本編① 始まりの職質
ー交易コロニー「アガナーク」の第三居住区ー
レンガ造りのアパートや木造の家が立ち並ぶ通りを、スリングショット水着のような服、頭には浮遊式の環状サークレットが浮かんでいてニーハイブーツを履いた一人の少女がご機嫌に歩いていた。
アガナークの居住区には亜人、獣人、虫人、鳥人など他の惑星からの移住者も多く様々な文化が混在している
本来なら常人ならば目を疑うようなメディアの姿も周りの住人はいつもの日常として受け入れており、彼女に驚く者はいない
「あら、メディアちゃんおはよう」
と高齢の獣人の女性が声をかける
「あ、おばちゃ~ん、おっはよ~」
少女は大きく手を振り答える
「また触手生物が出たんだって?大変だったでしょ?」
「ん?全然!」
彼女の名前はメディア(本名:メルディア・アンジェリス・ミルーカ)。
今や銀河屈指の触手生物専門ハンター、「ワームブレイカー」として名を轟かせている。
道行く住民がメディアに話しかけ、それすべてに返しており、周りからの評判もすごく良い
が…
「すみません、そこの……お嬢さん。…ちょっとよろしいですか…」
「ほへぇ?」
突如現れた巡回中の警官に職務質問され素っ頓狂な声を出すメディア。
「ええと、なんと表現すべきか……ちょっとお話しよろしいですか?」
彼女の服装は、明らかに職質率120%の逸材である。
「え、なんでぇ!? わたし、なんにも悪いことしてないよぉ?」
「いや、あの、その、えっと……未成年がその格好でうろつくのは……その……規則というか……」
「わたし、ワームブレイカーのメディアだよ?!えっへん!」
腰に手を当てて胸を張るメディア。
「はぁ……と、とりあえず話は署で聞きます」
そう言うと警官は極力メディアの体に触れないようにパトカーに押し込めた。
えぇぇ~と不服そうだが素直に従うメディア。
その光景を見ながら
「あら?メディアちゃんまた捕まってるわね」
「おーい、またメディアちゃんが連行されたから飲食店、特に喫茶店は注意しろー!やけ食いが来るぞー!」
「今日はどれだけの料理店が材料不足で臨時休業になるのかね~」
とまるで風物詩の様に楽しんでいる住人達
ーアガナーク警察署 署長室ー
「……またメディアが職質されて連行されてきました」
署員の報告に、アガナーク署の署長はぎゅっと眉間を押さえた
その隣で無造作に整えられた短髪の黒髪に鋭い金色の目、無精髭を生やしている男が同じ様に頭を抱えている
彼の名はリオン・ヴァーケン、星間警察の人間でメディアの保護者であり触手生物討伐の際に指示を出している人物
そのためかメディアが連行されるたびに身元引受人としてアガナーク署に赴いている
「またか…あいつに普通の服を着させるのは無理だって、前に言っただろ。」
「署員にもスリングショット水着にニーハイブーツの少女がうろついているが無視しろと言っているんですが…完全に法に引っかかってますから…」
署長が頭をボリボリと掻くと
部屋のドアが勢いよく開きメディアが飛び込んでくる
「ねえねえリオーン!またおまわりさんが私を痴女扱いするんだよ!酷くない?!」
「そうか、それが嫌なら場所を考えた服を着ろ。公序良俗を乱すな。」
「こうじょ…?なにそれわかんな~い」
「とにかく服を着ろ」
「なんで?!この服が一番効率が良いんだよー?」
「効率の話は今はいい、服を着ろ!胸や尻を隠せ!」
「なんでよ!別に良いじゃん!」
「良くない!お前まだ子供なんだぞ!」
「身体は大人だもん!」
「だからダメなんだ!」
「しかたないじゃん!文句は艶力に言って」
「どういう理屈だ!お前が心がければ良いだけのことだろ!」
「むぅぅぅ~」
リオンの言葉に頬を膨らましているメディア
そんなメディアを見て溜め息をついているリオン
まるで父と娘の喧嘩の様なやり取りを見ながら署長は、そっとお茶を啜り
「……今度、署内に彼女用の『特別許可証』を発行しましょうか。“この人物はワームブレイカーにつき、格好は仕様です。ユニフォームです”という備考付きで…それとも、上に掛け合って彼女用に特例の法案を作ってもらいますか」
窓から見えるアガナークの景色は平和そのものである




