第6話 初めての依頼
遂に念願の冒険者になったぞ!
いやマジで長かったな。ゲームが始まってから三日かかったぞ。
まぁ社会人だしスタート地点が他のプレイヤーと違ったからしゃーない。
「さっそくクエストを受けるのじゃ!
という訳で俺は依頼を受ける為の掲示板に向かう。
この辺は大体どのゲームも似たようなもんだな。
「色んな依頼があるのう」
掲示板には定番のモンスター退治から荷物運び、中には作業手伝いなどの依頼が貼ってある。
「街の外のクエストは戦闘職向けで街中のクエストは生産職向けなんだよ」
「なるほど住み分けしておるんじゃな」
「けど始めたばかりの生産職だとお金がないから自分で素材を集めにいかないといけないんだよね。序盤はお金もないし」
あー、ゲームあるあるだな。大抵戦闘職の人間とパーティを組んで、ある程度稼げるようになったら生産職として本腰を入れる感じだ。
そのままパーティの専門になる生産職もいるが大抵は専門とフリーの中間かな。
「そういえばレフリスはどういう生産職なのじゃ? クオリティの高い装備を作れるようじゃが意外と腕が良いのかの?」
「え!? そんな事ないよ! 私もまだ駆け出しだから」
「ふむ、ではクオリティは未熟な者でも高い数値の品を作れるのか?」
ゲームがリリースしてから間もないのに王族が装備できるクオリティを維持できるのが謎なんだよな。
「そんな事ないよ! 私はリアルスキルがあるからある程度良いのが作れるだけ!」
「リアルスキルとな?」
成程、レフリスはリアルでも生産職に関わる仕事をしてるのか。
「あっ、ゴメン、通じないよね。えっと、私はリアル、じゃなくてプライベート、じゃなくて工房に弟子入りしててね、それで独り立ちする前にある程度技術を磨いてたんだ」
俺をNPCと勘違いしているレフリスはリアルの事情を俺に理解できるような設定に言い換えて説明してくれる。
「では工房から独立したという事じゃな!」
「そ、そう! でも工房だと作りたいものが作れないし、リアルだと価格高騰で生地やマテリアルが値上がりしてるから、高級生地を扱う時の練習用に買うとかとてもできないんだよね」
価格高騰で練習用の生地も買えないとか切ないなぁ。
「普通の生地で練習は駄目なのじゃ?」
「うん、もちろん普通の生地でも練習はしてるけど、いきなり本番で高級生地を触るなんて怖いでしょ。生地の癖も違ってくるし。で、最新ゲームのILLはリアルさが売りで生地の質感の再現度も凄いって聞いたから練習に使えないかと思ってさ。あっ、ゲームが好きなのもあるけどね」
途中から完全にプレイヤー相手の会話になっていたが、レフリスの事情は理解した。
どうやらレフリスはどこかの服飾工房で働いているみたいだが、高級生地が高すぎて買えないからゲームで代替する目的でプレイしているみたいだ。
確かにスポーツ選手や格闘家もイメージトレーニングとして脳内イメージを追従して操作するタイプのVRゲームをする事があると聞いた。
でもま、この辺りはマナーとして突っ込まないようにしないとな。
ノーリアル、イエスゲームに集中!
「だからクオリティを上げる事はリアルスキルで出来るんだけど、素材の質ばっかりは変えられないから性能が追いついてこないんだよー」
なるほどな、確かに素材の性能が悪けりゃどうしようもないか。
「む? だがリボンの方は違ったような気が……」
あっちは職人の腕が追いついていないって書いてあったよな。
「それは単純に私のスキルレベルが素材に追いついてなかったんだよぉ」
あー、ゲームシステム的な意味でか。
いくらリアルスキルが高くてもゲームのシステムには敵わないからな。
システムがこの素材を加工する為にレベルがいくつ以上必要と言ったらどうしてもそのレベルが必要になる。
「ふむ、リボンについては分かったが、ドレスの方はやり様があろう。わざとクオリティを下げて売れば性能に見合う値段で販売できるじゃろ? もしくは単純に値段を下げて売るとか」
「無理!」
が、俺の提案は即却下される。
「出来るのに手を抜くとか無理! テストの答案を半分以上白紙で出すようなものだよ! 勿体なさすぎる!」
あー、難儀なこだわりがあるタイプなんだな。
「あと不当に価格を下げると技術に対する対価が正当に支払われなくなって業界が死ぬから絶対やるなって社長に言われたし」
あー、それはまぁ分からんでもない。
ともあれそのおかげで俺は自分が装備できるアイテムとそれを作る人間とのコネが手に入ったからありがたいんだけどな。
「まぁ好きに作るがいい。良い品ならわらわが買ってやろう」
「パトロン様!」
ん? そう言えばこういう関係ってパトロンになるのか。
まぁ良いか。お金は十分にあるし。
「それよりもクエストじゃ! やはり討伐が良いのう」
折角のゲームだしバトルでスッキリしたいよな!
「このマールビット討伐など良さそうじゃな」
俺は掲示板に張られていたモンスター退治の依頼を指指す。
「難易度1のクエストかぁ。そんに難しくないから賛成だけど、私は生産系だから他にメンバーが欲しいかな。出来れば前衛と後衛が一人ずつ」
「確かに」
ついでにいうと俺はステータスが貧弱だからなぁ。
誰か一緒にクエストに参加してくれるプレイヤーはいないものか。
「ヒヒヒッ、ここはお前等みたいなガキの来る所じゃねぇぜ!」
周囲を見回すとさっきのモヒカンがギルドに入って来た人にヒャッハーと因縁をつけるロールプレイに興じている姿が見えた。
暇なのかアイツ? まぁ前衛はアレで良いか。
「そこなモヒカンよ」
「ん? 俺か?」
「うむ、お主暇ならわらわの依頼に参加せぬか?」
「おっ!? クエストの発生か!?」
そう言えば俺NPCと勘違いされてたんだった。
「俺もキャリークエストに参加して良いのかい嬢ちゃん?」
見た目ヒャッハーなわりにしっかりレフリスに確認を取るモヒカン。
コイツリアルじゃ真面目だろ。
「はい。前衛と後衛を一人ずつ探してまして」
「成る程、メンバーをランダムで募集するイベントなのか。良いぜ! 俺は魔法使いで後衛だからあとは前衛だな!」
「お前後衛なのかよ!?」
『ペナルティ:のじゃロリ言葉を使わない事でステータスがダウンします』
ピシャーンというエフェクトと共に軽い痺れが全身を襲う。
しまった、あまりの驚きにのじゃロリ言葉忘れてた!
「え? 今の何マルスくんちゃん!?」
「き、気にするな、なのじゃ……」
くっ、クエスト開始前からデバフ喰らっちまった。戦闘が始まる前に回復すると良いなぁ。
「なんかよくわからんが前衛のアテならいるから俺に任せてくれ」
モヒカンはそう言うと知り合いのプレイヤーにフレンドチャットを飛ばす。
「あの人の友達ってどんな人なんだろうね?」
「きっと世紀末覇者みたいな奴なのじゃ」
◆
「初めまして。私はヒメキ。騎士を目指している戦士よ」
まさかのまとも枠でした。ウッソだろ?
「改めて俺はモヒ・カーン。気軽にモヒカンと呼んでくれ」
こっちはほんとにモヒカンだったよ。
「わらわはマルスじゃ。よろしく頼むぞ」
「私はレフリスです。よろしくお願いします」
「依頼内容はマールビットの討伐だっけ。何匹?」
「10匹だな。ただ今回はキャリークエストだから俺達じゃなくてこっちののじゃ、じゃなくてマルスに倒させる必要がある」
「いや、依頼なんじゃから全員で協力するべきじゃろう」
皆はこの依頼をイベントだと思い込んでいるので、俺が魔物に止めを刺させないといけないと考えているみたいだ。
けど実際には俺もプレイヤーだから俺が全部倒すと経験値を独り占めしてしまう事になる。それはよくない。
「俺達も戦っていいのか。こりゃ楽なキャリークエストだな」
「わらわの獲物は獲るでないぞ」
キャリー目当てに獲物を全部狩られないよう釘は刺しておく。
「最低でも一匹は倒させないといけないクエストっぽいね」
「だな」
「じゃあポーションを買ったら行きましょう!」
そうだった。消耗品をまだ買ってないんだった。
「なら安いポーションを売ってる露天を教えてやるよ。プレイヤーの店なんだが割と良心的な値段だぜ」
モヒカンに案内されて路地裏に入ると、いかにも怪しげな男が道端に御座を敷いて商売をしていた。
「おう闇商人。買い込みに来たぜ!」
「なんだお前か。そっちの連中は新人か?」
「ああ、キャリークエストでな、こっちの騎士様と魔物退治をしに行くんだ」
「妙なクエストしてんな」
「コイツはガメッツ。がめついからガメッツだ」
凄く名は体を表すネーミング。知り合いなのが納得だわ。
……ん? 待てよ。
「もしかしてヒメキの名前って……」
騎士志望の女戦士、名前がヒメキ……ゲフンゲフン。
この件は考えないようにしよう。
「ポ、ポーションを売って欲しいのじゃ」
「下級ポーションならHP50回復で50モールだな」
「お店のものと同じ性能なのに少し安いですね」
「名前がガメッツなのにガメつくないのう」
「ふっ、リリース序盤はリーズナブルに取引して顧客を増やし、本格的に取り扱いが増えて来たところで一気に儲けるのよ!」
「聞けば聞く程普通の商売しかしてないのよね」
「ただ高いだけの商品なんて誰も買わねぇからな。需要と供給の見極めは大事だぞ」
「グフッ」
隣の需要と供給を見決められなかった生産職が血反吐吐いとる。
「MPを回復するポーションはあるかの?」
「そっちは素材集めが面倒だからちっと高いな。MP20回復の下級ポーションで50モールだ」
確かに普通のポーションに比べると髙いな。
「ちなみにMP50回復の下級MPポーション(+)だと200モールだ」
「4倍ではないか!?」
それ普通のMPポーション3本買った方が安いじゃん!
「甘いな。安いからって戦闘中にチマチマ何本も飲んでる余裕があるか?」
「む、それは確かに……」
そうか、戦闘を考えると確かに一気に回復する方が良いよな。
「分かったのじゃ。普通のポーションを5本とMPポーション(+)を6本頼むのじゃ」
「マジか! 毎度ありーっ!!」
とびきり胡散臭い笑顔で高速揉み手を披露するガメッツ。
完全に金蔓としてロックオンされた気がする。
「いいのマルスくんちゃん!? 高いよ!?」
「うむ、効率を選ぶのじゃ」
今の俺は令嬢のリボンと『一か八か』の効果で一発だけ『ロイヤルスラッシュ』を撃てる。
だからMPポーション(+)を大量に買ってロイヤルスラッシュを連発出来るようにしよう。幸い金はある。
「はは、こりゃ良い金蔓が来てくれたもんだ。全部で850モールだが、初回はサービスで800でいいぜ」
「良いのか?」
「代わりにひいきにしてくれよな」
「うむ、贔屓にするのじゃ!」
生産職だけでなく商人プレイヤーともつながりが出来たのはありがたいな。
これでフレンド登録出来ればよかったんだが、その為には通魔輪を買わないと行けないからなぁ。
いや高性能な奴なら複数の相手と連絡を取れるかもしれないな。
「では準備も整った事じゃし、いざマールビット狩りじゃ!」
「「「おおーっ!」」」
◆
「これが町の外か!」
王都を出ると一面の草原が広がっていた。
凄いな、草の匂いを強く感じる!
「おお、土に触れるぞ!」
足元の土は安い背景テクスチャなんかじゃなく、手で触って掘る事も出来た。
ここまでするかと思ったが、職業の中には農業系の生産職もあるからその辺りが関係しているんだろうか?
「農業系のスローライフゲームみたいに、地面を掘ったらお宝が出てきたりするかもじゃな」
「ここがマルット平原、通称練習草原だな」
「練習草原?」
「新人プレ、いや冒険者が依頼をこなす場所って意味だよ」
言われて見てみるとそこかしこにプレイヤーらしき冒険者がモンスター相手に戦っている。
「よそのパーティの獲物を横取りするのは厳禁。よそのパーティにモンスターを押し付けるのはもってのほかよ」
いわゆるトレインって奴だな。
集めたモンスターを他のプレイヤーに押し付けて自分だけ逃げる、嫌がらせ行為の定番だ。
「私が敵を釣ってくるからここで待機していてくれ」
「分かったのじゃ」
「お願いします!」
ちなみにデバフは買い物中に解除されていた。
「そうじゃ、今のうちに能力値を上げておくか」
現在の経験値は115。
ロイヤルスラッシュを使えるようになったから攻撃力の心配は無くなった。
となるとやはり能力値に振り分けるべきか。
確かこのゲーム体力を上げるとHPが、魔力をあげるとMPが増えるんだったよな。
「ロイヤルスラッシュで攻撃力は確保できておるし、最初は戦士として必要なステータスを最低5まであげるかの」
そこからコンセプトを絞って数値を特化させていこう。
「本来はマッスルの予定だったが、今はのう」
男キャラのままだったら筋力一筋だったが女の子キャラが筋力一筋というのは……いやでもゲームだから筋力上げても筋肉質になる訳じゃないのか。
外見はあくまでキャラデザだし。
そうなると前線だし引き続き筋力、体力、器用さ、素早さに割り振るか。
あ、いやロイヤルスラッシュの使用回数を増やす為にMPもやっぱ上げないとだめか。
「む?」
筋力を6に上げようとしたとき、今まで必要経験値が次の能力値の数値+1だったのが一気に+10に変わる。
「数値が上がってゆくと必要経験値が跳ね上がるんじゃな」
最初はポンポンあげられるけど、ある程度から難しくなってくるわけか。
って事は序盤の最低値は5で、ここから特化させていく訳だ。
「なら筋力を7にして、これで残り43ポイント。ううむ、6からの能力値の消費がバカにならんのう。今後のスキルの取得も考えると貯金しておくか」
と言う訳で能力値をオール5にして筋力だけ7に特化。
これによってスキルのステータスバフを合わせてHPとMPが16まで上昇した。
「おっ、ヒメキが帰って来たぞ」
能力値の配分を終えるとヒメキが3体のモンスターを引き連れて戻ってくる。
「あれがマールビットか」
パっと見は30センチくらいの球体に近い球体に近いシルエットのウサギだ。
「私が攻撃を引き付ける。攻撃は任せた! 『タウント』!」」
戻って来たヒメキは盾を構えるとスキルを発動する。
するとマールビット達は俺達を無視してヒメキに攻撃を集中する。
『タウント』敵の注意を自分に惹き付けて仲間に攻撃がいかないようにするスキルだ。
「よし、いくのじゃ!」
「うん!」
俺達はマールビットに攻撃を開始する。
「はぁ!」
ステータス上昇の恩恵を感じながら俺はマールビットに剣を振り下ろす。
するとズシャッという音と共にマールビットのHPゲージが0になる。
「おお、一撃! さすが最初のモンスターだけあって弱いのじゃ!」
「え!? 私だと3発かかるよ!?」
ふっふっふっ、能力値を上げたからな!
あと単純に装備が強い。
「んん? さっきの試験の時と動きが段違いだぞ? チェインクエストだからさっきとステータスが変わってるのか?」
やっべ、モヒカンに疑われてる。
「悠長に見てないでアンタも働け!」
そこに運よくヒメキからの戦えというツッコミが入る。ナイスだ。
「へいへい、って訳で雑魚共、俺様の魔法を見せてやる! 『フレイムアロー』! 汚物は消毒だぁー!」
お約束のセリフを言いながらモヒカンがマールビットに魔法を放つ。
もしかして世紀末モヒカンだから火の魔法を覚えたのか?
「キャラクターノロールプレイに余念がないのう」
『勝利』
『経験値1』
「経験値安いのじゃ!?」
「マールビットは最弱の魔物だからな。しかもパーティ割りするから更に安くなる」
つまりマールビットで経験値を溜めたいならソロでやった方が良いと。
「よし、このまま残りのマールビットを釣ってくる」
「任せたのじゃ!」
そうして数匹のマールビットを倒した時だった。
何やらキラキラした金色のマールビットがやって来たのである。
「なんじゃアレ? 金色のマールビット?」
「あ、あれは金のマールビット!」
金のマールビットを見たレフリスが目の色を変える。
っていうかまんまな名前だな。
「絶対倒しますよ! 金のマールビットは金も経験値も素材も段違いに貰えるレアモンスターなんです! 特に素材の毛皮がレア装備の金のファーを作る為の素材になるんです!」
「う、うむ」
「『タウント』!」
『タウント』で金のマールビットを挑発したヒメキだったが、何故か金のマールビットはそれに反応せずモヒカンに襲い掛かる。
「なっ!?」
ヒメキを狙わなかった事に驚いて回避が遅れたのか、モヒカンが良いのを喰らってしまう。
って言うか速っ!? めっちゃ速い!
「気を付けてください! 金のマールビットはデバフに対する高い耐性を持っています! 同様に『タウント』などの自分に影響を与えるサポートスキルにも耐性を持っているそうです!」
「だから『タウント』が効かなかったのか!」
デバフが効かなくて滅茶苦茶早いとか、某RPGの銀色のアイツかよ!
金色にしたのはせめてもの差別化ってか!?
「このっ!」
俺は金のマールビットに攻撃するが、早すぎて全然当たらない。
それどころか俺の周りをグルリと回って挑発までしてきやがった。
「コイツッ!!」
それどころか金のマールビットは一方的に俺達を攻撃してくる。
「きゃあっ!」
「くっ!」
「ぐわぁっ!」
「このっ!」
ロイヤルスラッシュを使うか? いや当てられないから意味がない。
「一斉攻撃だ! 囲んで当てろ!」
魔法を使ってもMPの無駄だと判断して短杖をこん棒のように構えたモヒカンの案に従い、俺達は金のマールビットを囲むように接近して一斉に攻撃をかける。
「「「「くらえーっ!」」」」
だが俺の、モヒカンの、ヒメキの攻撃が外れる。
ギィン!
だがレフリスの攻撃が当たった。
「よしっ!」
「硬ぁぁぁっっ!!」
が、レフリスが悲鳴を上げる。
「すっごい硬いよコイツ! 全然ダメージ通ってない!」
デバフ向こうで馬鹿みたいに早いのに硬いのかよ!
益々銀色のアイツじゃねぇか!
「早くしないと飽きて逃げられちゃう!」
「そんなとこまで銀色のアイツそっくりなのかよ!」
どうやらモヒカンも同じことを思っていたらしくツッコミを入れる。
「金のマールビットはこちらをからかうように攻撃してきて飽きるとあっという間にいなくなるらしいんです! だからそれまでの倒さないと!」
もう完全に愉快犯の通り魔の思考なんだよそれ。性格の悪さだけ元のゲーム以上じゃねぇか!
「くっ残った経験値を器用さか剣術につぎ込むか? いやそれでも当たる気がしない」
正直金のマールビットは早すぎて多少ステータスを上げたところで当たる気がしない。
それどころかコイツ、途中から俺達をガン無視してモヒカンに集中攻撃始めてる気がするんだが?
「何で俺ばっかり!?」
やっぱあのモヒカンに惹かれるのかなぁ?
だがチャンスだ。モヒカンに気を取られている隙に後ろから奇襲だ!
「せぇい!」
スカッ
だがまるで後ろから攻撃してくるのが分かっていたかのように回避される。
それどころか回避の瞬間、こちらに向けた視線がニヤリと嫌らしい笑みを浮かべる。
「コ、コイツ馬鹿にしたのじゃ!」
「挑発までするとか無駄にAIが凝ってんなぁ」
お前もモヒカン部分を襲われてるだろ!
「あったまきたのじゃ!」
こっちを完全にバカにしてる事を公開させてやる。
「レフリス! モヒカン! ヒメキ! 金のマールビットをわらわの正面に追い込むのじゃ!」
「何か手があるんですか!?」
「やってやるのじゃ!」
俺は『一か八か』を発動してMPを2倍にする。
「いくぞ!」
モヒカン達が金のマールビットを俺の正面に追い立ててくる。
「今じゃ! 『ロイヤルスラッシュ』!!」
まばゆい輝きと共に剣が光を放つ。
だが狙うは金のマールビットではなくその手前の地面。
刃が触れるとともに地面がはじけ飛ぶ。
「外した!?」
「いや、狙い通りじゃ」
そう、狙い通り、
「プギーッ!?」
金のマールビットがはじけ飛んだ地面にハマり込んでいた。
「早すぎて穴を避けれなかったみたいじゃ、なっ!」
勢いをつけて穴にハマったマールビットに剣を突き立てる。
「プギーッ!!」
「ふははははっ! 避けれないじゃろ! 怖かろう!」
「笑われたのすっごく悔しかったんだねぇ」
「イベント演出で笑われたのかガチで笑われたのか判断に迷うところだな」
「くっちゃべってないで手伝うのじゃ!」
「へいへいっと! よくも俺様の自慢のモヒカンを狙ってくれたなこの野郎!」
「特に恨みはないが、はぁー!」
「ファーッ!! レア素材-っ!」
哀れ穴にハマった金のマールビットは抜け出そうとするも上から叩き戻され、穴が1個しかないモグラ叩きと化す。
結果、タコ殴りで蓄積した小ダメージによって見事倒されたのであった。
「勝利」
『経験値1000』
「やったー! レア素材ゲット!」
倒した金のマールビットを解体し、レフリスが喜びの声を上げる。
「まさかスキルで地形を破壊するなんて」
「スキルにこんな使い道があるなんて正直驚きだったな」
モヒカン達は俺が地面に穴を開けて金のマールビットをハメた事に驚いているみたいだ。
ふふん、外に出た時に土に触れたことで思いついたのさ。
コイツをお宝にして地面に埋めてやろうってな!
「それが出来たのもこのゲームの自由度の高さのおかげじゃな」
「にしても経験値スゲェな。流石レアモンスターだぜ」
「ああ、苦労に見合う成果だったな。まさかキャリーイベントでこんなおいしい思いが出来るとは」
「寧ろレアイベントだったからこんなおいしい思いが出来たんじゃねぇの?」
どうやらモヒカン達は金のマールビットとの戦闘をイベント戦闘だと勘違いしたみたいだ。
まぁ俺としてはありがたいから良いけど。
「ドロップした素材は金のマールビットの毛皮、牙、肉、それに魔石ですね」
「ファーを作りたいので毛皮が欲しいです!」
「俺は杖を強化する為に魔石が欲しいな」
「私は牙が欲しいが……」
と、ヒメキが俺を見てくる。これがイベントなら俺に金のマールビットの素材を渡す必要があるんじゃないかと考えたみたいだ。
「素材は皆で山分けにするのじゃ!」
「っ! では私は牙を貰おう」
「ならわらわは肉じゃな!」
ぶっちゃけどれが何の役に立つかさっぱり分からんし、寧ろ経験値ががっぽり手に入った事の方がありがたいので山分けに文句はない。
その後俺達はマールビット討伐の依頼を達成し、報酬を山分けしたのちに別れたのだった。
「さて、それじゃあ行くかの」
そして、皆と別れた俺は、ある場所へと向かった。
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マールビット討伐報酬
報酬:100モール
経験値:10
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラクター欄
マルシエル=リム=オーヴァロド
種族:魔族
性別:女
HP:15『16』
MP:15『16』
筋力:7『7』
体力:5『5』
魔力:5『5』
素早さ:5『5』
器用度:5『5』
スキル
不屈の闘志:HPが0になった際、確率でHP10%で耐える。
ロイヤルスラッシュ:攻撃スキル:消費MP100:ダメージが1000%増加
一か八か:消費MP2:戦闘中一度だけ一つのステータスを二倍に出来る。
ただしHP、MPは現在値が2倍になる。
剣術スキルLv1:消費MPなし:剣を使った戦闘時に命中率、威力が向上する。
上昇する数値はLvに依存する。
受け流し:消費MP2:タイミングよく相手の武器を受ける事で攻撃を回避できる。
アイデンティティ:魔王姫
王族特権:様々な最高位の特権が行使できる。
大いなる血統:全ステータスが10%増加
最高級教育:ロイヤルスキルを習得できる。
デメリット
女性専用アイデンティティ:キャラクターが強制的に女性になる。
個性:のじゃロリお嬢様
甘えん坊:周りの反応が甘くなる。
教育係:お付きのNPCが付いてくる。
デメリット
口調:のじゃロリ言葉を使わないと一定時間ステータスダウン、一部スキル封印。
身だしなみ:高貴な装備以外装備不能、一定のクオリティの装飾が施された装備以外装着できない。
外見指定:強制的に外見が小柄な美少女になる。
バットン
マルシエルの教育係
さまざまなアドバイスをしてくれる。
王族として相応しくなるための教育を施してくれる。
戦闘には参加しない。
※※※(好感度不足で未開放)
経験値:1056
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。




