第36話 開幕5連勝(2)
「アリッサ・カガヤ・ローゼンベルクはやっぱりすごいよねぇ。さすがは『不可能を可能にする姫騎士』だよ」
「最近はそんな風にも言われているみたいだな」
他にも『炎帝』だのなんだの、いろんな二つ名を付けられている。
「はやくサイン貰えないかなぁ。それで『世紀の大天才アスナちゃん』へって入れてもらうんだ~」
「まだ諦めてなかったのかよ。ま、サインの話は今は置いといてだ。つまり昇格したばかりのライトニング・ブリッツが、開幕戦で前年2位のフレースヴェルグに勝ったのは、特大の大金星だったってことさ。それこそアリッサ・カガヤ・ローゼンベルク以来のな」
「なるほどね~! そう言われると、今さらになって驚きが増してきたかも! アタシたち超すごいじゃん!」
「超すごいんだよ。で、だ。さらに6位から10位のチームも、隙あらばTOP5入りを狙う強豪ぞろいときた。ここに勝つのもかなり大変で、下手したら全敗する。これで下位チームはあっさり10敗に到達だ」
「うわぉ」
「だから残る下位の9チームとの戦いで、5勝を目指すとすると――」
「もうこの時点で4敗しかできないってことね?」
「そういうこと。そして相手も同じように上位戦で大負けして、下位同士の戦いに全力でくるから、下位は下位で厳しいデュエルばかりになる。最下位フィニッシュだと入れ替えで2部に降格するからな。落ちないように、どこも必死だ」
「なーる!」
気持ちが技術を凌駕するとでも言うのだろうか。
なんとか目先の1勝をもぎ取ろうと必死の戦いが繰り広げられる終盤の下位チーム同士のデュエルは、血で血を洗うデス・デュエルとまで呼ばれる程に激しくなる。
「だから去年2位のフレースヴェルグを倒して開幕5連勝できたのは、ものすごい快挙なんだよ」
「なるほどね~!」
「そういうわけだから、今年はもう残り全部を取りこぼしても、最下位になって2部に降格することはないだろうな」
初昇格して即1年で降格は、ゴッド・オブ・ブレイビアじゃ『あるある』だ。
ゴッド・オブ・ブレイビアの洗礼。
やっぱりな、くらいの感覚で特に話題になりもしない。
その『あるある』を、俺たちライトニング・ブリッツは見事にはねのけたのだ!
「しかもだよ。ここからは1つ勝利を積み重ねるごとに、さらに追加でボーナスが付く。勝てば勝つほどプラスでお金が入ってくる契約なんだ」
アスナが納得したのを見計らって、ミューレが嬉しそうに付け加えた。
「何をするにしても、お金は大事だよな」
「お金があれば、広報担当も事務員も雇えるからね」
「なにせ今は、ミューレが全部1人でやっているもんなぁ」
チームオーナー、広報担当、事務仕事、営業その他もろもろ、ミューレが全て自分でこなしている。
「開幕から1か月。さすがに私も疲れが溜まっていてね」
「日中はあちこち外を駆けずり回って、夜はずっと書類仕事をしているもんな。正直、頭が下がるよ」
「今だから言うけど、腕のいいデュエル・アナリストが見つからない時は、それも私がやろうと思っていたんだ」
「まさかミューレ、Sランクの情報処理の資格をもっているのか? そいつは知らなかったな」
姫騎士デュエルのデュエル・アナリストになるには、結構難しい情報処理のSランク資格を取る必要がある。
「私もそれなりに準備をして、ライトニング・ブリッツのオーナーになったのさ」
「だとすると、喜びもひとしおだよな」
ここまで来ると、もはやライトニング・ブリッツはミューレの子供。
もしくは自分の分身といったところだろう。




