本編⑤(終) 次の戦いへ
戦闘終了後にメディアはラグシュオンを呼び、ヴィアナを抱え上げ、洞窟の外へ連れ出す
その細い体に似合わない力は、艶力によって支えられていた
外の白銀の世界は月明かりが雪原を照らしていた
ヴィアナは顔を伏せ
「うぅ……あぁ……かえして…私を…かえして…いや……」
と呟くだけだった
メディアは大丈夫と頷き、雪に映えるエメラルドグリーンの三つ編みが風になびく
ヴィアナの言葉は「(私の子を)返して、私を(雪触手生物の巣に)帰して」と言う意味だとは気づかず
救出されたヴィアナはずっと何かに怯えており、メディカルポッドで一晩明かしメディアに付き添われて後始末に来た星間警察の宇宙船に乗る
雪触手生物が倒され、町の人々は涙ながらにメディアを迎え入れ、安堵と歓喜が交じる声が響いた
だがメディアは、祝宴に加わることはなかった
ヴィアナはリオン曰く「カウンセリングやメディカルチェックでしばらく入院する事になるだろう、退院しても生活に支障が出ないレベルまで戻す為には記憶処理を施すしか…」と言われ
自分がもっと早く来れば…と自分を責めていた
木造の酒場兼食堂の片隅でひとりカウンターに座り俯いていると、目の前にホットミルクティーが置かれ
「貴女はここにいる多くの人を救ったのに何を悲しい顔をしているのですか?」
優しそうな店主がいた
「…わたし、仲間を助けられなかった……わたしがもっと早く来てれば……」
メディアの目に涙が滲む
「貴女は神様ですか?」
「え?」
「ただの人間ですよね?いや、多くの人を救う神様の様な力を持ってます。だけど全ての人を救う事は出来ません。判断が鈍る事もあります、それは多くの人の命や心を天秤にかけなきゃいけない時があるからです。それを出来る力を持ってます、もし貴女がその人を助ける判断をしていたら他の命が犠牲になっていたでしょう。人間が救える命には限りがあります」
店主の言葉を俯きながら聞くメディア
店主はメディアの前に苺パフェも差し出した
「だからこそこれからも多くの命を救っていただきたい。ここで貴女の心が潰れてしまったらそれこそ今以上に多くの命と心が無くなってしまう、貴女が悔やんでいる以上の事が起きてしまいます。貴女は希望なのです」
店主の言葉を聞きメディアはスプーンを取りパフェのクリームをすくい口に運び、ミルクティーを啜る
「……甘い。あったかい。やっぱり……これだね……」
メディアの紫の瞳には苺の赤い輝きが映る。
ラグシュオンに戻るタラップをメディアはブーツを鳴らして登る
町の人々が救いの女神を見送りに集まるが、その背中とほぼ丸出しの尻を見て目線を逸らす
木造の酒場兼食堂の店主は何か吹っ切れた様なメディアの顔を見て微笑み
それを見た周りの人々は (この人…実はスケベだったのか…) と愕然としていた
ラグシュオンは浮上して光の軌跡を残して空へ昇り、やがて星々に溶け込んでいく
吹雪に閉ざされた惑星に再び静けさが訪れ
艶刃のワームブレイカーは、また新たな戦場を求めて双銀河を渡る。




