ける。
目の前には、白髪のロングヘア、水色の瞳、純白な肌、薄い唇、豊満な2つの胸が目立つ美少女の姿があった。見た目が整っていることから非常に存在感を感じさせる。
「…美月」
俺は目の前の幼馴染の名前を呟く。
白井美月。俺の幼稚園からの幼馴染だ。部活は新聞部に所属している。美月が言うには精力的にも活動しているらしい。
「ああ。ちょっとな」
俺は理由をぼかす。先程の出来事での自分の対応が情けなさすぎて、幼馴染に真実を話せない。変なプライドが優勢してしまう。自分の不幸を話したくない。俺はプライドが高いのかもしれない。
「本当に? 何か変だよ? 廊下で疲れて息を乱しながら両膝を手に付いてるなんて。何かあったの? 」
美月が心配そうに尋ねる。
流石、幼稚園からの幼馴染。鋭い。俺に何かしらの出来事が有ったことを理解している。やっぱり俺はいつもと様子が違うのかもしれない。
俺と美月が無言で視線を合わせる。しばらく静寂が続く。
「…話、聞いてくれる? 美月にとって多分、つまらないと思うけど」
俺が折れて美月に思い切って尋ねる。
「もちろんだよ! 幼馴染の陽太君に何かあったら放っておけないよ! 」
「…ありがとう」
俺は心の底から感謝を伝える。今は美月の優しさがありがたい。さっきまで何でプライドが優勢して話さなかったんだろうと、疑問と後悔を抱く。
「まだ朝のホームルームまで時間あるから。話は新聞部の部室で聞くよ。この時間は私以外に誰も来ないから安心して」
美月は部室のカギを開け、俺に入室するように促す。
「ありがとう」
俺は美月の誘導に従い、新聞部の部室に入った。




