第59話 変人達の浪漫と海域突入
「ぐぉぉぉぉっ!! やっちまったぁぁぁぁっ!!」
『のじゃロリ言葉を使わなかった事でペナルティが発生します』
バシャーンとエフェクトが入り、ステータスが下がるが俺の精神が受けたダメージはそれ以上だった。
「え、ええと、可愛いよマルスくんちゃん!!」
フォローになってねぇぇぇぇぇっ!!
「今度は魚か。お嬢はどんどん面白生物になっていくなぁ」
フォローですらねぇ!!
「……カッシーと一緒に泳げるようになりましたね!!」
それはフォローのつもりかヒメキ!?
「うおおー! 姫様が今度は人魚になったぞ!」
「マジかよフォームチェンジあるのかよ! って事は他の姿にも変身すんのか!?」
「誰がするかっ!!」
「ケンタウロス姫様とかいいな」
「いやいや、ラミア姫様もなかなか」
「空戦特化のハーピィ姫様とかもよくね? 歌も歌うし」
「いやそれを言うならセイレーンの方だろ。あとそれならスキュラ姫様とかもありだな。神話によってタコの下半身と犬や狼が生えてる下半身と諸説あるが」
「オデ、植物系姫様希望」
「拙者は昆虫型姫様が良いですな。女郎蜘蛛やカマキリになった姫様に食べられたいでゴザル」
「「「「それはちょっと」」」」
「ドン引きが過ぎるのじゃ……」
何だこの異常性癖集団は。性癖博覧会かな?
「これがわらわのギルドメンバーなのか……!?」
そんな俺の肩をポンと叩いてくるモヒカン。
「これが現実だ」
「そんな現実は嫌なのじゃーーーーーっ!!」
変態の集団に打ちひしがれていると、港の一角にバシャーンと大きな水柱が立ち上り船ほどもある巨大なマグロが出現する。
「モ、モンスターだぁーっ!!」
突然のモンスター襲来に船乗り達が悲鳴を上げる。
「モンスターだって!? イベントが始まったのか!?」
あっ、やべ。話を聞いてなかった連中が早とちりしてる!!
「止めるのじゃ! そのマグロが案内役なのじゃ!?」
「ええ!? マジで!?」
危ない危ない、危うく依頼主と戦いになるところだった。
『姫様のお呼びを受けて参上したまぐろー!』
なんか変な語尾でキャラ付けしてる。
「ディープシーツナの使いが来たット」
そして対抗するようにバットンが喋り出した。
あれか、マスコットの座を奪われるかもと危機感でも湧いたのか?
『さっそくモンスターが暴れている海域に案内するまぐろー。僕のウロコに掴まるまぐろー』
ディープシーツナがそう言うと表面の鱗が反り返り、掴みやすくなる。ファンタジー生物すげー。
『姫様は僕の頭の上に載って良いまぐろー』
「うむ、世話になるのじゃ」
「おっ! 俺も上に乗ろっと!!」
プレイヤーの一人がディープシーツナの上部に乗ろうとするが、その瞬間上ヒレが勢いよく動いて乗ろうとしたプレイヤーを叩き落す。
「ぐえっ!?」
『上に乗って良いのは姫様だけだまぐろー。姫様は僕達マグロ族のお姫様なんだまぐろー』
「「「「姫様がマグロのお姫様!?」」」」
ああ、また誤解を招きそうなことを……!!
「姫様がマグロの姫ってどういう?」
「魔王は魔族だし……もしかして母親がマグロ!?」
「どんな猟奇的な家族じゃ!! 母上はちゃんと真っ当な魔族……魔族じゃよな?」
「何でそこで弱気になるんだよ」
だってしょーがないじゃん! 俺のアイデンティティ設定だと母親は最初から死んでる扱いなんだから!
「王妃様は魔族だット。広義の上ではット」
「なんじゃその不安な説明は!?」
仕方なく俺はディープシーツナの小魔王核を取り込んだ事で身内認定をされたと説明をする。
「あー、そういえば鱗族からもドラゴンの魔石関連で崇拝されてたもんな」
「って事は俺達も魔石を手に入れて進化すればモンスターに味方判定されるって事か?」
「流石にどんな魔石でもって訳にはいかないだろ。ある程度高レベルの魔石が条件だろうな」
「やり込み要素ってことか。進化にも厳選要素がある訳だ」
「へへっ、レア魔石を探すモチベが上がって来たぜ!!」
「拙者蜘蛛系の魔石を探すでゴザル!あえて下位の魔石で上位蜘蛛モンスターお姉様に食べて貰うでござる!!
俺の話を聞いた魔族プレイヤー達が魔石集めに燃え上がる。
うん、真面目に強さを求めている連中しかいなかった。いなかったんだよモヒカン。
ともあれ、他のプレイヤーも進化する事でモンスターから仲間認定されてもおかしくないのか。
今回みたいに身内に認定されたモンスターから依頼をされる限定クエストとかが増えてくるのかもな。
◆
そんなこんなでディープシーマグロに乗って俺達は海を移動する。
だが、そんなプレイヤー達に異変が起きていた。
「おおおっ! な、流される!」
「しっかりつかまれ! 筋力にステータス割り振れ!」
一部のプレイヤー達がディープシーツナの鱗に掴まり切れず振り落とされ始めたのだ。
「流されてる奴の何人かは見たことがあるな。エンジョイ勢でレベル上げはあんまりしてない連中だ」
「装備もあんまり良くないね。最新の装備よりも3ランクは下だよ」
「新エリアに行くためのステータスかスキルに制限があるのかもしれねーな」
「そんなことあるの?」
モヒカンの言葉にレフリスが首を傾げる。
「ゲーム的に高難易度エリアに低レベルプレイヤーが行っても楽しめないだろ? 無謀な連中の自爆ならともかくゲームを始めたばかりの新規プレイヤーが迷い込むのを阻止する為と考えればありえる話だ」
「ふむ明らかに筋力が弱そうなプレイヤーでも問題なく掴まっているのを見ると全体的なステータスから判断していそうだな」
なるほど、最低限新エリアで活動できるだけのレベルに達してないと入れないって訳か。
ヒメキもよく見てるな。
『海に潜るまぐろー』
ある程度進むと今度は海の底に向かって下降が始まる。
明るい水色だった海が少しずつ暗くなっていき、完全に真っ黒になる前に海底へと到着する。
『ついたまぐろー』
「ここが水中ダンジョンって訳か。だがかなり暗いな。数メートル先が見えないぞ」
「ふむ、この暗さだと水深30メートルってとこか」
マジか、水深30メートルでこんなに暗くなるんだ。
2,300メートルくらい潜らないとここまで暗くならないと思ってたわ。
水中に詳しいニキの知識凄いな。
『この先に僕らの心をかき乱すものがあるまぐろー。これ以上進むと僕もおかしくなっちゃうからここで待機してるまぐろー』
「うむ、案内御苦労なのじゃ」
でも普通のダンジョンみたいに壁がないからどっちに行けばいいか分かんねぇぞコレ。
「遺物のある方向は分かるかの?」
『ぼくの向いている方角に感じるまぐろー』
「承知したのじゃ。では皆の物、海のモンスターを狂暴化させる遺物を探しに行くのじゃ。出発前にも言ったが、酸素ゲージの消費には気を付けるのじゃ。ゲージが切れそうになったらわらわの傍まで来て回復させるのじゃ」
「「「「おおーっ!!」」」」
『それともう一つ頼みがあるまぐろー』
いざ出発と足を踏み出しかけたところでディープシーツナから待ったがかかる。
「頼みとな?」
『この先に僕達の兄弟がいるまぐろー。でも皆は操られているだけまぐろー』
「だから傷つけずに見逃してほしいって訳か」
『そうまぐろー、頼むまぐろー』
プレイヤーの言葉にあんないマグロが頷く。
多分これもイベントの一環なんだろうなぁ。
コイツは攻撃しちゃ駄目、ペナルティがあるぞみたいな。
「わらわ達も自分達の身を守らねばならん故絶対は約束は出来んがなるべく傷つけないようにするのじゃ」
『それでいいまぐろー』
ディープシーツナの頼みを聞くと、改めて俺達はダンジョン海域へと足を踏み入れた。
「さっきのは良い落としどころだったなお嬢」
「なんのことじゃ?」
モヒカンの言葉に首を傾げる。
「分かっててやったんじゃないのか? アレだ、わざわざマグロを傷つけるなって言われたって事は、やらかした場合何かしらのペナルティを受ける可能性があるってことだ」
うん、俺もそう思った。他のゲームでもたまにある条件だよな。
最悪の場合は攻撃しちゃいけない奴を攻撃した途端ゲームオーバーになってやり直しになるパターンだ。
「あの様子だとミッションの強制失敗にはならなさそうだし、せいぜいステータスの一時的な減少かクリア報酬の減額とかがありそうだな」
報酬の減額は地味に痛いからやりたくないなぁ。。
「よし、ヒメキ今の話を皆に伝えてマグロへの攻撃禁止を徹底してくれ」
「はっ!」
マグロを攻撃するなと言われたプレイヤー達の一部は難を示したものの、クエスト報酬が減る可能性があると言われるとそりゃイカンとあっさり理解を示してくれた。
みんな自分の利益に直結すると分かると素直になるよね。
「とはいえ、一部のモンスターだけを倒さずに戦うのは厄介じゃな!」
「そうだね、範囲攻撃がかなり使いづらいよ!」
いざ戦闘が始まると俺達はその厄介さに気付く。
狂暴化したモンスター達は種族関係なくパーティを組んで襲ってくるんだが、多数のモンスターを効率的に倒そうとどうしても範囲魔法を使わざるを得ない。
だが敵も動く為、ちょくちょくマグロ系モンスターが戦列に入ってきては慌てて範囲攻撃をキャンセルする羽目になる。
だからそうならない様にマグロ系モンスターを大きく話して攻撃しようとすると、今度は別のモンスターも攻撃範囲から外れてしまい、結果範囲攻撃の意味が薄れてしまう。
シミュレーションでマップ攻撃をする時によく見るアレである。
「それに戦闘後も厄介です。残ったマグロ系モンスターから逃げる必要がありますから」
それが第二の問題だった。
他のモンスターを倒してもマグロ系モンスターは敵対状態のままだから逃げても追いかけて来るのである。
マグロなので普通に速いのがまた厄介だ。
「スパイダーネット!」
「ウォーターヴェール!!」
そんな訳で行動を阻害するスキルを使って足止めしている間に逃げる必要があるんだが、それはそれでMP消費もバカにならなくなるわけで……
「という訳で俺に良い作戦がある」
モヒカンがしたり顔で作戦を提案してくる。
「なんか失敗しそうなフラグビンビンじゃが一応聞いておくのじゃ」
「なーにいつもやってる事をやるだけさ」
「いつもやっている事?」
「あー成る程、いつもの奴な」
「いつもの奴か」
察しのいいプレイヤー達がなるほどと頷く。
「あーいつもの奴だね」
「いつもの奴だな」
レフリス達もなるほどと頷く。
やめて気付きたくない。
「という訳で魅了してくれお嬢」
はい、今回も歌う事になりました。ちくしょー!




