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のじゃロリ魔王姫さまはNPCじゃありません!~ネタキャラ? いえ、レアキャラです!~  作者: 十一屋 翠
第5章 海戦怪戦編

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第58話 海へ挑め!

『我等を救ってほしい』


「はぁ?」


 助けたお礼を受け取った直後に助けてほしいとはこれいかに?


「どういう意味じゃ? わらわ達が妖精大陸で暴れた事で問題は解決したのではないのか?」


『一時的にはな。だが少し前からまた我等の心をかき乱すものが発せられるようになった。それも海のいたるところでだ』


 成程、モンスターを狂暴にする遺物を誰かがバラまいたのか。

 恐らくは完全鎖国派のボスと一緒に居たフードの人物。


『我等はソレに近づくと心をかき乱される。だが放置しておけば我が子等だけでなく、他のモンスター達も狂暴になって我が子等が襲われる。お前にはソレを排除して欲しい』


「そうは言われてもどこにあるか分からんとどうしようもないぞ」


『おおよその場所は予測できる。モンスター達がより狂暴になっている場所の中心にあるだろう。そして離れれば影響は薄れ遠ざかる』


 成程、魔物が狂暴になるエリアを探せと。それはそれで難題だな。


『影響を受けないギリギリまでは我が子等が案内する。全ての我等の心をかき乱すものを破壊してくれたなら相応の礼を用意しよう』


あっ、フィールドまでは案内してくれるんだ。闇雲に深い海の中を探さなくて済むのはありがたい。


「そうじゃな……」


 さて、どうしたものか。

 ゲーム的に考えたら結構デカいイベントだよな。

 海のいたるところって事は順番に攻略するチェーンイベントか、沢山のプレイヤーが同時に参加する同時後略プレイだろう。

 さっきの礼を考えると報酬も悪くない筈だ。性能だけでみれば。性能以外はちょっと不安要素が強いが。


 そしてデメリットは……船での移動が危険になる事だな。

 今のところ飛行機のような乗り物が発見されていない以上、大陸間を移動するには船が必須だ。

 以前魅了で従えた完全鎖国派からも交易船を狙ったテロを行う予定だという情報を手に入れた事からも暫くは船が主流の移動手段になるだろうな。


「放置は出来んのう……」


 となりゃ悩む必要も無いか。


「分かった。その依頼受けるのじゃ」


『感謝する。お前にも準備が必要だろう。準備が整ったら我の魔石の欠片を手に入れた町で冠を被れ。我が子が迎えに行く』


「うむ、わかったの……冠?」


 おい待て、まさか人前でこの姿に変身しろと!? 変身バンク付きで!?


『安心するがいい。姿を変えずとも海の傍で冠を被れば我が子と心を通わす事は可能だ。ただし真水では無理だぞ』


「まぁそうじゃろうな」


 マグロは淡水魚じゃないからね。


『ではお前の魂を肉体に戻すとしよう。あまり魂が肉体から離れるのもよくないからな』


「え? 魂?」 


『うむ、お前の魂だけを我の下に呼び寄せていたのだ』


 マジかよ、そんな能力持ってんのかディープシーツナって。


『ではな』


 ◆


 目が覚めるとベッドの上にいた。

 どうやら俺はゲームにログインした瞬間ずっとここで眠っていた事になっているらしい。

 無人の屋敷のあれこれはアレか、間に挟まるムービー演出みたいな奴か。


「そうなるとあのアイテムは……」


 アイテム欄を確認すると『女王マグロのエラ冠“NEW”』と表示されたアイテムがページの最上部に輝いていた。


「夢ではなかったようじゃな」


 出来れば夢であってほしかった。


「じゃが受けてしまった以上は仕方がない」


 セバスティアンに動けるギルドメンバーをロビーに呼ぶよう命じると自分もロビーへ向かう。


「姫様から呼び出しって事はまた何かのイベントかな」


「妖精大陸のイベントには参加できなかったからな。今度は乗り損ねないようにしないとな」


 俺の呼びかけ=イベントの募集と覚えたプレイヤー達は既にイベントに参加する気満々だ。

 俺が二階から姿を見せると、プレイヤー達が気付いて声を小さくする。

階段踊り場に立った俺は、プレイヤー達に語り掛ける。

うーん、すっかり大勢の人の前で喋るのが当たり前になったな。 

お陰で会社の会議で喋るのも苦じゃなくなったけど喜んでいいやら悲しんでいいやら。


「まずは礼を言おう。急な呼びかけによく応じてくれた」


 まずは挨拶。そして本題だ。


「さっそく用件を伝えよう。此度の依頼は海の探索じゃ」


「海? 水中エリアの実装ってことか!」


「どのくらい深い所まで実装するんだ?」


「いや、自由に動けるとは限らねぇぞ。ギミックをクリアすると海中洞窟に入れるとかかもしれん」


 プレイヤー達は思い思いに水中エリアとはどんな場所かと想像を膨らませる。


「静粛に! 姫のお話の最中だ!」


 俺が注意をする前にヒメキがお喋りなプレイヤ―達を一喝する。


「どうぞ姫」


「うむ、此度の依頼主じゃが……モンスターじゃ」


「「「「モンスター!?」」」」


 予想外の依頼主の名が出てプレイヤーを叱っていたヒメキまで驚きの声を上げる。


「モンスターが依頼主ってどういうことだ!?」


「強大な力を持ったモンスターの王に頼まれた。何者かが海のモンスター達を狂暴化させる何かを各地の海に放ったと。それを排除して欲しいというのが今回の依頼じゃ」


「各地の海っていったいどこなんだ? 一言に海って言っても広すぎてどうすればいいか分かんねぇぞ」


 だよねー。


「依頼主の使いが目的地の近くまで運んでくれる故心配は無用じゃ。モンスターを狂暴化させるなにかはモンスターが最も狂暴になっている場所にあるとの事じゃ」


「成る程、エリアごとにモンスターの種類か強さが変わってくるって事か。横方向にフロアが替わるダンジョンって感じだな」


「水中だから球体じゃないか?」


「それはどっちでもいいだろ」


「水中が舞台となると酸素ゲージはどうなるんだ? 水着じゃ減少を緩やかには出来るが完全にゼロにする事は出来ないぜ。聞いた感じ水上にゲージ回復出来るような浅瀬の探索じゃないんだろ?」


 プレイヤー達が水柱での探索の不安を口にする。

うーんそれな。確かに俺は良いけど他のプレイヤーはどうするんだろうな。


「そうじゃな。わらわの傍にいれば酸素ゲージの回復が出来るが、複数のエリアを手分けして攻略すると考えると何かしら酸素ゲージの回復手段が必要じゃな」


「おー、さすがNPC酸素ゲージの回復なんてしてくれるんだ」


「いや待て姫様の傍にいくと回復って……それってつまり人工呼吸って奴か!?」


「「「「それだっっっっ!!」」」」


「それだっじゃねぇのじゃ!!」


「ええ!? そうなの!?」


「そんな訳なかろう!! お主まで何言っとるんじゃ!!」


「流石にそれやったらゲームのレーティング爆アガリだな」


 爆アガリどころか一発BANだっつーの。


「そんな事せんでもわらわの傍に近づけば自動で回復するのじゃ!」


「「「「なーんだ」」」」


 なーんだじゃねーよ! 何が悲しゅうて男と人工呼吸なんぞせんといかんのだ!


「最初の探索はわらわと共に一つのエリアに絞るのじゃ。そこでわらわが酸素ゲージを回復する。レフリス達は酸素ゲージを回復させる為のアイテムを探してほしいのじゃ」


「成る程、新アイテムだね!」


「確かに水中に活動範囲が増えるなら酸素ボンベみたいなアイテムはあるかもしれないよな」


「口に含むと呼吸できるアイテムとかゲームっぽくていいねぇ!」


 単純な教科素材だけでなく新アイテムも見つかるかもしれないとはしゃぐプレイヤ―達。


「よし、それでは水中装備を整えて探索に向かうのじゃ!!」


「「「「おおーっ!!」」」」


 ◆


 それから数日、俺達は装備を整えて水中エリアに向かうべくゼルレイの港町に到着した。


「しっかりわらわ達水中装備ばっかり新調しておらんか?」


「意外と水中戦の機会多いもんねこのゲーム」


 王位継承権争いでもフィールドを水場にしたりしたしなぁ。

 今回の装備は妖精大陸で入手した素材だけでなく、他のプレイヤー達が他種族の大陸で入手した素材も合わせてのハイブリッド装備だ。


『融和の水着鎧:防御力450:水中活動で能力値が;20%UP、移動速度10%アップ』


『融和の足輪:防御力100:水中で足ヒレに変化出来る。足ヒレ時移動速度5%アップ。陸上では10%マイナス』

『融和の腕浮き輪:防御力100:泳ぎの苦手なプレイヤーの身体なバランス補助をしてくれる。見た目が可愛い。酸素ゲージがゼロになった際、自動で浮上を開始する。60秒以内に浮上した場合デスペナルティ無しで蘇生する(水中のみ)』


「全部別大陸の同種素材を組み合わせて作ると全種族ボーナスが入るんだって」


「だから融和なのじゃな」


「低レベル素材でも融和ボーナスが入るから、これから参加する後続プレイヤーへのフォローじゃないかって言われてるよ」


 あー、そういう考えもあるのか。

 ILLは期待値高すぎてサービス開始時の参加プレイヤーを抽選にしてたもんな。


「それでお嬢、案内役ってのはどこにいるんだ?」


「うむ、港で呼ぶことになっておる」


 皆を引き連れて港に向かうが、流石にこれだけの集団が一斉に動いていると町の人達の注目を浴びてしまう。


「あーっ! お姫様だ!」


「おお! マルシェラ姫様だ!」


 そして俺を見つけた住民達が歓声をあげる。


「マルシェラ姫、町を守ってくれてありがとうございます!」


「マルシェラ姫、今日獲れた魚です! 是非持って行ってください!」


 と、魚を抱えてやってくる住民達。


「い、いや流石に悪いのじゃ」


「いえいえ、今も漁師を続けていられるのは姫様のお陰ですから! 是非っ!」


「う、うむ。そう言うことならありがたく貰うのじゃ」


『マッドカレイを手に入れた』


「うちの魚も持って行ってください!!」


『スピアダッツを手に入れた』


「俺の海藻も持って行ってくだせぇ!」


『ロープコンブを手に入れた』


「アタシの貝も持ってってくださいな」


『プロテクトシェルを手に入れた』


 凄い勢いでアイテム欄が海産物で埋まってゆく。


「み、皆感謝するのじゃ……」


 うーん、探索で手に入れたアイテム入るかな?

 そんなこんなで港にやってくると、今度は漁師達が殺到してきた。


「ようこそお越しくださいました姫様!」


「また別の大陸に向かうのですかな?」


 更にディープシーツナの小魔王核をくれた長老もやってくる。


「いや、今日は依頼主の使いと合流する為にやって来たのじゃ」


「港にですか? それはまた妙な待ち合わせですな」


 あー、長老達はディープシーツナの件で因縁みたいなもんがあるし、今後も移動の際は世話になるだろうから説明しておこう。


「実はな、今回の依頼主は以前この辺りを騒がせたディープシーツナなんじゃ」


「「「「は!?」」」」


 まぁそういう反応になるよね。

 俺は妖精大陸の事をボカしつつ、ディープシーツナとのやり取りを説明する。


「な、成る程。それで姫様に依頼を……」


「っていうかモンスターって喋るのか」


「強力な大魔獣だからじゃろうな。ともあれ本人からも聞いた通り復讐するつもりは無いそうじゃから安心して欲しいのじゃ」


「それは……我等にとっては朗報ですな」


 うん、この町には小魔王核があった訳だし、長老達お年寄りの人達はいつ返せーって攻め込まれるかという不安が多少なりともあったんじゃないかな。


「という訳でこの『女王マグロのエラ冠』を被ればディープシーツナの子供が迎えに来てくれるのじゃ!」


 俺はディープシーツナの冠を被り、迎えに来てくれと頭の中で念じ『女王マグロのエラ冠を装備しますか?』『(はい)/いいえ』ポチッ。


「……え?」


 目の前に現れたポップアップが『はい』を選択した状態で消える。

 直後、俺の体が勝手に動きだした。


「マリカルチェンジ!!」


勝手に口が動く。

まてまてまてまて! 待って!! お願い待って!!

腕を水平になるよう上げると身に付けている装備が勝手に外れる。

だから待って! 待ってってば!

しかし裸や下着姿にはならない。なんかキラキラしたワンピース姿になっている。

 止まって! 止まってくれ!!


 そして下半身が魚、いや鮪になり、側頭部にヒレが髪飾りの様に生える。

 ストレートの髪の毛がゆるふわウェーブへと変化し終えると体が勝手にポーズを取る。。


「マホウミのプリンセス、ツナマルシェーラッ!!」


一連の動作を終え、体が動くようになった。


「…………ドサッ」


 声もなく膝(?)から崩れ落ちる。

 なんで。

 なんで被った瞬間に選択肢が出て来るの。

 なんで、操作キャンセルできないのっっっっ!!


「……魔法少女だ」


茫然と見ていたプレイヤーの一人が呟いた声は、驚く程無音の港に響き渡った。


「「「「魔法少女だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」


色々と、オワタ。

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