艶やかなる刃を持つ少女
かつて、この銀河にはひっそりと紡がれたとされる種族がいた。
「艶力」と呼ばれる特殊な力を操り、不老の肉体を得たとされた女性だけの種族「カトレア人の古代種」
その存在は力を欲した者達の手で遥か昔に滅んだとされ歴史と人々の記憶からなくなっていた。
だがその血がいまも脈打っていると知る者はほとんどいない。
そして時代は、滅びなかった種の血脈と、止まらぬ欲望の銀河へと流れ着いた。
星間暦872年、星間交易コロニー「アガナーク」第一居住区。
遮断された通路に警報が鳴る。
都市中枢AIが発した警告は、単語として成立しない咆哮と共に波形ノイズと化し、通信網を汚染した。
「検体番号不明。…粘性反応、異常増幅中。触手生物です!」
『了解した、今メディアがそっちに向かっている。無理な事はせず自分達の命を守る事を考えろ』
武装している星間警察特殊生物犯罪対策班所属の男達が上司であるリオン・ヴァーケンに連絡をしている折、部下達は「一匹だけなら俺たちで何とかなるんじゃ…」と決意に満ちた目をしていた。
目の前の膨張する大きな口と目を持つ海鼠型の触手生物、大きな口から骨を砕く音、人間だったものを屠る音が鳴り響く。
「くそっ!また犠牲者が……!」
男達の一人がそう呟きブラスターを構え引き金を引く
放たれた光が触手生物に当たるが致命傷には至らず、
『お前達、何をしている!!』
リオンが通信越しに怒鳴るが触手生物は体から触手を伸ばし男の一人の腹を貫き、そのまま自分の口に運びわざと恐怖を煽る様に歯で擦り潰しながら頬張り、骨が軋み肉が擦れ口から血と脳の一部や内臓が溢れ落ちる。
大きな目がぎゅるりと武装した男達をまるで餌を見定めている様に見つめ無数の触手を伸ばそうとすると
「じゃっじゃーん!わたし、参上~っ!」
と声が響き、空中から滑り込むように落下して現れた一人の少女。
ふくらはぎまで届くくらい長い二房の三つ編み、エメラルドグリーンの髪、頭に白い浮遊式の環状サークレットが浮かんでおり、桃色のラインが発光し
大胆なスリングショット水着のような服、豊かな胸、キュッと引き締まったウエスト、ほぼ丸出しのお尻、ニーハイブーツ。
異様。異質。なのにこの街では知らぬ者がいない。
「美少女ワームブレイカー“メディア”!」
と腰に手を当てて目元でピースをしている
少女はニーハイブーツのホルダーから柄頭にストラップが付いた刀身の無い柄を抜き取り、片手で構え
「艶刃、光斬っ!ていっ!」
柄に刻まれた模様が紫色に光り、長さ70㎝、直径3㎝の紫光の刃を形成し、触手を切り裂く。
奇声とともに触手生物の一部と液体が周囲に飛び散る。
触手を伸ばし少女の体を貫こうとするが、少女の体に傷一つ付けられない。
「無駄だよ~、私には艶力があるから」
少女はべーと舌を出しながら触手生物を挑発する
––艶力––
カトレア人の古代種が持つ艶めき、色気などの肉体的魅力を根源とする生命エネルギー。
肉体や髪の毛は常に艶力を纏っており、
実体化させ物理干渉、肉体強化、精神耐性、温度耐性、衝撃耐性、汚染耐性、空間耐性、不老長命など多岐にわたる応用が可能な超常的な力
幼い頃から艶力が目覚めることで、体組織が活性化して肉体年齢が急成長し、「最も魅力的な外見」で止まり、肉体が一切衰えず百年近く生きられる特性を持つ
逆に艶力を消耗し過ぎると、一時的に本来の姿に戻る
「そろそろ、決めるよ!」
真剣な顔の彼女の瞳は、どこまでも無垢。
「これで終わり!」
そう叫ぶと光の刃で触手生物を貫き、触手生物が動かなくなる。
少女は完全に動かなくなったのを確認し、
「これで…… 良し!」
と光の刃を消しニーハイブーツのホルダーに筒状の柄「艶刃」を納めた
そこには、戦場に似つかわしくないほど、美しく、際どく、危ない少女がいた。




