第2話 次の日の登校
次の日。
俺は憂鬱な状態で登校する。
本当は学校に行きたくなかった。ズル休みしたかった。だけど頑張って登校した。
いつも通りの昇降口を抜け、階段を上がり、廊下を進む。
「はぁ~〜」
自分のクラスの前で大きな溜息を吐く。嫌で仕方がない。
俺の彼女を寝取った青井や寝取られた上に別れを切り出した元カノのあまねの姿を見ると思うと吐きそうになる。自然と気持ちは下降する。今すぐにでも帰りたいと強く思う。
「はあぁぁ~〜。行くか…」
俺は教室の戸をゆっくり開けて、後方から入室する。見慣れた電気の点いた教室の景色が目に入る。
「お! 来たぜ!! 俺に彼女を寝取られた奴が!!! 」
青井が俺の登校に気付くと、大きな声で教室中に知らせる。
クラスメイト達の視線が俺に集中する。
「さっき話してた奴。俺があまねを寝取っちゃったからさ。あいつ今日、来ないと思ったんだけどさ。何か来てるんだけど。ウケんだけど。かなりの傷心中だぜ。ぎゃははは〜〜」
青井は大笑いする。
隣に座る青井に肩を抱かれる元カノのあまねも口元を手で抑えながら堪えるようにクスクス笑う。
クラスメイト達も空気を読んで倣って笑う。
「仕方ないよな? 俺とあいつ。誰だっけ? まあ、あの陰キャとは人気も顔も差がありすぎるからな! それは、あまねみたいな可愛い他人の彼女も寝取られちゃうわけよ! これも俺の実力だからな! はっはっはっ!! 」
青井の笑いは止まらない。
あまねもあまねで、笑みを絶やさない。
クラスメイト達も誰も注意せず、怒ったりもせず、取り繕ったような笑い声を上げる。
「なんだよ…これ…」
俺は目の前の光景が信じられなかった。本当に現実かと疑ってしまう。
他人の彼女を寝取って武勇伝で自慢するクラスカーストトップのイケメン。そのイケメンと付き合って、メスの顔をして武勇伝に耳を傾け、笑う元カノ。イケメンの寝取られの自慢を注意もせず、空気を読んで笑うクラスメイト達。
なんだこれ? 理不尽すぎる。
なんで俺が笑いものにされるんだよ?
悪いのは寝取った青井と寝取られたあまねだろう?
なんであいつらは何も言われないんだ? 咎められないんだ? 攻撃されないんだ?被害者の俺の方が理不尽を受けなければいけないんだ?
おかしい! おかしい! おかしい! おかしい!!
「っ!? 」
俺は目の前の現実に耐えられずに教室からエスケイプする。
「ギャハハハ!!! あいつ耐えられなくて逃げやがったぜ!! これから不登校コースかもな!! ギャハハハ!!! 」
青井の高笑いにクラスメイト達も同調する。笑い声が集まり、逃げる俺の背中を襲う。数10人の笑い声が俺の心に突き刺さる。
悔しい! 悔しい! 悔しい! 悔しい!!
死ね! 死ね! 死ね! 死ね!! 死ね~!!
俺は決して口にできず、心の中で叫びながら、学生カバンを片手に廊下を逆走した。
理不尽だ! 理不尽すぎる!
こんな現実は絶対におかしい! 腐ってる!
俺は世の中の社会や人間に絶望した。昨日の寝取られと元カノの別れ、今日の登校時の教室内での出来事、人間の汚い部分を全て見た気がした。
俺は怒り、悲しみ、悔しさ、恨み、など様々な感情が混じった心の状態で、必死に廊下を走り続けた。目的地など一切決めずに。




