第40話:五つの腕、新妻コーチの「究極の選択」
紀伊プラムスの2軍キャンプ。黒金博士と明日香が、ついに「生身の限界」と「最新技術」を融合させた新作を披露。それは、かつての「機械に頼り切る」ものではなく、しみまるの神経成長に合わせて特化した**5種類の「換装型義手」**。
「いいかしら、しみまる君」
砂織コーチが、ケースに並んだ銀色の腕たちを指差す。
「NPBの打者は一度見た球は二度と逃さない。だから、今日の対戦相手や天候、そして私のリードに合わせて、腕を『着替えて』もらうわよ」
用意された五つの「特化型」
黒金博士が、それぞれの特性を解説する。
【雷鳴(スピード特化)】:瞬発的な電圧負荷をかけ、生身では不可能な165km/hを叩き出す。
【空蝉(変化球特化)】:指先の関節が異常な柔軟性を持ち、360度どの方向にも回転をかけられる。
【龍尾(伸び特化)】:ボールを離す直前に超微細な振動を加え、ホップするような軌道を生む。
【鎌鼬(キレ特化)】:空気を切り裂く形状変化により、打者の手元で急激に変化させる。
【綿雪(スローボール特化)】:筋肉の動きを意図的に抑制し、無回転のまま時速40kmまで減速させる。
試合当日。相手は1軍から調整のために降格してきた氷室レイ。
彼はしみまるの前に立つなり、不敵に笑った。
「しみまる、そんなおもちゃに頼らなければ勝てないのか?」
「……いえ。これは、砂織さんのリードを完璧に表現するための『楽器』です!」
砂織は迷わず、1打席目のカッターに対して**【綿雪】**を選択。
「まずは、相手の計算を狂わせるわよ!」
放たれた40km/hの超スローボール。1軍経験者のカッターが、あまりの遅さに腰を砕かされる。
続く氷室レイに対して、砂織が指を3本立てた。**【龍尾(伸び特化)】**への即時換装。
140km/hそこそこの球が、打者の手元で「上に跳ね上がる」怪現象。レイのバットはボールの下を虚しく切り裂く。
試合後の控室。砂織が少し顔色の悪いまま、しみまるの前に座りました。
「……しみまる君。これ、見て」
彼女が差し出したのは、一本の検査薬。そこには、二人の新しい命を示す陽性反応が出ていた。
「お、お父さん……僕が……!?」
「ええ。だから、もう無茶な使い方はさせられないわ。……この5つの義手は、あんたの体を守りながら、世界一のパパにするためのものよ。わかってる?」
しみまるは、自身の右腕を見つめた。
スピード、キレ、そして新しい家族を守るための「強さ」。
ウエスタン・リーグの猛者たちを相手に、パパになった「からくり投手」の、最も過酷で幸せなシーズンが加速する!




