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G vs B

6 捜索


 午後九時。

 神室の通信ヘルメットから「かぐや姫」と暗号名で呼ぶ法源の声が響いた。

「どうだよ、そっちはよ」

「桃太郎」と神室は同じくコードネームで返答する。「中央卸売市場付近まで来たけど手がかり無しね」

「どだい二人で捜索するなんて無茶だよな」とため息交じりの法源だ。

「警察車両もパトロールしているし私たちだけじゃないよ」

 そう言う傍から赤色灯を回転させるパトロールカーが通過する。

「いまどこいらまで?」

 神室の声に法源がこたえる。

「横浜ノースドック付近だ。さすがにここにいる訳無かろうな」

「――待って」

 神室はいきなりヘルメットに両手を充てた。

「至急至急、神奈川台場公園にて戦太郎発見、全車両急行せよ」

 警察車両無線の声が響く。

「目とはなの先だわ」

「分かった」

 神室はかき消える様な速さで万代橋を駆け抜けた。

 中央市場通りは交通規制が敷かれ公園を中心とした一帯が赤色灯で赤く染まっている。

 神室の前には警察官が待機していた。

「今回バイオボーグを補佐するミハシです」

 ミハシは敬礼した。

「何処にいるって?」

「アソコです」

 神室の声にミハシは指をさす。

 確かに立ち並ぶ木々の中に夜陰に紛れ巨体を丸めるようにした戦太郎がいた。

「よく見つけられたね」

「十二号車両が見つけました」

「刺激しないように」と神室は指示する。

「どこだよ?」と法源も顔を出した。「あれか。ドラム缶のようだな。あれで隠れているつもりかい」

 警察無線があちこちで怒鳴っている。しかし戦太郎はしゃがみ込んだままピクリとも動かない。

 法源は毒づく。

「気がついてんだろうによ」

 神室は答える。

「気がついていると思うよ。ただこちらからアクションを起こしてないから相手も様子を伺っているんだろうね」

 神室達のヘルメットから警察無線が流れた。

「戦太郎居場所特定。至急、神奈川県警特機対策班、向かえ」

 法源は口をへの字に曲げた。

「神奈川県警はあくまでも抗戦するつもりかよ。止めたほうがいいって」

 そんな騒動を他所に戦太郎は動かない。

 傍らでミハシは言う。

「特機対策班は二〇ミリ弾丸を扱います。弾丸と言うより砲弾です」

「そりゃたくましいぜ」

 法源は皮肉交じりに言うが、ミハシはこれで絶対決着がつく、と確信している。それほど二〇ミリ砲・KSS-20の威力は桁違いなのだ。

「かぐや姫よぉ……早いことこのGPS付けちまおうぜ」

 神室は目を細め動かない戦太郎を見つめる。ヘルメットのセンサーが『距離百五十』と表示された。

「この距離ならバイオアームで届かないことはないけどね、命中精度と戦太郎が動き出したら……ヤバいわ」

「距離を縮めるか」

 法源の問いかけに神室は「特機対策班次第ね」と神室は答えた。


 午後十一時、特機対策班がやってきた。

 戦太郎に動きはない。

 特機対策班四人は警察車両から三脚固定架台を降ろし、そこへKSS-20の取付にかかりはじめた。そのありように「やっぱ、砲弾だな……」と法源は呟いた。

 着々と準備は進むが戦太郎はピクリともしない。

 銃本体をはじめ光学精密機器、反動吸収治具、が取り付けられた三十分後、砲手の警官が座席に着いた。

 その横には装填手、観測手が並んだ。

「装填、完了」

 装填した警官が報告した。

 観測手の警官が高倍率スコープで戦太郎を確認する。

「距離百三十。目標、戦闘型Gドロイド」

 射手の警官も確認した。

「距離百三十、確認」

 射手の警察官はベテランだ。

『こんなもん、警察の仕事じゃねえな……だがやるしかねえ』

 この時、おお……と小さく声がした。戦太郎がおもむろに姿勢を変えたのだ。

「ヤツはこっちの動きに気づいてやがる」と法源。

「発砲ッ!」

 号令にベテランはスイッチを押した。

『くたばりやがれッ』

 ズドン……と言う重厚な射撃音と共にベテランが放った二〇ミリ砲弾が戦太郎に襲いかかった!

 命中すると、ぐわんと言う盛大な音が響き、火花が散った。同時に戦太郎は仰け反り転がった。

「やったか!」

 警官達は喜ぶような声をあげた。

 しかし――戦太郎は立ち上がった。

「装填っ」

 装填手が次の砲弾を手にするが――

「駄目だッこっちに来るッ、退散だッ」

 警察官がちりぢりにその場を離れる。砲撃手も座席から飛び降り逃げだした。

『くそ化けもんがッ』

 戦太郎は足早に迫ってきた。立木をへし折り、それを武器にするかのように振り回した。

「姫、逃げるぜっ」

 法源は叫ぶが警察官の退避は始まったばかりだ。そして無表情に迫り来る戦太郎。

『排除』の戦太郎の声がするようだ。

「このままじゃ全滅よっ」

 神室は叫ぶとダッシュすると戦太郎に挑みかかっていった……


 重量級にライト級では違いすぎる。


 しかし神室は左肩を当てるように飛びかかっていった。軽量級とはいえその加速度は半端ではない。戦太郎の厚い胸板に神室の左肩がぶち当たり、戦太郎は蹌踉めいた。

「今だッ」

 法源はシールを剥ぎ取り戦太郎に投げつける。同時に戦太郎に飛びかかる法源。

 二人の攻勢に戦太郎は怯んだ。

『脅威、脅威』

 戦太郎の頭脳回線が慌ただしく回答を探る。

「これでもかッ」

 法源が空中高く飛び上がり右脚を繰り出す。

 戦太郎の首筋に当たり蹌踉めいた。しかし踏ん張る戦太郎だ。

 神室は目にも止まらぬ動作で左右のパンチを戦太郎のボデイに繰り出す。

 神室の腕力に戦太郎は蹌踉めくが、神室の右腕を捕まえた。そして強引に振り回す。宙に舞う神室。


 それは凄絶な戦いだ。


 神室は地面に叩きつけられる。それも手を放つこと無く二度三度。ヘルメットと共に大地に打ち付けられる神室。手を離すと神室は大地に転がった。


 強化戦闘服でなければ神室は絶命したはずだ。


「このくそったれっ」

 法源浩一郎は宙に舞い戦太郎の首筋にさらに右脚を見舞う。

 ガン……音が響き腰砕けとなるが戦太郎は怯まなかった。

 戦太郎は飛び降りた法源に掴みかかった。即座に左足を掴み法源を大地に叩きつける。

 

 二人は突っ伏したまま動かくなった。

 いかに強力なバイオボーグでも戦太郎の敵ではない――


 戦太郎は次の獲物を求め前後左右に首を振る。

 そこに腰を落とし逃げ遅れた若い警官を発見し戦太郎が歩み寄る。

 恐怖にかられる若い警察官は大きく目を見開き脂汗を垂らしながら後ずさりした。

「こっち来んなぁ!」

 腰が立たない。足に力が入らない。迫り来る恐怖に警察官は手を震わせ腰の拳銃に手を当てた。しかし手にも力が入らない。抜こうにも抜けない。

 正面には無表情の戦太郎が……

『駄目だぁッ……』

 死を覚悟した警察官に戦太郎の回路が答えを弾き出した。


『無抵抗。排除完了』


 戦太郎は腰を抜かし震えている警官を無視して夜の街に消えていった――



 寝付かれない深夜、何度も寝返りを打つ天馬楓。ふと壁の時計を見やると「午前四時半」を示している。

『琴葉、どこにいるんだろ……今度の休み、伯父様に相談してみようか……両親への、ごめんなさい、もあるし』

 天馬はカーテン越しに赤いライトが瞬いているのに気がついた。

『こんな時間に?』

 そっと起きだしカーテンを少し広げ左右を見回す。

 道路の向かい側に警察車両が密やかに停車しているのが分かった。赤い色の正体は回転灯だ。

『事件?……まさか、もしかして……』

 不安を感じた天馬はパジャマの上からガウンを羽織り、マンションの玄関先まで降りていくと玄関アプローチに二、三人の人影がある。

 年配の女性が天馬にヒソヒソ声をあげる。

「なんとかいう怪物がこっち方面に向かってるらしいって、警察の方が」

「ほんとですか」

「来たらサイレンならすんだって」

 いかにも世話付きそうなおばさまが喋った。「マンションに入ってきたらどうしましょう……」

 ガウンのポケットから携帯が鳴った。見ると「和田総括」の名前が。

「就寝中悪いが緊急事態だ。至急対策室来てくれ。場所は……」

 踵を返すとおばさまを後に自室に戻った天馬はクローゼットを開ける。そこには真新しい上下一体式の戦闘強化スーツが吊されている。

『まさか使うとは思わなかった……』

 天馬は愚痴るようにつぶやき支度を調え、部屋を飛び出していった――


 テント張りの対策室を見つけ、中に入った。急ごしらえの仮設対策室には長椅子に神室と法源が放心状態で座っている。そして和田総括の姿があった。

「応援補助隊を呼んだのは他でもない」と和田は話し出す。「戦太郎はみなとみらい地区に進出した。阻止すべく警察車両でバリケードを作ったが、あんなもの戦太郎にとっちゃあおもちゃだ」

「目的はなんですか?」

「目的など、無い。ただ暴れまくっているだけだ。だから始末におえん。大規模災害救助隊の二人もあの通りだ」

 顎をしゃくる和田。

「まさか……戦ったんですか?」

「ああ、住民と警官を守るためにな。果敢に行動してくれた」

 天馬は俯く二人を見つめた。

「エキスパートの二人があの状態では……」

 和田は言う。

「補助員の君をこういう形で呼ぶとは思わなかったが、三人で戦太郎を阻止してくれ。いや半人前と言うことは十分理解している。だが、ここのままだと横浜中心地は地獄になる」

「二人かかっても出来ないことに、あたしはどうすれば良いのですか」

 天馬に不安が過る。

「軽い脳しんとうを起こしたぐらいで私はもう大丈夫です」と神室は立ち上がった。「形は違えどこれも大災害です」

「俺も」と法源。「左足首が不自由になったぐらいでまだ動ける」

 和田は三人を見つめる。

「横取に試作品設計図を提出させた。最初出し渋りやがったがな……アイツにとっちゃあGドロイドは我が子同然だろうが、事の発端はアイツが原因だ。それはともかく、設計図を元に検討した結果、あるひとつの結論に達した」

 和田の次の言葉を待つ三人。

「戦太郎を止める方法はただひとつ――()()()()()()()()

「海に沈める?」と神室。

「そうだ。ヤツの欠点は防水性を考慮していない点だ。もちろん量産体制になればその点も改善されるだろう。しかしあの試作品――戦太郎は水圧に耐えられるほどの作りにはなっていない。そこを突くんだ」

 和田は端末を操作した。

「今ヤツはここにいる。神室が貼り付けたGPSは正常に稼働している。隙を覗っているように停止している」

 そう言いながら和田はある一点を指し示した。そこはみなとみらい橋近くだった。

「自衛隊ヘリも考えたが出動させるには煩雑な手続きがいるので間に合わない。空からは警察ヘリ、地上では特殊部隊が応戦する。警察能力では破壊出来ないのは承知のうえだが、なんとか埠頭まで誘導する。君たちはその隙を突いて海へ叩き込め」

 ふう……と神室はため息をついた。

「また、自決覚悟か」



 その5に続く


※本作は、執筆における誤字脱字の校正および構成の補助として、AIツール(Gemini、Copilot、ClaudeAI:全てフリー版)を利用しております。物語の核となるプロットや描写は、作者自身の手によるものです。自分で言うのも変ですが、複雑なプロットはまだAIでは無理ではないでしょうかね。




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