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からくり野球〜土壇場のジョーカー〜  作者: 水前寺鯉太郎
2年目

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36/46

第36話:栄光への王手、そして忍び寄る「影」


 紀伊プラムスは、アリアの精神攻撃を「愛の力」でねじ伏せ、ついに独立リーグ優勝決定戦への切符を掴み取った。街は「カップルでの優勝」を期待する市民たちの熱狂に包まれている。

 しかし、決勝の相手として名乗りを上げたのは、かつての宿敵・帝都タイタンズの残党が極秘裏に結成した新球団**「ネオ・アイアンズ」だった。

 彼らが送り出したエースは、かつてしみまるを苦しめた自律型重機「アイアン・ゼロ」を人型にまで小型・洗練化させた、究極の野球サイボーグ『アイアン・シン』**。

「……感情という名のノイズを、徹底的に排除した効率を見せてやろう」

 無機質なシンの声が、しみまるの闘志を逆なでする。


 決戦前夜。誰もいない夜のスタジアムで、しみまるは砂織の自主練習に付き合っていた。

 だが、返球を受けるしみまるの手元に届くボールが、いつもよりわずかに低い。

「……砂織さん、どうかしましたか?」

「え? 何が? いつも通り絶好調よ」

 強がる砂織。しかし、彼女がボールを投げ返した瞬間、その顔が微かに苦痛で歪んだのを、しみまるは見逃さなかった。

 砂織の右肩は、長年のキャッチャー生活、そして前回の「超・高周波ノイズ」に耐えながら全力でミットを構え続けた負荷により、限界を超えていた。

「(……ダメね。この肩、もうあと1試合もつかどうか……)」

 壁に手をつき、冷や汗を流す砂織。彼女は誰にも、特におせっかいなしみまるには、このことを隠し通すと決めていた。優勝の瞬間、彼の隣に立っていたいから。


 そんな砂織の前に、一人の男が現れた。かつて敵対していた氷室レイだった。

「……白浜砂織。君の肩はもうボロボロだ。明日の試合、しみまるの全力投球を捕れば、君の選手生命は終わる」

「……分かってるわよ。でも、私はアイツの女房役なの」

 レイは黙って、一本のアンプルを差し出した。

「それは、神経を一時的に麻痺させ、筋力を強制的に引き上げるブースト剤だ。……かつて『からくり』を信奉した我々の、せめてもの償いだと思ってくれ」

 砂織はそのアンプルをじっと見つめる。

 これを使えば、明日の試合は戦える。しかし、それはしみまるが最も嫌う「機械的な強化」に近い行為ではないのか。


 翌日。超満員のスタジアム。

 マウンドに立つしみまるは、砂織のいつになく鋭い眼光に、微かな違和感を覚えていた。

「……砂織さん、今日のリード、なんだかすごく……攻撃的だ」

 第1球。しみまるの直球を、砂織は完璧に捕球する。しかし、その裏で砂織の肩からは「パキリ」と不気味な音が響いていた。

 

 サイボーグ「シン」の圧倒的なパワーと、限界を超えて戦う砂織の意地。

 カップルでの優勝という夢の裏で、砂織の野球人生を賭けた、最も過酷な9イニングが幕を開けた。

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