第43話:再会のマウンド、盟友の弾丸(1軍編開幕)
ついに、しみまるがNPBの1軍、夢の舞台へと足を踏み入れた。
満員の観客席。まばゆいカクテル光線。かつて独立リーグで「からくり」と呼ばれ、異端視された少年は、いまや「パパ」としての重みと、呪いさえ力に変える強靭な精神を纏っていた。
対戦相手は、セ・リーグの絶対王者「ナゴヤ・ダイナソー」。
そしてそのマウンドに立っていたのは、かつて紀伊プラムスで苦楽を共にした、あの男だった。
「――久しぶりだな、しみまる。……いや、今は『パパ』だったか」
不敵に笑う、竜神豪。
彼は現在、1軍のセーブ王。160km/h超えの剛速球に磨きをかけ、日本球界の守護神として君臨していた。
0対0で迎えた9回表。代打の切り札として送り出されたのは、なんとしみまるだった。
1軍の初陣が、かつての親友との直接対決。
竜神がセットポジションに入る。その全身から溢れる気迫は、ウエスタン(2軍)の比ではない。
「しみまる。お前の右腕……その不自然な強さ、ウイルスすら利用するその歪な力。それは、本当にお前の『野球』なのか?」
シュッ……ドォォォォォンッ!!
外角低め、162km/h。ミットが爆発したような音を立てる。
「……っ!」
しみまるは一歩も動けなかった。
「俺たちが泥にまみれて追いかけたのは、そんな『便利な義手』の性能テストじゃないはずだ。……思い出せよ、しみまる! お前の『魂』がどこにあるのかを!」
砂織はリモートモニター越しに、しみまるの心拍数の乱れを察知した。
「しみまる君! 竜神君の言葉に惑わされないで! ……あんたがその腕を選んだのは、私と、この子を守るためでしょ!」
しみまるは、自身の右腕をじっと見つめた。
【イカロス・フェード】。
ウイルスと共生し、物理法則を捻じ曲げる魔球。確かにこれは、純粋な「野球」ではないのかもしれない。
しかし、その時。
砂織のお腹の中にいる我が子が、トクン、と動いたような気がした。
「……竜神さん。僕は、汚れてもいい。……ズルいと言われても、からくりだと蔑まれても構わない。……僕は、家族と一緒に生き残るために、このマウンドに立っているんです!」
第3球。竜神の渾身のフォークボール。
しみまるは右腕のデバイスをフル稼働させた。**【鎌鼬】と【雷鳴】**を、ウイルスによる過負荷を恐れず同時に限界突破させる。
ガギィィィィィィンッ!!
バットが悲鳴を上げ、粉々に砕け散る。
しかし、打球はバックスクリーンを直撃する特大のホームランとなった。
沈黙するスタジアム。
竜神は、粉砕されたバットの破片を見つめ、静かに笑った。
「……ふん。……家族を守るための『力』か。……甘いと思ってたが、今の打球……重たかったぜ、しみまる」




