南地区(魔法のエアコン外観改善)
エステリオさんに屋敷に招かれた後、家に戻った俺はセリアに何を話したか聞かれたが、魔法のエアコンの商談だったと答えた。
実際そうなのだから、問題ないだろう。
白金貨10枚での契約にはセリアも驚いていた。
(ちょっと外観に力を入れてみるか......)
セリアとアオイさんにラヴェーラ辺境泊の人となりを聞いてみると、大体はエステリオさんの話と一致した。
かなり苛烈な性格の持ち主らしい。
エステリオさんの人柄はよさそうな印象だが、なにせ相手はトータル80年生きた経験がある。
そのまま言うことを鵜呑みにはできない。
この町に長く居るアオイさんに聞いても、エステリオさんの人柄は温厚で聡明な好人物のようだ。
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翌日、薬屋のディックの所に行き、エステリオさんに白金貨
10枚で魔法のエアコンを売ることが決まった事を伝える。
「領主様にか! それじゃ気合い入れないとな」
「ああ、試作品みたいな作りじゃ流石にな」
「性能は申し分ないから、外観だな」
「そうなんだよ、良い職人の当てはないか?」
「木材なら南地区だな」
「南地区か......。それと次の道具なんだが......」
「分かった、準備しといてやるよ」
ディックはそう言うと、奥の作業室で『魔力蓄積器』の下準備を始めた。
そして俺はドランさんを案内係に伴い、クルガを護衛に南地区へと向いのだった。
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林業関係者が多く住まい、大工や家具職人も多く店を構えていた。
通りには木の匂いが漂う。
目的は家具屋か大工探しだが、店を覗くうちになんだか自分も店を構えてみたいと思ってしまう。
(だが開くとしたらマッサージ店? それとも魔法道具屋?)
「俺も南地区の職人までは詳しくないんでな。取り合えず南地区の衛兵詰め所に行ってみるか」
「お願いします」
南地区の衛兵詰め所を訪れると、そこには暑さで顔を赤くし汗を流しながらも業務に精を出す衛兵達の姿があった。
「西のドランだ。隊長は居るかい?」
ドランさんが声を掛けると大柄な筋骨隆々の男性が奥から出てきた。
「よう、久しぶりだな。連れは誰だい?」
「ん? ああ、西の住人でな。ちと職人を捜しているんだ」
「......噂の魔法使いじゃないのか?」
「ははは、隠しても仕方ないか」
「わざわざお前が案内するんだ。普通の住人じゃないわな」
「すまんなカツ。あっさりばれちまった」
ドランさんは申し訳なさそうな顔で俺を見る。
「構いませんよ」
俺はそう言うと挨拶代わりに詰め所内に『氷の魔法』温度低下を展開する。
「「おお!」」
下がった気温に衛兵たちから声が上がる。
「大したもんだな。......うちにも週1ぐらいでも来てくれないか?」
「マッサージですか?」
「ああ、効き目は抜群らしいじゃないか」
「分かりました、出来るだけ寄らして貰いますよ」
「助かる。で、職人だったな」
「はい。木材の加工や装飾を頼みたいんですが」
「ふむ、案内を付けてやろう。おい! ティア!」
「ひゃ、ひゃい!」
涼しさに顔を緩めていた女性が声を上げる。
年はセリアと同じぐらいだろうか?
「ティアは職人のジジイ達に可愛がられてるからな。話も聞いてくれるだろう」
「ありがとうございます」
俺たちはティアという女性に案内され町を巡った。
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町を巡り職人に声を掛けると次々に気難しそうな職人が集まる結果となり、最後に訪れた職人の家でちょっとした会合が開かれる事になってしまった。
「で? ティアちゃんに呼ばれて集まったが、何を作って貰いたいんだ?」
俺は実物を見せた方が早いと、クルガに西地区のディックの店まで走って貰った。
そして『魔法のエアコン』を集まった職人に見せる。
「これの外観をお願いしたいんです」
「ふむ、たいした物だな。客は領主様だったな」
「はい、白金貨10枚の値段です。それにふさわしい外観にして欲しいんですが」
「予算は?」
「1割の白金貨1枚でどうでしょう」
「乗った!」
「おいおい、俺にも噛ませろやい!」
「お前、大口の仕事で忙しいんだよな?」
「あんなもん、後回しだ」
職人達はやりがいのありそうな仕事に声を上げていく。
腕に覚えのある職人が、いい予算の仕事に思う存分腕を振るえるとあって興奮していた。
「まあ、手分けしてやっちまうか」
「兄ちゃん、次もある仕事なんだろ?」
「ええ、領主様のは特別ですが、普通のでも白金貨5枚の値段を付けるつもりです。それに他の道具も考えていますので、その時も協力して欲しいですね。」
「なんか注意点はあるか?」
「そうですね、この羽根の部分ですかね。風が分散するように微妙な反りが付いてますんで」
「なるほどな。まあ、任せておけ」
完成したらティアさん経由で連絡が来るそうだ。
俺たちは完成を楽しみにして南地区を後にした。




