守りたい物
エステリオさんの屋敷の『魔導冷蔵室』の設置は順調に進んでいた。
冷却機能は要望通りの3段階調節。
『魔導ライト』もオプションで室内灯として天井に設置した。
使った『魔力蓄積器』は4個。
なかなか豪華な仕様だ。
南地区の職人達も大いに腕を振るい『魔導冷蔵室』は完成間近となっていた。
完成を待ちわびているのはエステリオさんだけではなくメイドの女性もなんだか楽しげだ。
そしてエステリオさんとメイドの関係がなんだか怪しい。
そのメイドの振る舞いはまるで妻の如くってやつだ。
まあ、貴族ともなると身分の違いやらなんやらがあるのだろう。
だが、実年齢80才のくせにやるもんだ。
(今度カマかけてやるか......)
俺が寄り添う二人に視線を送ると、それに気づいたのか急いで離れ、照れ隠しに頭を掻いているエステリオさんがなんだか可愛く見えた。
エステリオさんは、手の届く範囲だけでも守りたいと言っていた。
きっと彼女のことを一番近くに置いておきたいのだろう。
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俺の作業としては、ほぼ終了したので家に帰ると、すでに帰宅していたセリアが夕食の準備をしていた。
「おかえり」
セリアは振り返って笑顔で出迎えてくれた。
「ただいま」
俺も笑顔でそれに答える。
この世界で守りたい物が、すぐそこにあった。
クルガは夕食も取らずに出掛けていった。
なんでも、近所の牝犬とデートなんだとか。
家にはセリアと俺だけになった。
セリアと二人きりになるのを久々に感じる。
それが、なんとも照れくさい。
そして俺は意を決して口を開いた。
「なあセリア」
「なあに?」
「家を買おうと思うんだ」
「......うん」
「マッセージの店を開くのもいいかなって思ってる」
「......うん」
「それとさ......」
「......」
「結婚してくれないか?」
「うん!」
セリアは大粒の涙を流した。
だが、その顔は悲しみではなく笑顔に溢れていた。




