本編① 管制室の大騒動
星の海を航行している宇宙船「ラグシュオン」のメインブリッジ、その中はあたたかいミルクティーの香りと、ミルクパフェの香りが漂っていた。
「……ん~っ、幸せ~。」
辺り一面に恒星の流れが投影される中、スリングショット水着の様な服とニーハイブーツ姿で頭に白い浮遊式の環状サークレットが浮かんでいるメディアが艦長席の背もたれを少し倒してパフェを食べている
《今回の依頼は惑星「マサータ」では現在行方不明者が多く、捜査する中で触手生物に襲われたと思われる痕跡などが残っていたそうで、地元警察は星間警察に協力を要請したところリオン様の耳に入りメルディア様に白羽の矢が立ったようですね》
ラグシュオンの艦内AIがメディアに依頼内容を説明している
「ふ~ん…、わざわざ星間警察よりワームブレイカーに協力を頼めば良いのに」
ミルクティーを口に運ぶがまだ熱いのに気づき一生懸命にフーフーするメディア
《惑星の警察は星間警察の下部組織でもありますし、とりあえず一報を入れて対応してくれなければワームブレイカーに頼む予定だったのではないでしょうか?変に勝手な事をして上にへそ曲げられたくないんだと思います》
「大人の世界ってめんどくさ~い」
ミルクティーをちょっとづつ飲み口の中を熱さに慣らすメディア
しばらくすると惑星間宇宙ドックが見えてきた
惑星間宇宙ドックに着艦の許可を取るため通信を行うメディア
「こちら、ワームブレイカー・メディア。宇宙船「ラグシュオン」にて着艦許可を申請しま~す」
軽快な音声と映像が艦の通信波に乗って発信される。
宇宙ドック管制室。椅子に座っていた管制官たちは、メディアの映像に一瞬、絶句した。
「……これは、何かの間違えか?」
「いや、映像は正常だ。音声も識別済み……だが」
管制室に映っているのは、
スリングショット水着のような服に緑色の長い三つ編みが宇宙の光にゆらめいている少女
「……本当に、この姿で着艦するつもりですか?」
管制官が慎重に返す。
「こちら惑星マサータ惑星間ドック。着艦申請を確認。しかし、申請者の服装が……宇宙法第18条【公序治安維持規定】に抵触する可能性がある。もう少し布の多い――つまり、正式な着衣での来艦をお願いします』
「え~!?なんで?これ戦闘服だよ!?すっごい便利なんだよっ!?」
メディアは腕をブンブン振って若干ふてくされるが、ラグシュオン艦内のAIが、優しく補足する。
《この服装は、彼女の戦闘用装備ですので大目に見てあげてください。我々は星間警察のリオン様から派遣されたワームブレイカーなのですが、そちらでお話はついていると思うので、問い合わせお願い出来ますか?》
管制官たちは顔を見合わせた。
「……あんな水着みたいなのが戦闘用装備って……」
「そんなバカな……」
「いや、でも星間警察の方から派遣されたって言ったぞ。本当か?」
「でももしこれで追い返したらえらい事だぞ!?」
一人の管制官がタブレットを取り出し、指を震わせながら確認をする。
メディア側から何かがぶつかる音と床に何かが散らばる音がしたが気にせず
「……該当艦体データ一致。宇宙船“ラグシュオン”。艦長……ワームブレイカー・メディア。……本物だ」
「なんだと……⁉︎」
管制官がモニターに向き直すとメディアのお尻が大写しになっており、どうやら何かを落としてしまい椅子の裏に行ったのを手を伸ばして取ろうとしているのだろう
「取れた~」
とスプーンを持っているメディア
モニター越しに管制官がみんな下を向いている中、管制官のリーダーが咳払いして
「……了解。着艦を許可する。念のため、艦外活動禁止エリアに立ち入らぬように。あと……その、服の件は……どうか、誤解を招かぬようにお願いします」
「うん、わかった♪ちゃんとおとなしくするから。あ、でもパフェ屋さんあったら寄っていい?」
満面の笑顔のメディアに管制官は
「観光など我が星を楽しんでください」
と少し微笑みながら答える
「えっへへ~ありがと~っ、じゃ、降りるね~♪」
ラグシュオンが軽やかにスラスターを吹かし、ゆっくりとドックへ降下していく。
――その後、惑星「マサータ」で"ワームブレイカーのメディア"は民間人の間で話題になるのにそう時間が掛からなかった




