第八節 2023/4/15 アウェイ 対鹿島アントラーズ 5対1
「遠かったですね」
「そうだね。本当に遠かった」
「よくこんな田舎に、Jリーグのチーム作りましたよね」
「でも鹿島はリーグ屈指の名門だ。今日勝てると勢いに乗れる気がするよ」
「なるほど」
少し合間を置き、小林さんが喋り出す。
「この前、村田さん死にたかったって、言ってたじゃないですか?」
「そうだね」
「あれ、私には意外でした。村田さんみたいな、社会と上手に折り合いをつけて生きてきたような人が、そんなことを思ったことがあるなんて」
小林さんの心境に、少し変化があったのだろうか。私はおそるおそる尋ねてみる。
「小林さんは今も死にたいの?」
小林さんは一呼吸おき、堂々と答える。
「死にたいです。でも、この旅で少しずつ変わってきたものもあります。言葉ではうまく表現できませんが」
「変わったのならいいことだと思う」
「悪い方向に変わったのかもしれませんよ」
小林さんが、茶目っけを出しながら答える。
「死にたいより悪いことなんてないよ」
「そうでしょうか?」
「そうだよ」
少し楠のことを思い出しながら、断言するように、再度言葉を紡ぎ出す。
「死にたいより悪いことなんてない」
「ふーん。そういう風に、村田さんは考えてるんですね?」
小林さんが私をじっと見つめる。
私は見つめ返す。
「まあいいです。今日の試合に集中しましょう」
試合は5対1の圧勝だった。
あの鹿島に圧勝という事実に、私は興奮を抑えられなかった。
「勝った!勝ったよ!今年はいけるかもしれない!」
「村田さんはリアリストじゃなかったんですか?」
小林さんが意地悪く答える。
「いや。今年はチームが違う!」
興奮を抑えられぬまま、私は答える。
私の興奮を抑えるように、小林さんが喋る。
「でも帰るの大変ですよね」
急に現実に引き戻される。
「確かに・・・でも今年は行けそうだ」
そう呟きながら家路についた。




