本編④ 苗床になった者
苗床として生かされている女性はメディアも知っている者でもあった
「ヴィアナ…?!」
その時、吹雪の唸り声のような、低い咆哮
洞窟全体が震え、雪と氷が崩れ落ちてくる。
雪触手生物の群れが一斉に襲いかかる。
それはまるで氷穴そのものが牙を剥いたかのよう
だがメディアは刃を構え直し紫の瞳が妖しく光る
氷の迷宮の奥で孤独な戦いが幕を開けた
私は愚かだった……
冷たい床に横たわる長身美人、目に光は無く後悔と絶望が滲んでいる
彼女の名は「ヴィアナ・クロス」
大規模任務などで活躍し実績も積み上げてきた新進気鋭のワームブレイカーだった
今回の雪触手生物討伐任務にて自分よりも実績の少ないワームブレイカー達と即席チームを組み、討伐に当たり自分の実力を示していけばゆくゆくはメディアやカーラ、ザルウィンの様に単独任務が任されるのではないかと心を躍らせていた
しかしそれが大きな驕りとなり自分の視野を狭め、彼女の甘い幻想が砕かれる事になった……
即席チームであるがための連携不足、経験不足による指示ミス、コミュニケーション不足によるスタンドプレイ、虚栄心による撤退と協力要請の拒否
仲間は次々に捕まり、食われ
どこにも逃げられなくなり自分の力不足を受け入れるしかなかった
ワームブレイカーは触手生物と戦う為にさまざまな種族の遺伝子を取り込み肉体などを強化されている
その為、触手生物達にとっては壊れない最高の苗床だった
触手生物は二、三週間で産まれ、一回の出産で複数個体産まれる
それはヴィアナの心を砕くのには十分な時間だった
自分の産み出したものが村人の死体を貪り、成長して生きた村人を襲う罪悪感と自分の中から産まれた命への母性
与えられる快楽に彼女はまともな思考をする事も許されず触手生物を産み続け、いつしかそれが幸福なのだと思う様になっていた
その彼女の目に、雪触手生物と戦うエメラルドグリーンの髪、白いスリングショット水着の様な服、ニーハイブーツ姿で紫色の光の刃を形成した柄を持った少女が映り、自分をこの地獄から救い出してくれるのか?それとも仲間が増えるのか?そんな事が頭を巡り、体を痙攣させた
そこには産まれたばかりの雪触手生物が数体おり、自然と涙と笑いが溢れ自分の子を撫でていた
メディアは艶刃で雪触手生物の触手をステップを踏むかの様なフットワークで切り裂き、蹴り飛ばし巨大な雪触手生物に近づくがさらに触手が伸びてきた
メディアは「艶爪!」と左手に鉤爪を形成させ薙ぎ払う
メディアは走りながら背中に艶力を集中させ羽を形成し飛び上がり、空中で回転して
雪触手生物に踵落としを入れそのまま指先に艶力を集中させ弾の様に放出する
「艶撃!」
しかし雪触手生物には致命傷を与えられず、何度も連発する
砂埃が上がり雪触手生物が見えなくなるがメディアは警戒を解かず艶刃を構えている
砂埃の中から雪触手生物の口が現れる
メディアは艶刃に艶力を注ぎ、刃を巨大化させ降下する
「艶斬一閃《縦!一文字斬りぃぃぃぃ!》」
雪触手生物を核ごと切り裂きながら着地し
「二之閃《横!一文字斬りぃぃぃぃ!》」
艶刃を横に薙ぐ
十字に斬られ絶命する雪触手生物
「艶斬十閃《十文字斬り》……」
メディアは艶刃の刃を消し、ホルダーに納めた
その後メディアは逃げようとしていた雪触手生物の幼体達を退治して、リオンに任務終了の連絡を取り、ヴィアナに駆け寄った
ヴィアナにはメディアは地獄からの救いの女神であるが、自分が産み出した触手が村人を襲い多くの命を奪った事実に向き合わねばならない、思考をせずに産み続ける幸福が壊され逃げることも出来ず自分に何があり何をしたかを受け入れなければならない
これからの地獄を告げる者でもあった




