第35話 開幕5連勝(1)
ゴッド・オブ・ブレイビアの今シーズン開幕戦から1か月が過ぎ、俺たちライトニング・ブリッツは開幕4連勝で第5節を迎えていた。
(ゴッド・オブ・ブレイビアは1週間に一度、毎週末に開催される)
「そこよ! ライオネル・ストライク!」
マリーベルが得意のAランク魔法、ライオネル・ストライクを発動する。
マリーベルは巨大な炎の獅子をその身にまとうと、相手の姫騎士に突撃し、激しく吹き飛ばして一気にガードアウトさせた。
カンカンカンカンカンカンカン!
『デュエル・オールオーバー! デュエル・オールオーバー! ウィナー! チーム、ライトニング・ブリッツ所属! マリーベルぅぅぅ! これでライトニング・ブリッツは開幕から無傷の5連勝だぁ! 今シーズンの台風の目はまだまだ荒れ狂うことをやめようとしない! 果たして連勝街道はどこまで続くのかぁぁぁ!?』
ゴングが盛大に鳴り響くとともに、マイクパフォーマンスがデュエル・スタジアムのボルテージを最高潮に盛り上げる中、
「これでリュカに続いてマリーベルも5戦全勝。もちろんチームも開幕5連勝。文句なしの開幕ダッシュだな」
セコンド・エリアで勝利を見届けた俺は、ホッと一息つきながらつぶやいた。
「よし! よしよしよしよしよしよし! これで開幕5連勝だ!」
しかし俺の隣でデュエルを見守っていたミューレは、興奮冷めやらぬと言った様子で渾身のガッツポーズを決めていた。
「今日のミューレはいつにもまして、えらく気合が入った喜びようだな。なにか理由でもあるのか?」
ミューレは元々かなり感情表現が大きいタイプだけど、それにしても今日のミューレはちょっと気合が入り過ぎているように見える。
「メインスポンサーとの間に出来高契約があってね。今シーズン中に5勝するとガッポリ特別ボーナスが付くんだ。それを開幕5戦でもう達成してしまった。これでもう今季はお金のことを一切、気にする必要はなくなるんだ」
「そいつは朗報だな。ガッツポーズに気合いが入るのも無理はない……って、なんだよアスナ?」
ミューレの説明に納得した俺の二の腕を、アスナがちょいちょいとつついてきた。
「たった5勝でいいの? それで特別ボーナスなんてスポンサーも太っ腹だよねぇ」
アスナが不思議そうにつぶやく。
「たったとか言うな、たったとか。5勝『も』しないといけないんだ」
「え~? だってゴッド・オブ・ブレイビアは全20チームの総当たり戦でしょ? つまり自分たち以外の19チームと、1試合つずつデュエルと行うってことよね?」
「そうだぞ」
「ってことは5勝14敗でいいんだから、結構、簡単じゃない? ほぼ1勝3敗ペース、勝率26%ちょいでいいわけだし。そりゃ開幕5連勝したのはすごいと思うけどさー」
やれやれ。
これだから素人は困る。
仕方がない、専門家の俺がちょいと講義をしてやるか。
「あのなアスナ。基本的にトップ5の上位常連チームは、下位チームには負けないんだ。よってこの時点で下位チームは5敗が確定してしまう」
「そうなの?」
「ここ10年で、前年TOP5のチームに前年下位10チームが勝ったことは、5回しかない」
「え、たったの5回だけ?」
俺の言葉に、アスナが驚いた顔を見せた。
「しかもその全てが、5年前は下位に低迷していたバーニング・ライガーが、アリッサ・カガヤ・ローゼンベルクの加入で即、優勝した時の5勝だけだ。つまり実際は不可能と言っても過言じゃない」
姫騎士デュエル業界でこの頃、諦めとともに半ば笑い話のように言われている『ただしアリッサ・カガヤ・ローゼンベルクは除く』というやつだ。
常識とか一般論の枠外にいる超越的な存在。
統計学では除外される、いわゆる『外れ値』(他の数字からかけ離れた異常な数値)。
絶対的な強者。
それが『烈火の姫騎士』アリッサ・カガヤ・ローゼンベルクなのだ。
いや、あまりに強すぎて関係者一同マジで笑えないんだけどさ。




