番外編① 救助船の戦い
雪触手生物事件終わりのアガナークへの帰り道。
不意にラグシュオンの通信パネルが赤く点滅し緊急ブザーが鳴る。
《救難信号です。座標は……ワープ可能宙域です》
AIが淡々と告げる中、メディアは
「放っておけないよね!困ってる人がいるなら助けなきゃ!」
と即答してすぐに進路を変更し、指定された座標へとワープした。
ワープアウトした先には、星の光を反射する影。
光を失いかけた旅客船が不気味に虚空を漂い断続的に救難信号は発され続けていた。
ドッキングを済ませ、メディアは艶刃を構え船内へと足を踏み入れた。
中は真っ暗で、非常灯が赤く点滅し、かすかに焦げた匂いが漂う。
「……誰かいますかー?」
返事はない。ただ、遠くでずるりと何かが擦れる音がした。
通路の影から、ぬらりと動くものが覗く。
メディアが振り向いたときには、すでに触手が壁の隙間から這い出してきていた。
「っ……やっぱり!」
振り抜いた艶刃の光が触手を裂くが、切り口からまた新たな触手が伸びてくる。
旅客船の中では外壁を貫きかねない艶撃などの飛び道具は使えない、艶刃で応戦するしかない。
触手を切り裂きながら進み格納庫へと辿り着いたとき、メディアは端に倒れ込んだ人影を見つけた。
「大丈夫!?」
駆け寄ろうとした瞬間、その人物の背後で大量の触手がどろりと広がった。
「逃げ……ろ……」
かすれ声が響き、直後、触手が一斉にメディアへと襲いかかった。
「邪魔!」
と刃が閃き、大量の触手を切り裂いていく。
格納庫に倒れていた生存者を抱き起こすメディア。
男性は顔色が悪く、酸素不足と恐怖で震えていた。
「よかった~、生きてる……!大丈夫!わたしが守るから!」
彼を背にかばうように、艶刃を握り直した瞬間、周囲の壁の隙間から無数の触手が這い出してきた。
メディアは刃を振り抜き、次々と襲いかかる触手を両断するが粘液をまき散らしながら迫ってくる。
生存者が怯えの声を上げると、メディアはにっと笑い返した。
「大丈夫!わたしはワームブレイカーだよ?こんなの、ぜーんぶ倒すから!」
彼女の声に勇気を得たのか、生存者は壁際に必死でしがみつき、呼吸を整えた。
メディアは触手の群れを薙ぎ払い、触手は次第に数を減らしていった。
救助者を一度ラグシュオンに収容するため、ラグシュオンのAIに連絡をとり保護兼戦闘用ドローンボールに救助者を乗せ、メディカルチェックなどを任せてまた旅客船の探索に戻る。
エンジンルームに辿り着くと、壁一面が触手に覆われていた。
「……船そのものを巣にしてたってわけか」
艶刃を構え、深呼吸するメディア。
船の動力炉に絡みついた触手の中心部に、脈打つ黒い“核”があった。
そこから無数の触手が伸び、船全体へと広がっていた。
「ここが本丸だね!」
触手の嵐を切り裂きながら、光の刃を振り下ろす。
「艶刃斬!!!」
艶刃が核を切り裂き、触手たちは断末魔のように暴れた後、光の灰となり絶命した
静寂が戻ったエンジンルームで、メディアはリオンに連絡をとり星間警察が到着するまで救助者のメディカルチェックなどをラグシュオンで行う。
生存者は呆然と立ち尽くしていたが、やがて涙ぐみながら叫んだ。
「ありがとうございます……!本当にありがとうございます……!」
「えへへっ、お礼なんていいよ~!困ってる人は助ける!それがわたし、ワームブレイカーの仕事だから!」
ラグシュオンに救助者を移すと、船は完全に沈黙した。
静かな宇宙に漂うその残骸を見ながら、メディアは小さく呟いた。
「……やっぱり、触手生物はどこにでも忍び込むんだね。もっと気を引き締めなきゃ」




