本編③ 襲撃
ワイルの部屋を出た後にメディアはライルの執務室を訪れた。
「……すみません、夜分に」
「どうしました、メディアさん」
ライルは机に古文書を広げていたが、彼女の真剣な表情に目を細める。
「……ワイルのことなんですけど…。あんなに性格ですけど、本当は……寂しいんじゃないですか? 寝言で「母上行かないで」って呟いてて…」
少し沈黙が流れ、ライルは深いため息をついた。
「あの子…ワイルは当時メイドであった女性と私の子だ。……ワイルの母はクロン族のではなく他の種族の子であったため、元老院に認められず、私は彼女と駆け落ちすることも考えました。
ですが、私には兄弟も他の子もいなかった。彼女はクロン族の血筋と権力を巡る政治に巻き込まれ、数年前にこの家を去ることになり、二度と戻ることは許されなかったのだ」
メディアは唇を噛みしめ、自身の母「シェリア」の笑顔が頭をよぎる。
「だから……あんな風に……」
ライルはうなずいた。
「強がるほどに、幼さが滲む。……だが、あの子はクロンの後継。誰よりも守らねばならぬ存在だ」
メディアは胸に手を当て、強く頷いた。
「……わかりました。あの子は、あたしが必ず護ります」
写真立てにワイルの母らしき人の写真があった。胸元が大きく開いたミニスカートのメイド服に服の上からでもわかる豊かな胸、くびれた腰、大きなお尻
メディアは心の中で(………あの性格は遺伝か…)と心の中で呟く。
朝食の時間。
ワイルの前にパンやサラダ、スープが置いてあり
「おい、メディア。俺の前に座れよ。でっかい胸が目の前にあった方がうまくて食が進むんだよ」
とメディアにテーブルの前の席に座るように促す。
メディアはこの姿の裏に寂しさがあると知った今、不思議と憎めなかったのとメイド達がヒソヒソと「さすが売婦の子」や「やはりはしたないメイドからははしたない子しか産まれないか」などの言葉が耳に入り
「はぁ……、わたしの胸でご飯食べないでください」
と言いつつワイルの前の席に座りテーブルに胸を乗せる。
ワイルは一瞬戸惑いながらバクバクとパンやサラダを平らげていく、メディアはジト目で見つめている。
周囲の侍女が「え?何これ?」と狼狽えている。
その後、屋敷の廊下を歩くワイルの耳に、妙な金属音が届いた。
「……?」
そこには短剣を握った刺客。その全身は漆黒の布で覆われ、背中に何かが巻き付いているかのように蠢いている。
「ワイルを狙う刺客か……!ワイル!下がって!」
洗濯物干しを終わらせたメディアがワイルの前に立ちふさがり、艶刃を構える。
刺客は無言で飛びかかり、短剣と触手が同時に襲いかかる。
「来なっ!」
火花が散り、艶刃と短剣が激突し触手が廊下の絨毯が破く。
ワイルは怯えている。
刺客の触手が壁から壁へ伸び、メディアを拘束しようとする。
「……あたしを縛ろうなんて100年早いよ!」
メディアは艶刃と艶爪で一閃し
触手は全て切り裂かれ、刺客は「お前さえ…いなければ…穢れた血……め……」と言うと血を吹き出し絶命した。
廊下に静寂が戻る。
「ワイル大丈夫?」
メディアは絶命した光景を見せないように抱きしめたワイルに声をかけるが、ワイルは震えており、「穢れた血…」と呟いていたが、メディアと目が合うと必死に強がった。
「さ、さすが僕様の護衛兼メイドだな。ぼ、僕様を護ったんだから。それにお前のおっぱい柔らかくて、き、気持ちよかったぞ」
「なにを偉そうに」
言い合いながらも、二人の距離は昨日よりも近くなっていた。
メディアは心の中で呟く。
(……この子、強がりだけど、やっぱり弱い子なんだ…穢れた血なんかじゃないよ…)




