第9話 パーティ、もとい家臣団募集!!
「上級職イベントか!」
面倒臭そうな王位継承権争いイベント化と思ったら、まさかの上級職イベントでした!
これは燃える!
「うん? 上級? ともかく継承の儀を行うには貴血を目覚めさせる必要がある」
「それはどうやって目覚めさせるのじゃ!?」
まさかの最速クラスチェンジ達成くるか!
「王位に興味があるのかい?」
少女が値踏みするような目で俺を見つめてくる。
「無い! それよりも貴血に目覚めると強くなるんじゃろ!? わらわはもっと強くなりたいのじゃ!」
「へぇ、王位よりも力を求めるのかい。変わった子だね。いや本来あるべき魔族としては正しいのかな」
と、意味深な事を言いながら笑みを浮かべる少女。
「いいよ、気に入った。継承の儀を行うに当たって必要な事を教えてあげよう」
「おお! 感謝するのじゃ!」
よっしゃー! イベントキター!
「まず家臣を集めたまえ」
「は? 家臣?」
って何突然? 俺は上級職にクラスチェンジしたいだけなんですけど?
「そう、家臣だ。王になる為には王位継承権争いに参加できるだけの勢力が必要だからね。一人では王を名乗れないだろ?」
まぁ言いたい事は分かるんだが……
「いや、わらわは王になりたいのではなく、貴血の覚醒方法を知りたいだけなんじゃが」
「貴血に目覚めるには王位継承争いに参加する意思表明が必要だ。その為にも家臣を集めたまえ。とりあえず50人くらいは欲しいかな。集められたら教えてあげよう」
「む、むぅ」
どうもこのイベントを進める為にはそれが必要との事らしい。
他のゲームでいう進化アイテム集めとかに相当する行為ということか?
「話は終わりだ。期待しているよ、末の姫君」
言うべき事は言ったとばかりに饒舌だった口と目を閉じる少女。
それを見てこれ以上はイベントを進めないと何も聞けそうにないと判断した俺は、部屋を出ようと扉に手をかける。
「ああ、一つだけ言いそびれていた。私の名前はヴィロゥ。ヴィロゥと呼んでくれたまえ」
「知っておるじゃろうがマルシェルじゃ」
今度こそ何も言わなくなったヴィロゥを背に、俺は部屋を出る。
さて、家臣を集めろと言われたがどうすればいいのかな。
「バットンよ、家臣とはどうやって集めれば良いのじゃ? 誰でも良いという訳ではないのじゃろ?」
こういう時はバットン先生に聞くとしよう。
「勿論だット、まず基本的に家臣は貴族だット。でも城の中の者達は大抵他の王子の派閥に入っているット」
だろうなぁ。王位継承権争いなんてしてるのなら、当然浮いている駒をスカウトしない理由がない。
「中立勢力はいるけど、これらの勢力を引き込むには自前の勢力を大きくする必要があるット」
じゃあ駄目じゃん!
どうやら城の中では各王子の派閥がせめぎ合っていて、劣勢の王子達が浮いている中立勢力を引き込もうと勧誘合戦をしているらしかった
勿論最大勢力である第一王子のアムドラ王子も逆転されないように中立勢力に声をかけているらしいが、中々色良い返事を貰えないらしい。
「それで継承の儀を先んじて進めてアドバンテージを取ろうとしておるのじゃな」
そこまでは分かったけど、これじゃ俺は完全に詰んでない?
俺って設定的にも派閥数0みたいだし。あかんやん。
「ただ、魔族社会は力ある者を重用する傾向があるット。だから平民でも優れた者を家臣として取り立てれば派閥と認められるット! 城の外で信頼できる有能な者を探してスカウトするといいット」
成程、そこで魔族の種族設定が活きてくるのか。
しかし信頼できる者ねぇ、ゲームを初めてすぐの俺に有力なNPCの知り合いなんていないし、ましてはフリーの勢力となると……
「いや待てよ」
ここで俺は自分がプレイしているゲームが何なのか思い出す。
「城の外で信頼できる力を持った者、つまりプレイヤーの事か!」
成る程そう言うことか、イベントを進めるためにプレイヤーの仲間を増やせってことだな!
つまりパーティ単位じゃなくその上、ギルドとかクランを作れって事か!
「となればまずはあやつ等をスカウトじゃ!」
◆
「という訳でお主等を家臣にスカウトしにきたのじゃ!」
冒険者ギルドにやってきた俺は、魔通輪でレフリスを呼んで事情を説明する。
予想通りモヒカン、そしてヒメキもギルドにいたので手間が省けた。
「マルスくんちゃんがお姫様……!?」
「つまり姫騎士!?」
「こりゃ驚いたな。いいとこのお嬢ちゃんだと思ってはいたがまさかお姫様だったとは。しょっぱなからスゲークエストに関わっちまったぜ」
俺が王族だとは知らなかったレフリス達は目を丸くして驚いている。
確かにいくらイベントで貴族と関わったとはいえ、まさかリリース開始直後のイベントで王族と絡むとは誰も思わないだろうからな。
まぁそもそも俺はNPCですらなくプレイヤーなんだが。
「で、どうじゃ? 今はこれといった礼は出来んが、わらわの勢力が大きくなれば相応の見返りが期待できるぞ」
多分。いや王族だから勢力が大きくなれば色々出来る事が増えるし、嘘は言っていない筈!
「マルスくんちゃんが王様、ううん女王様に!? やるよ! 私マルスくんちゃんの家臣に「なります! 家臣になりますっっっ!」」
興奮気味に立ち上がったレフリスを押しのけて、ヒメキが鼻息を荒く家臣申し込みに割り込んでくる。
「う、うむ、感謝するぞ」
「ズルイ! 私の方が先に話してたのに!」
「こういうのは早い者勝ちだ! 騎士だぞ! 王女の騎士になれるんだぞ! 完璧じゃないか!」
何が完璧なんですかねー。怖くて聞きたくないが。
「それなら先に話しかけた私の方が早かったでーす!」
「あー、じゃんけんで良いじゃろ」
このままだと物凄く下らない理由でPVPバトルが始まりそうだったので平和的な方法を提案する。
「いきますよ! じゃーん」
「けーん!」
「「ぽん!!」」
結果はレフリスがチョキ、ヒメキがパーでレフリスの勝利。
「やったー! 勝ったー!」
「くっ! 負けた! ころ……」
途中まで言って口を閉じるヒメキ。お前やっぱり「そう」なのか?
「モヒカンはどうじゃ?」
「あー、悪いな。俺はそういう堅苦しいのは好まないからやめておくぜ」
残念ながらモヒカンには断られてしまった。
「むぅ、駄目か」
コイツは見た目こそ怪しいがなんだかんだ優秀なので参加してくれると助かるんだが。
けど確かにコイツの見た目はヒャッハーなチンピラだからな。
王女様の騎士というにはあまりに蛮族過ぎる。
どっちかというと、軍の中であぶれたはみ出し者の吹き溜まり部隊の方が似合うもんな。
いや……あり、か?
「それ」ならコイツも話を聞いてくれるんじゃないだろうか。
「残念じゃな。お主には独立愚連隊を任せようと思ったんじゃが」
「何?」
ピクリと反応するチンピラ。
やはりこの漢字の羅列に反応するか!
俺はチンピラの耳元で囁く。
「のうチンピラよ、こういうのはどうじゃ? 普段は町の鼻つまみ者として暮らしておるが、有事の際にはわらわが極秘裏に集めた『腕さえ確かなら人格は一切考慮しない超一流の荒くれ者達の集団』の一員として大暴れする、なんてのは」
「む、むう……」
おお、揺れてる揺れてる。あと一押しだな。
他にチンピラが興味を示しそうなものは……そうだ、アレがあった。
「ところでお主、今のままだと片手落ちではないか?」
「何がだ?」
「お主のような男にはアレが必要じゃろ」
「アレってなんだよ。もったいぶるなよ」
あ、でもどうするかな。アレをゲームの世界に持って来ようとすると世界観というか文明レベルが滅茶苦茶になるか。
アレをこのゲームで作れるかも分からんし。
何かいい感じの言い回しは……とりあえずこれでいくか!
「お主に欠けているもの、それは乗騎じゃ!」
「じょ、乗騎?」
あ、やば、通じてない。俺がプレイヤーとバレないような上手い言い回しは……
「そ、それもただの乗騎ではない。気性は荒く猛々しい雄たけびをあげ、その全身を魔物ごとき甲冑で包んだ乗騎じゃ!」
頼む、伝わってくれ!
「雄叫び……魔物のごとき……そうか! バイクか!」
よっしゃーーーー! 伝わったーーーーっ!
「成る程な、確かにチンピラと言えばバイク。だが異世界にバイクがない以上何か他の乗り物が居る。だが馬だと上品すぎるな。いや黒……は王の乗騎だ。俺達雑兵が乗るなら……」
あ、雑兵の自覚あるのね。
「魔物だな!」
「魔物!?」
「魔物をテイムして暴走魔物軍団を作る! かーっ、こりゃ燃えるぜ!」
「う、うむ?」
なんか話が予想外の方向に広がってるんだが!?
まぁ確かに馬よりはそっちの方がチンピラのビジュアルには似合うかもしれんけど……
「ほう、魔物に騎乗するとは面白そうなことを話していますね」
そしたら何か神経質そうなメガネの魔法使いが喰いついてきた。
「魔物暴走族、楽しそうじゃねぇか」
更に現れるチンピラとは別の意味で下衆そうなキャラメイクのプレイヤー。
おいおいチンピラ以外にもこういうロールプレイしてる奴が居るのかよ!
「王女を守る影の軍団。それも魔物を従えた魔獣愚連隊! これは燃えますよ!」
次々に知らないプレイヤー達が会話に混ざってくる。
「俺は魔物をデコってかっ飛ばすってのが気に入った! ギンギンに尖らせて吼えさせまくるぜ! ウォォォーッ!!」
「お主が吼えてどうする!」
「魔物をデコる!? 新たな商機! その話詳しく!」
何か商人まで来た!
「ってお主ガメッツではないか!! っていうか何でお主等わらわが姫だと知っておるんじゃ!?」
「すみません、あまりにも気になったのでこっそり聞き耳スキルを習得して盗み聞きさせて頂きました」
「「「「「同じく」」」」
「盗聴は犯罪じゃーっ!!」
無駄な事に経験値使ってんじゃねー! 後で後悔するぞお前等!
「聞いたか皆! のじゃロリ姫が家臣をご所望だ! のじゃロリ王国建国の為に立ち上がられたのだ!」
「立ち上がってないわー! 勝手に建国させようとするでないわー!」
しかものじゃロリ姫って何だ!?
「うおおーっ! のじゃロリ姫ばんざーい! 家臣になります!」
「ファンサでスクショ撮らせてください!」
「サービスで踏んでください!」
「撮らせんわー! 踏まんわーっ!」
興奮したプレイヤー達が訳の分からんことを言い出す。
俺はアイドルじゃねー!
「いい加減にしてください!」
「お前達黙って聞いていればバカ騒ぎをしおって」
流石にこの空気に黙っていられなくなったのか、レフリスとヒメキが悪乗りするプレイヤ―達の前に立ちはだかる。
「おお、お主等……!」
これぞまさに家臣の鏡!
「「写真撮影は家臣登録が済んだ者からだ!」」
鏡が速攻で割れたぁーーーーっ!!
「家臣希望の方はこちらに並んでください!」
無駄に迅速かつ綺麗に整列するプレイヤー達。
「早期登録特典はありますか!?」
「あるわけねーだろ!」
『ペナルティ:のじゃロリ言葉を使わない事でステータスがダウンします』
ぐわーっ! しまった! ペナルティが!! ってそれどころじゃねー!
「姫様と協議の上後日連絡する!」
「おおーいっ!?」
「踏んでるポーズで撮影して頂いて宜しいですか!?」
「誰が踏むかぁー!」
「おさわりに当たるので課金サービスだ! 後日メンバー登録をしてからスケジュールを公表する!」
「メンバー登録ってなんじゃ!?」
家臣登録とは違うの!? いやそうじゃない!
「姫様、メンバー登録をすると月額費用が手に入って儲かります」
「待て待て、そんなことするつもりは無いぞ!? わらわは金が欲しくてやっている訳ではないのじゃ!」
単に上級職イベントやりたいだけなんだよ!?
なんで動画配信者みたいなことになってんの!?
「姫様、組織運営とはお金がかかるものなんですよ。大手ギルドなど顕著なものでメンバーである事を証明するためのお揃いのアイテム配布、大規模討伐においては攻略に必須の装備確保のための消耗品の用意など、個人の持ち込みだけでは回らない部分をギルドの運営資金から回す必要があるのです。他にも組織運営をしてくれる者達への拘束時間への謝礼など」
「な、成る程?」
言われてみればギルドを結成するとなると纏める人間が必要になるし全員が攻略に必要なアイテムを集められる訳じゃない。
「あと消耗品は大量購入契約をしておくと割引交渉しやすいんですよ」
なんか現実の話混ざってない?
もしかしてヒメキってリアルじゃ経理とか会社運営に関する仕事をやってたりするのか?
「ま、そういうことだ」
ポンと俺の肩を叩くモヒカン。
「組織のトップに立つって大変なんだよ」
何でそんなしんみりした顔で言うんだよ。
「ま、待ってほしいのじゃ。わらわこんな大事になるとは思っていなかったのじゃ。もっと小さい集まりをじゃな……」
「ま、乗り掛かった船だ。俺も陰ながら独立愚連隊として手伝ってやるからよ! 知り合いから聞きかじった会社ノウハウを伝授してやるから安心しろ! ああ、専門知識が必要な仕事はそういうのが得意な奴らに任せて、お前はドーンと頭に座ってりゃいいのさ!」
いやいやいや、ホントにそんなリアルな経営とか望んでないから!
「そんな大変な仕事進んでやりたいものなどおらんじゃろ!」
「やったー! 可愛いのじゃロリ女の子の下で働けるぞー! リアルの上司とかクソ喰らえー!」
「美少女上司! テンションが上がります! これが俺の求めていた会社だ!!」
なんか社畜オーラに溢れた連中がドロリとした笑顔で輝きだす。
君達今すぐ寝た方が良いよ!
「お前等ー! 今日から俺達は『のじゃロリ姫王国』の家臣だー! 気張っていくぞー!」
「「「「おおーーーーーーっ!!」」」」
「なんか勝手に名前が決まっておるんじゃがーーーーーーっ!?」
「わっしょいわっしょい!!」
こうしてILL最初の大規模ギルド『のじゃロリ姫王国』が誕生したのだった……
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