表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

第十一章 繋がる軌跡

 事務所には、いつもの静けさが戻っていた。

だが、その静けさの中にある空気は、これまでとは明らかに違っている。すでにいくつかの点は揃い、あとはそれを一本の線にするだけ――そんな段階に入っていた。

夏野が机越しに田所を見る。

「先生はもう犯人の目星はつけてるんですか?」

田所は椅子に深く腰掛けたまま、視線を資料に落としている。

「ああ。最初から怪しいと思っていた。だが、有罪に持っていくには確証が必要だ」

静かな声だった。

夏野が少し身を乗り出す。

「犯人は誰なんですか?」

「まぁ、そう焦るな。確証を掴むほうが先だ」

その口調は変わらない。

夏野は小さく息を吐いた。

「どうするんです?」

田所は一枚の紙を指で軽く叩いた。

「これは冷蔵庫の温度変化のログだ」

夏野が覗き込む。

数値が時間ごとに並び、わずかな上下を繰り返している。

「温度が上がってるところは冷蔵庫を開けて荷物を出し入れしたって事ですよね」

「そうだ。ここを見てくれ」

田所が一点を指す。

他の箇所と同じように温度が上がっているが、その後の下がり方が明らかに違っている。

夏野が目を細める。

「他のところは温度が上がっても少ししたら元の温度に戻ってますが、ここだけ温度の戻り方が緩やかですね」

「ああ。庫内の温度が下がりにくくなるほど大きなものが入れられたってことだ」

その言葉の意味は明確だった。

夏野が小さく息を呑む。

「じゃあ、この時間が遺体が入れられた時間なんですね」

「そうだ。だからこの前後の時間を重点的に調べる」

夏野が首を傾げる。

「調べるといっても何を?」

田所は淡々と答える。

「防犯カメラの映像だよ」

「でも、その時間帯の村井運輸の防犯カメラの映像は削除されてたんですよね?」

「ああ。でも防犯カメラがあるのは村井運輸だけじゃない」

夏野は一瞬、考える。

「どういうことです?」

田所は視線を上げた。

「今にわかるよ」

それ以上は何も言わない。

だが、すでに手は打たれている。


 その頃、車内。

山岸のスマートフォンに通知音が鳴る。

画面を確認し、届いたメールを開く。

内容を一通り読み終えたところで、口元がわずかに動いた。

「……なるほど」

中島が横目で見る。

「どうしたんですか?」

「田所からの指示だ。全く大した男だよ」

中島が少し身を乗り出す。

「何か分かったんですか?」

山岸は首を振る。

「いや、そうじゃないが、おそらくこれで事件解決だ。急いで調べるぞ」

中島の表情が引き締まる。


 五時間後、新宿東警察署。

捜査室の空気は張り詰めていた。

複数のモニターに映し出される映像を、山岸と中島が食い入るように見つめている。

時間を遡り、対象の時間帯を絞り込み、映像を繋いでいく。

断片だった情報が、少しずつ形を持ち始める。

中島が突然声を上げた。

「あった!ありました!」

山岸が即座に振り向く。

「よし!じゃあ、それに繋がるのは……次はこれだ。お前はこっちを確認しろ」

「了解です」

中島はすぐに別の端末へ移動する。

映像と映像を繋ぐ。

点と点を線にする。

その作業を、ただひたすら繰り返す。


 更に三時間後。

室内の空気は重く、だが確実に収束へ向かっていた。

中島が再び声を上げる。

「ありました!」

山岸の目が鋭くなる。

「これで揃ったな!家宅捜索と車を調べる令状が取れる」

中島の顔に安堵と興奮が混じる。

「これで解決ですね!」

山岸は短く頷いた。

「田所に連絡して、令状を取りに行くぞ!」

「了解です!」

二人は立ち上がる。

全てが繋がった。

あとは、それを突きつけるだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ