本編② 吹雪に消えそうな声
惑星「ヒョウス」、山岳地帯の小村
冬が長く続き、凍りついた湖と吹雪に囲まれたこの地では、外界との連絡はほとんど取れず
その夜、村人たちは祈るように集会場で囲炉裏を囲んでいた
外は吹雪、雪壁の向こうに何かが這いずる音がする
子供が泣き叫ぶ
大人は口を閉ざす
皆、気づいていた
この吹雪は獣のせいではない
もっと禍々しいものが村を狙っている
村人達は救難信号を送り続けている
吹雪が弱まった一瞬、若い猟師が村の集会場の戸を開けた
白い闇の中、氷柱の様な"それ"が覗いていた。
氷の様な触手が雪を裂くように現れ、地面の下から這い上がる
一本、二本、三本……凍土の中で繋がったまま、村の灯りを目指している。
「……やっぱり来やがった……!」
慌てて扉を閉める。
だが次の瞬間、窓を突き破り、しぶきのように冷気と触手が侵入してきた。
触手は暖を取っていた火に突き刺さり、薪を弾き飛ばす。
炎は消え、室内は一気に闇と寒気に包まれた。
暗闇の中で、何人かが足を掴まれ、引きずられる
必死に斧や鍬で叩くが、凍りついた触手は打撃を通さず離さない。
「……助けを……誰か……誰か……!」
村の長老が震える手で古い端末を操作し、何度も救難信号を送るが、悲鳴と骨を砕く音と肉が潰れる音を吹雪がかき消していく
残りの村人はどこへ逃げて良いかもわからずに走っている、触手は地面を割って現れ追いつかれそうになる
もはや逃げ場はない
生き残った者たちは、ひたすら「救難信号が届いていること」を信じて、
小さな祈りを胸に閉じ込めるしかなかった。
吹雪の向こう。
雪雲を裂いて、一筋の光が降りてくる。
光沢の船体「ラグシュオン」が降下してきた
その船影を見上げた村人たちの目に入るかすかな希望に安堵の涙が浮かぶ。
そして、白銀の世界に一人の少女が空から降ってくる
着地と同時に雪を巻き上げ、雪の煙幕が上がる
「みんな大丈夫?!」
その中から出てきたのは緑色の髪、紫の瞳、スリングショット水着とニーハイブーツ、紫の光刃を形成した柄を握った異質な姿
「雪触手生物…、これ以上好きにはさせないよ!」
紫刃のワームブレイカー、メディア。
恐怖に閉ざされた村に、希望の刃が到着した
メディアは走り出し雪触手生物を艶刃で何匹も切り裂き、一匹の雪触手生物が逃げていくのを指先に艶力を集中させ、弾の様に飛ばし爆散させる
ラグシュオンが降りてきて、生き残った村人達を収容した
ラグシュオンAIは冷え切った村人に温かいスープを振る舞い、村人達は「ありがとうございます」と涙ながらに感謝していた
メディアは本来、麓の町から雪触手生物が人を襲う事件についての退治依頼が来ており、打ち合わせの為にやってきた時に救難信号を受けて助けに来たのだった




