本編⑧ 暗躍する影
メディアは人工島を管理する支配人の執務室を訪れていた。
支配人は少し引き攣った顔で応じる。
「触手に襲われた……ですって? いや、極小規模だったと聞いていますが?!」
メディアは真剣に頷く。
「うん、極小規模だった。でも誰かに操られてるような違和感があったの。自然じゃない何か…」
支配人の眼差しが鋭さを帯びる。
「……心当たり…がないわけでは……ありません」
支配人は机の上に数枚の資料を置いた。
そこにはリゾート島で特別な許可を持つ“投資家”や“研究者”の名が並んでいる。
「最近、この島で妙な研究をしているらしい人物がいるのです。観光客向けの実験施設という名目で許可を取りましたが……実態は怪しく…。名前は「グレグ・ヴォルク」。過去に触手関連の遺伝子工学を研究していた経歴があります」
「そんな人が入ってるんだ…」
メディアが真剣な顔で呟いた。
支配人は苦々しげに答える。
「彼と彼のパトロンは大口の出資者でして……我々も口出しができず……この事も内密にお願いします……」
メディアは資料を手に取り、じっと目を通した。
「……ただの研究者じゃない……。少し探ってみよう」
リゾート島の繁華街。
観光客に紛れて歩く黒いラッシュガード姿にサングラスをかけ、中性的な容姿をした「グレグ・ヴォルク」がおり、繁華街の奥に足を進めていた。
少し離れたところからメディアも帽子とサングラスと付け髭で“変装”しつつ後を追う。
「ふふん、これで完璧にバレない!」
……ただし格好はいつものスリングショット水着。観光客から二度見されるのはお約束だった。
メディアは人混みに隠れながらグレグの後を追う。
やがて観光客がほとんど通らない建物の間にある細い路地へと姿を消した。
「ま、待って! 逃がすわけにはいかない!」
メディアは慌てて追いかけ、路地の入口に飛び込もうとする。
だが――
「……あれ?」
入口は人ひとりが横歩きでやっと通れるような幅しかなく、しかも両側の壁は古びた石造り。
意を決して突っ込んだメディアだったが、すぐに問題発生。
「んぐっ!? ちょ、ちょっと待って……!」
体が壁に引っかかり、路地に入らない
「う、うそでしょ?!」
無理矢理通ろうとするが
「痛だだだだだだだだだだ!」
どうやっても通れない事を確信したメディアは一瞬破壊する事も考えたが
怒られるだけじゃ済まないな…と考え、壁を駆け上がり屋上をつたい尾行を続けた
路地を抜けた先でグレグは辺りを見回して耳掛け型の通信デバイスで連絡をとっていた。
メディアは「あれ、この顔…」と記憶を辿る
惑星「マサータ」での事件の犯人「セラ・ロファ」だった
ーー同時刻ーー
メディアがセラを尾行している時、倉庫のような建物で数人の男たちによって取引が行われていた。
リゾート島の観光エリアから離れた倉庫の奥で黒のスーツケースが開かれ、中には二つの液体カプセル。
一つには青白く光る液体が満たされ、もう一つには小型の触手生物の幼体が蠢いている。
裏社会のブローカーとセレブ風の男とSPたちが真剣な面持ちで契約を交わしていた。
「これが新型の触手生物と超人薬か」
「えぇ、テスト個体です。軍に売れば莫大な利益になり、私兵として育てても良い代物です」
スーツ姿でハットを被ったウシガエルのような小柄の混合種族のジャルジャがゲスな笑みを浮かべている
セレブ風の男も満足しており、スーツケースをSPに渡し、「今後ともお願いしますね」と頭を下げ、去っていった。
「さてセラは上手くやっていますかね?」
ジャルジャが倉庫から出ると
「終わ…った…」
倉庫の入り口に背中を預け、つまらなそうにしているローブ姿の上からでもわかる凹凸のある人物がいた。




