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密談

 俺はグレイポート一帯を治めるエステリオと言う男に招待され、家に迎えに来た馬車に揺られていた。


 馬車にはセリアとクルガ、そして何故かアオイさんまで乗っている。


「着きました」


 馬車が止まると、ゆっくりと扉が開けられる。


 目の前の屋敷はそれほど大きな物では無かった。


****


「ようこそ。歓迎しますよ」

「どうも」

「まあ、そんなに警戒しないで下さいよ」

「そう言われても」


 目の前の相手は日本語を使っただけなのだ。

 見た目も日本人とは思えない。

 得体の知れない相手を前に警戒するなと言う方が無理な話だ。


「まあ、食事でも楽しんで下さい」

エステリオはそう言うと、俺たちを食堂に案内した。


「まあ、口には合うと思いますよ。特にカツジさんには」


 その言葉通り、目の前には懐かしい料理が並べられていた。


「珍しい料理だね」


 セリアは料理を前にそう言い、目を輝かせていた。


「懐かしいな」

俺は思わず呟く。


「私にはエアコンの方が懐かしく感じましたよ」


「そうですか」


「まあ、座って下さい」


 エステリオの言葉で席に着くと、みんなは珍しい料理に。俺は懐かしく感じる料理に舌鼓を打った。


****


 食事が終われば、屋敷の一室に案内されエステリオと二人だけで日本語での会話が始まる。


「まずは自己紹介からしましょうか。私は真田靖次、寒村の村役場に勤めていたんですよ。今はエステリオという名前をもらい貴族の4男坊という立場ですけどね」


「石原克治です。気づけばこの世界に居ました」


「そうですか。私は転生。あなたは転移してきたという所ですかねぇ」

「そうなんでしょうね」


「50の時に事故で死んでしまい、この世界で30年生きました。物語のように特殊な能力はありませんが、なんとかこの町を発展させようと色々やっている所です」


「あのお米もあなたが?」

「ええ、味は近づいてきてるでしょ?」

「はい、助かってます」

「それは良かった。同じ日本人に言ってもらえると嬉しいですね」



 俺は、目の前の男の風貌から、同じ日本人という言葉に違和感を感じた。

 まるで日本語がペラペラな外人を見るような感覚だ。



「駆け引きは得意じゃありません。用件はなんですか?」

「......そうですね。とりあえずは協力関係を築ければと」

「協力、ですか?」


「少し調べさせて貰いました。石原さんは、なかなか凄い力をお持ちのようだ。それに魔法のエアコンを作るような知識もお持ちのようですしね」


「力を貸せと? 何の為に?」


「今は何もありません。しかし、この世界での私の父親は随分と野心家なんですよ。いずれ王国から独立をして戦乱を引き起こすかもしれません」


「戦争ですか」


「そうですね。そうなった時に、手の届く範囲。せめてグレイポートの人達だけでも守りたい。そう思っています」


「そうですか。......俺にもこの世界で守りたいものがあります」


「......お互い、その助けになれればと思っています」


「......その時は、よろしくお願いします」


 俺は真田靖次改めエステリオさんと固く握手をした。


****


「ちょっと『闇の触手』と言うのを見せて貰えませんか?」


 少し警戒が解け、お茶を飲みながらの談笑をしながら、エステリオさんがそう言ってきた。


「構いませんよ。なんならマッサージしましょうか?」


「おお! 昔、落馬したときに肩を痛めましてね。お願いできますか?」


「ええ。行きますよ、驚かないで下さいね」


 俺はそう言って『闇の触手』を出現させる。

 驚くエステリオさんに触手を絡ませ、痛めたという肩を中心に揉んでいく。


「おお! これは効きそうですね」

「衛兵のみんなからは評判はいいですよ」


「ところで、魔法のエアコンですが。売って貰えませんか?」

「......まだ、試作段階なんで無料でいいですよ」


「いえ、白金貨10枚をお支払いします。研究費用も掛かっているでしょうから。その代わり次に何か作る時は私も混ぜて下さい」


 エステリオさんは少年のように目を輝かせてそう言った。


「何かアイデアあります?」

「やはり兵器への転用が頭に浮かびますが。......なにか産業の発展に役立つような物が先ですかねぇ」


「兵器......いいんじゃないですか? まずは身を守る力が必要ですよ」

「確かにそうなんですよね。あまり此処が発展しすぎると、逆に父に目を付けられます。最悪、軍を出動させてくるかもしれません」


「親子......なんですよね?」


「それが生まれてから2回しか会ったことがないんですよ。母も死んで、育ての親も一緒にグレイポートに居ますので。父という感覚があまりありませんね」


 その後も、エステリオさんとの会話は夜遅くまで続いた。

 懐かしい日本語での会話と言うこともあったが、エステリオさんと気が合っているのかもしれない。


 そんな俺をやきもきして待っている3人の事を俺はすっかり忘れていた。

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