祝、開店
鉱山都市『ティシカ』
その中心にある屋敷の寝室でベインズはベッドに横たわったまま副官の報告を受けていた。
「グレイポートに出店した店の売り上げは上々のようです」
「は?」
「ベインズ様の指示通りに、倉庫に眠っていた質の悪い武器を流したことにより利益の伸び率は他の店舗と比べても最高となっています」
「そ、そうか,,,,,,。く! いたたたた」
「大丈夫ですか?」
「......昔の怪我が痛むだけだ」
「少し女性のほうも控えて下さい」
「うるさい! 下がれ!」
(なんで、儲かる? 売り上げが悪い所をエステリオの妨害だと文句を言いに行く作戦だったのだが......。あいつがそれに気づいて買い占めたのか? くそ! それにしても腰が痛い)
屋敷の寝室にはベッドで唸るベインズを優しく介護する、12人目の妻となった町の娘と弟が資金融通の代わりに送ってきた女性の姿が見えた。
****
「主殿、少しいいか?」
「どうした? クルガ」
「東地区に出来た新しい商店の話を耳に入れて置こうと思ってな」
「へえ、そんなのが出来たんだ」
「うむ、武器を中心に扱っていて、腕の良い鍛冶師も抱えていて評判はなかなか良いそうだ」
「そうなんだ。丁度、家事も終わったし覗きに行ってみよう」
俺はアルムに留守番を任せ、クルガと東地区を目指した。
宿屋や商店が建ち並び、冒険者風の人達が行き交うのが目に入る。
通りには屋台も出ていて、グレイポートでも一番活気がある地区だ。
クルガはいつの間にか町の地理にも詳しくなっていて、俺達は迷うことなく新しく出来たという店にたどり着いた。
「こんにちわ~」
俺はそう言いながら、店の中に入っていく。
「ん? カツとクルガか」
そこにはアオイさんの姿があった。
「アオイさんじゃないですか、どうしたんです?」
「鍛冶師の噂を聞いてきた。でも休み」
「あらら、それは残念ですね」
「すみません。忙しさで肩を壊してしまったそうで。品物だけでも見て行って下さい」
そう言って頭を下げるのは、この店の店長のようだ。
「肩ですか......。近々、中央地区でマッサージ店を開く予定です。良かったら鍛冶師の方に伝えておいて下さい」
「そうですか、わざわざありがとうございます。必ず伝えておきますので」
俺は軽く自分の店の宣伝をして、店内の武器を見ていく。
武器の善し悪しが分かるはずも無く、ただ目の前に並ぶ様々な武器を目の前に目を輝かせていた。
(格好いいな~、1本買っちゃおうかな~)
「買うのか?」
アオイさんがそう声を掛けてくる。
「必要は無いんですけど、少し欲しいですね」
最近は魔法の金属で出来ている右手の形状変化にも慣れてきて、様々な物に変化させることが出来るようになっている。
もちろん武器にもだ。
だが俺は武器に下げられた値札に目を遣り、購入を躊躇する。
(結構するな......)
家を買うのに大金を使った後なので、無駄遣いは控えたい。
「また、今度にしようかな~」
「そうか、じゃあ帰ろう」
アオイさんは気づけば俺の腕に自分の腕を絡ませている。
(第2夫人になるのは本気なのかな?)
俺は気まぐれなアオイさんの気持ちを、どこか捉えきれずにいた。
グイっと腕を引っ張るアオイさんに促され、店を出ていく。
「冷やかしですいません、またお邪魔しますので」
「いえいえ。マッサージ店の件、伝えておきますので」
「ありがとうございます」
俺は店の宣伝をしに来ただけの格好となり、店長に頭を軽く下げた。
****
昼食をクルガの案内で、隠れ家的な店に赴き、そこで食べた。
「美味いな」
「うむ」
「よく、こんな店を知っていたな」
店はまた一人で来ようと思っても迷子になるような路地裏にあった。
クルガは少しドヤ顔で料理を食べている。
そして、家までやってきた未来の第2夫人に、やや強引ながらも誘惑され肌を重ねるのだった。
****
数日後、俺のマッサージ店がオープンすると、多くの客が訪れてくれた。
その中には肩を痛めた東地区の鍛冶師の姿もあり、マッサージの効き目に大いに満足して帰っていった。
個別に仕切りを設け、同時に4人まで対応できる店内は常に満員となり、今では『闇の触手』の扱いにも慣れた執事のアルムと一緒に、客の対応に励んでいく。
女性客に対応したとき少し残念そうな顔をされるのが、少し悲しくもあったが、順調な滑り出しと言っていい結果だった......。
初日はお祝いがてらに訪れる顔見知りがほとんどだったので、勝負は明日からだろう。
集客次第では、何か宣伝も考えなくてはいけないかもしれない。
読んで頂きありがとうございます。
感想
誤字、脱字の報告など頂ければありがたいです。




