本編③ いざ、雪山へ
メディアは生き残った村人達を麓の町に連れて行き、雪山の麓に広がる小さな町でおろした後
氷に覆われた山々を背にした木造の酒場と喫茶が一体になった店に入るメディア
店内は突然現れたスリングショット水着にニーハイブーツの少女に驚くが
メディアは気にせずカウンターに腰を下ろし
「パフェ、トゥーフィンガー」とマスターにピースをしてパフェを頼んだ
マスターは一瞬頭にハテナが浮かんでいたが「……あぁ、2つですね」とパフェを作り始めた
店の中は暖炉の熱でむっと暑い
客たちの話題はひとつだった
「また山の村から連絡が途絶えたらしい」
「雪触手生物のせいだな、あれは……吹雪の夜に、地面から這い出して人をさらうんだ」
「ワームブレイカーも何人か討伐に行ったが、戻ったのは一人もいない」
メディアはスプーンを止め、耳を傾けた。
チョコソースの滴るパフェのグラス越しに、紫の瞳がきらめく
町の人々は怯えていた
「ここよろしいですか?」
古老が静かにメディアの横に座り語った
「雪触手生物は、触手生物が雪山に適応するように進化した個体、氷穴に棲む。凍土の下に網のように根を張り、夜になると地表に現れる。火も鋼鉄剣も通さぬが、芯となる“核”を斬れば倒せる……そう伝えられております。ですがよろしくお願いします、ワームブレイカー様」
メディアは頷き、グラスの底のアイスをすくって口に運ぶ
アイスの甘さが舌に残る
スプーンを置き、立ち上がる
周囲の客たちは、彼女の服装を見て目を丸くした
スリングショット水着にニーハイブーツで雪山へ行くにはあまりに無防備で自殺行為、正気の沙汰とは思えない
思わず止める。てかどうやってここに来た?と疑問が上がる
だが、メディアは微笑んだ。
「心配無用~。私は最強のワームブレイカー!」
と胸を張り店を後にする
答えになってない事を言われポカンとする客達
町を出ると、雪が舞っていた。
白銀の大地にメディアの髪のエメラルドグリーンが鮮やかに映える。
背後では町の人々が遠巻きに見送っている。
彼らにとって、この少女は正気かどうかすら怪しい存在だ。
だが、同時に救いをもたらす予感を抱かずにはいられなかった。
「さぁ~て行こうかな。雪触手生物退治!」
メディアは軽く伸びをして肩をブンブン回して山へ歩いていく
紫色の光の刃を手にしたメディアが山道を進んでいく。
山を登りつめた先、吹雪に飲まれるようにぽっかりと口を開けた氷穴があった。
外の白銀の世界とは別の、暗く青い冷気が漂っていた。
メディアは艶刃を片手に、慎重に足を踏み入れる
氷壁は透き通り、内部を走る黒い影がうねるように見えた
「……なるほどね。もう中は巣になってるわけか」
氷穴の奥はまるで迷宮だった。
不気味な音が反響する。
ズルズル……ベチャ……
まるで地面そのものが呼吸しているかのようだ。
メディアのブーツが氷を踏むたび、底から触手の先端が伸びてきては退き、また別の場所から覗き込む。
無数の目に見られているような感覚。
「……この子たち、私を歓迎してるつもりなの?」
突然、天井の氷が崩れ落ち、無数の氷の様な触手が雪崩のように降りかかる。
それは雪触手生物――この星の極寒に適応した化け物だ
白いクリスタルの様な外殻を纏い、氷と見分けがつかない
触手は氷壁からも、地面からも、一斉に伸びてきた
囲まれたメディアは口角を上げる
紫色の光刃が氷壁に反射して洞窟を照らし、怪異の姿を浮かび上がらせる
切り払うたびに黒い体液が氷に飛び散り、冷気で即座に凍りつく。
しかし、切っても切っても次々と這い寄る雪触手生物
這い寄る雪触手生物は核を持たない個体が多く、ただの幼体でしかない
「……本体は別かな?やはり奥に潜んでるね」
体中の感覚に艶力を集中させる。
風の道を辿る様に奥へ進むと、洞窟の天井を突き破るほど巨大な影が姿を現した。
白い氷殻に覆われた母核――雪触手生物の群れを統べる存在。
その体は氷柱と同化し、無数の触手を氷壁と繋ぎ合わせていた
捕らえられた村人達や討伐に訪れたワームブレイカー達の欠損の激しい死骸が氷に封じ込められ、女性達は苗床として生かされている者、下腹部を食い破られた死骸――その目だけが虚ろに光を反射していた




