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第29話 幼馴染が『一緒に寝たい』と言ってベッドに潜り込んできたけど、キス寸前で母に邪魔された

(赤岩陽太視点)


「おやすみなさい」


 そう言って俺は自分の部屋に入り、電気を消した。

 ベッドに身体を投げ出し、そのまま仰向けになる。


 真っ暗な天井をぼんやり見上げる。


 今日は色々ありすぎた。


 病院。

 診断書。

 警察署。

 被害届。


 普通の高校生活とは、なかなか思えない1日だった。


(……疲れたな)


 そう思いながら、ゆっくり瞼を閉じる。


 眠りに落ちようとした、その時だった。


 カチャッ。


 静かな部屋に、小さな音が響く。


(……?)


 俺はゆっくり目を開き、音のした方向を見る。


 ドアが少しだけ開いていた。


 そして――


「……美月」


 そこに立っていたのは、ピンクのパジャマ姿の美月だった。


 ドアの隙間から、ひょこっと顔だけ覗かせている。


 髪はお風呂上がりなのか少し湿っていて、柔らかく肩に落ちている。

 パジャマの第1ボタンが開いており、豊満な胸の谷間が覗いている。


「来ちゃった」


 美月は、えへっと笑い、俺の部屋に入る。


 今日は帰りが遅くなったせいで、美月はうちに泊まることになっていた。


 だけど――


「来ちゃったじゃないよ! なんで来たの?」


 俺は慌ててベッドから上体を起こす。


「一緒に寝たいからだよ!」


 美月は当然みたいな顔でそう言いながら、スタスタと俺のベッドまで歩いてきた。


「いやいや。流石にまずいでしょ!」


 思わずツッコミが出る。


「いいじゃん、いいじゃん」


 まったく気にする様子もなく、美月はベッドに潜り込んだ。

 

 布団がふわっと持ち上がり、

 

 次の瞬間、俺のすぐ隣に体温が滑り込んでくる。


 そして――俺の隣に遠慮なく寝転がる。


「はぁ〜〜。疲れた〜〜」


 美月は天井を見ながら、大きく息を吐いた。


「今日はいろいろなことがあったね。診断書もらったり、被害届出したり」


 そう言って、横にいる俺の方を見る。


「……そうだね」


 俺は天井を見つめたまま、短く答えた。


「なになに! 反応良くないぞ〜」


 美月がニヤニヤしながら、ぐっと距離を詰めてくる。


 肩が触れる。美月のぬくもりが直に伝わる。


 近い。とにかく近い。


「ちょ!? 俺も男なんだぞ! もうちょっと距離考えてよ!」


 俺は慌てて身体を横にずらす。


「どうして?」


 美月が不思議そうな顔をする。


 少しだけ、寂しそうにも見えた。


 背中を向けた俺をじっと見ている。


「理性が……保てなくなるから」


 俺は小さく呟いた。


「理性が保てなくなったらどうなるの?」


 すぐに美月が聞いてくる。


「……」


 俺は黙り込む。答えられない。


「ねぇ、答えて」


 次の瞬間。


 後ろから、ぎゅっと抱きつかれた。


 美月の腕が俺の腹に回る。


 背中に柔らかい豊満な胸の感触が伝わる。


「ちょ!? だから近いって!!」


「答えてくれないからじゃん!」


 美月が言い返す。


「だって……そういうのって……その……」


 言葉が詰まる。


「……エッチなこととか、関係してくるから」


 俺は観念して言った。


 一瞬、沈黙が落ちる。


 そして――


「……いいよ」


 小さな声が聞こえた。


「陽太君となら」


「……え?」


 俺は思わず振り返る。


 美月は頬を赤くしていた。


「いいよ。私は陽太君とそういうことしても」


 恥ずかしそうに、でもまっすぐ俺を見ている。


「……美月」


 俺は名前を呼ぶ。


「……陽太君」


 美月はゆっくり目を閉じた。長いまつ毛が、わずかに震える。


 吐息が、頬にかかる。


 そして、少しだけ唇を突き出し、顔を近づける。


 静かな部屋。


 お互いの呼吸だけが聞こえる。


 俺は自然と目を閉じ、顔を近づけ――。


 あと少しの所で重なりそうで――。


 パンパンッ!!


「はい。イチャイチャはそこまで〜!」


 突然、部屋に乾いた音が響いた。


 俺と美月の動きが止まる。


 ゆっくり振り向くと――


 そこには腕を組んだお母さんが立っていた。


「はい! 美月ちゃんもそこまで! そろそろ出ていきましょうね」


「えぇ!? ちょ、ちょっと待ってよ〜!」


 お母さんは美月の腕を掴み、ぐいぐい引っ張る。


「おばさ〜ん! せっかく、いいところだったのに〜〜!」


「はいはい。あなたたちにはまだ早いのよ。せめて私がいない時にしてちょうだい」


 そう言ってお母さんは美月を廊下へ連れ出し。


 バタン。


 ドアを閉めた。


 部屋には俺だけが残された。


 シーン……


 静まり返る部屋。


 数秒、俺は天井を見つめた。


 そして呟く。


「……うん。寝るか」


 ……寝れるかよ。

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