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のじゃロリ魔王姫さまはNPCじゃありません!~ネタキャラ? いえ、レアキャラです!~  作者: 十一屋 翠
第5章 海戦怪戦編

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第57話 謎の呼び声

「……れ……」


「む?」


 ふと、誰かの声が聞こえた様な気がした。

 だが振り返っても誰もいない。

 もしや幽霊……? って、流石にそれはないか。


「まぁ良いか。今日はまだ誰もログインしておらんし、今のうちに現状を整理するとしようかの」


 まずマルシェラ領は留守中に発展していた。


「家臣達に任せておいたお陰か、税収が増えて開発レベルも上がっておるのう。じゃがその分必要経費も増えておるが十分利益は出ているのじゃ」


他には第3王子時代に放置されていた施設の修理が順調に進んでいるらしいが、それでもまだ30以上の施設が修理待ちの状況だ。


「これはNPCの職人だけでなく生産職プレイヤーにも依頼をした方がよいな」


優秀な生産者が町に居ついてくれれば税収も上がるだろうしなんなら第4王女の領地から安く仕入れているミスリルを融通してもいいだろう。


そして新たに発見された銅の鉱床調査。

 こちらもNPCだけじゃなくプレイヤーに募集をかけることになった。

 これはガメッツの献策だ。


「NPCいえ、昔からこの土地にいる家臣を使うとコストがかかり過ぎます。その分冒険者に依頼する分には安く済みます。……プレイヤーなら崩落で死んでもリポップできるしな」


 という理由で鉱床探しはプレイヤーに一任する事となった。

最も「でもアイツの場合、こっそり自分用の秘密の鉱床とか確保しそうなんだよな」とモヒカンに突っ込まれていたのは御愛嬌だが。


「そして最後は……妖精大陸との交流ライブ、なのじゃ」


 こちらは妖精大陸から送られてきた呼び声の彫像を俺が登録したのち、魔王国の使節団と共に妖精大陸に送り返す手はずになっている。

そしてコンサート会場で同盟を結ぶ式典を行い、彫像を設置と同時に俺が転移、流れる様にコンサートスタートという流れらしい。


「うう、歌いたくないのじゃ」


 はい、他の大陸に行かずにまだ領地にいるのはそう言う理由です。

作曲家の先生と振付け師の先生が逃がしてくれません。

あとなんか知らんうちにバックダンサーズとバンドマンが増えた。全員プレイヤーな。


「それが終わったら次の大陸に行くのじゃーっ!!」


 求む、レイドじゃない普通のバトル!!


「が……れ……」


「んん?」


 また何か聞こえたような。

 しかし周囲には誰もいない。


「まぁどうせ誰かがロビーで騒いでおるんじゃろ」


 あそこは冒険に失敗して命からがら逃げ帰って来たプレイヤーが興奮冷めやらず騒ぐことが多いからなぁ。

 大半は真っ当なプレイヤーだが、中にはマナーのなってないプレイヤーが責任の押し付け合いで騒動に発展する事もある。

 あんまり騒いでいるようなら衛兵に命じて牢屋にぶち込んでやろう。


「こういう時はNPCと思われているのも悪くないのじゃ。プレイヤーだと逆恨みされるがNPCなら文句は運営に向かうからの」


 てな訳で気分転換を兼ねてロビーにやってくると、そこには騒いでいるプレイヤーが…。…いなかった。


「おや? 誰もおらん」


 それどころか人っ子一人いなかった。

 はて、気のせいだったのか?


「いや待て……誰もいない?」


 そこで初めて異常に気付いた。

 そうだ、今日はまだ誰とも会っていない。

 それはプレイヤーだけじゃない、NPCにもだ。

ここは大量の人が働いている領主の館。毎日のように来客だってやってくる。

なのにメイドの一人とも会わないなんて事は今までなかった。


「それにプレイヤーの姿も無い!!」


 それこそありえない。

たとえ今日が平日の午前中だとしても、オンラインゲームでプレイヤーが一人もいないなんてありえない!! 絶対誰か暇人が居る筈なんだ!


 そこまで気付いて何よりおかしい事に今更気付く。それは……


「バットンがおらぬ!!」


 NPCのバットンはディスティニースロットで付与されたアイデンティティに紐づけられた特別なNPC。

今まで一度たりとも居なくなることはなかった。

 そのバットンが居ない事が何よりの異常じゃないか!


「何が起きておるのじゃ!?」


 あり得るのは何かのイベントが起きて皆現場に向かった可能性か。

「じゃがプレイヤーだけならともかくNPCまで居なくなるとは思えん。せめてセバスティアンが報告なりにくるはずじゃ」


「な……がれ……」


「またこの声か!?」


 やっぱり空耳じゃない!!


「もしやこの声の主がこの状況を引き起こしておるのか!! 一体何者の仕業じゃ!!」


 まさか王位継承権を持った王族の襲撃か!?


「つなが……っ『た』」


 最後の一言が、まるでラジオのチューニングが合ったかのようにクリアに響く。


『来るが良い 魂を受け継ぎし子よ』


 直後、世界が暗転した。


 ◆


「はっ!?」


 気が付けば俺は水の中にいた。


「なにごとーーーーっ!?」


 慌てて水面を目指そうとするもどっちが水面か分からない。

 ヤバイ、このままだと溺死する!!


『安心するが良い。我が膝元で溺死する心配はない。膝は無いがな』


「え?」


 謎の声に我に返ると、視界の端に酸素ゲージが表示されているのが見える。

 そうだ、ここはゲームの中だ。

 だが水中に居続ければ酸素ゲージが減る筈。なのにゲージが減る気配もない。


「一体何が……っ!?」


 何が起きたのか分からず周囲を見回すと、目の前で巨大な目玉がギョロリと動いた。


「うわぁぁっ!?」


 驚きのあまり思わずのけぞると、何か大きなものが俺の背中に当たって体を支える。


「大丈夫だよ。お母さんは優しいからね」


「……魚!?」


 後ろを見ればそこには2mはあろうかという巨大な魚の姿。

 そしてその姿には見覚えがある。


「……あっ、マグロか!!」


 そうだ、この魚はマグロだ。TV配信のマグロ漁船取材で見たことがある!


「そう! ボクはディープシーツナだよ!」


 ツナ? そう言えばマグロは英語で……


「って、お母さん!?」


 振り向くと巨大な目玉が笑みを浮かべた様な気がした。

 そして気付く。目玉の周囲の輪郭に。


「巨大な……マグロ?」


 そう、俺がうす暗い水中の景色と思っていたものは巨大な魚の体表の色だった。


「これがウロコ!? わらわよりも遥かにデカいウロコじゃぞ!?」


『ふふふふっ、落ち着いたか?』


 再びあの声が聞こえてくる。


「お主が喋っておるのか巨大な……マグロよ?」


『その通り。私はお前達がディープシーツナと呼ぶ存在。そしてこの間ぶりだな魔族の子よ』


「この間? ……っ! もしやお主、あの時船を襲ったディープシーツナか!!」


『然り。あの船には我等の心をかき乱すモノがあった。特にわが子等が惑わされてな。我はそれを破壊する為に船を襲ったのだ』


 ディープシーツナの心をかき乱すもの、それって船に乗っていた完全鎖国派の妖精がもっていた遺物の事か!


「それは分かったが何故わらわをここに呼んだのじゃ?」


『それは、礼と、頼みをする為だ』


「礼と頼み?」


 礼はよくわからんが、頼みはまぁクエストの事だろうなぁ。


『我が子等の心をかき乱すモノが無くなったのはお前のおかげだ』


 あー、遺物の事かな。

 そういや遺物の管理はレフリスに任せてたから、結局どの遺物がディープシーツナを引き寄せたのかまでは調べてなかったな。

 帰ったらレフリスに探して貰ってぶっ壊しておくか。ただ気になるのは……


「なぜわらわが妖精の企みを叩き潰したと知っておるのじゃ?」


 魔物、それも海の魔物であるディープシーツナが地上の騒動を知っているとは思えない。


『それはお前が私の魔石の一部を取り込んでいるからだ』


「うぐっ!」


 あー! そう言うことか! 小魔王核が原因か!

 あれが原因で俺のやった事がディープシーツナに筒抜けなのか!


「あー、いや、その、小魔王核の事は必要に迫られて使ったのであって……」


 やっべぇどうしよう。魔王核の取りだし方なんて知らないから返せって言われても返せねぇぞ!?


『それは必然があってお前の下へと渡ったのだ』


 え!? 許してくれるの!?


「お主から魔石の欠片を奪った建国魔王を恨んではおらぬのか?」


『それはない。強者との戦いの結果だ。相応しいその子孫が継承したのなら寧ろ喜ばしい事だ』


 おおー、思った以上に器がデカいぞこの魔物。


『お前を、我が娘と認めよう』


「……ん?」


 今なんて?


『我と引き分けた強者の血を引き、我が魔石の一部を取り込んだお前は血を分けた子も同然。故にお前は我が子を名乗るにふさわしい』


「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 何言っちゃってんのこの人、いや魚!!


『今日からお前は魔鮪姫を名乗るが良い!』


『特別アイデンティティ『魔鮪姫』を取得しました』


「なんか習得したぁぁぁぁぁぁっ!!」


魔鮪姫:偉大なる海の王者の子。全てのマグロ科の魔物が友好的になる。水着を装備しなくても酸素ゲージの消費速度が半分になる。

マグロと会話が出来るようになる。

水深600mまでは明るさ、水温に左右されなくなる。


デメリット:精神的にマグロを食べ辛くなる。


『魔鮪姫の習得によってディープシーツナの小魔王核の力が解放されました。ロイヤルスキル『ツナプリンセス』を強制習得しました』


「強制習得!?」


 何それそんな習得の仕方あるの!?


ツナプリンセス:変身スキル:水中で人鮪に変身できる。人鮪状態になると水中でのあらゆるデバフが無効化、酸素ゲージが無くなり無制限に水中活動が可能になる。水中での移動速度が5倍、素早さが50%上昇、器用さが10%上昇する。魚の魔物が中立状態になる。デメリット:変身する時変身バンクが入る(特殊クールタイム扱い。発動中は変身完了まで無敵状態になる)


「デメリットォォォォォォォォッ!!」


 何だこれぇぇぇぇぇぇぇっ!? 変身バンク!?


「いやじゃぁぁぁぁ! 絶対ネタにされるのじゃぁぁぁぁぁ!」


 性能が高いだけにデメリットがキツイぃぃぃぃぃぃっ!!


『これで我が子に連なる者達はお前を仲間として受け入れ今後攻撃する事はない』


「よろしくねお姉ちゃん!」


「仲良くしてねお姉様!」


「王女様ばんざーい!」


 ディープシーツナの宣言と共に突如現れる大量のマグロ達。


「って姉認定されてるぅー!」


『お前には我が子の証としてこれを授けよう』


 ディープシーツナの巨大なエラの隙間からキラキラとしたものがこぼれ俺の手元に流れてくる。


「これは……冠?」


『さぁその冠を被ってみてくれ』


「う、うむ」


まずは性能を確認しようと手に取った瞬間、俺の体が勝手に動きだした。


「マリカルチェンジ!!」


何か勝手に口が動いた。

腕が勝手に動いて冠を頭に乗せると身に付けている装備が勝手に外れる。

しかし裸や下着姿にはならない。なんかキラキラしたワンピース姿になっている。

 待って、こんなの装備してない!?


 そして下半身が魚、いや鮪になり、側頭部に何かが生えた感触がする。

 髪の毛がゆるふわウェーブに変化してゆく。


「マホウミのプリンセス、ツナマルシェーラッ!!」


謎の口上と共にピキーンとポーズを取ると、漸く体が動くようになった。


「何じゃ今のぉぉぉぉぉぉぉっ!?」


ピコンという音と共に目の前に装備画面が表示される。


女王マグロのエラ冠:アクセサリ:クオリティ10:天然自然が生み出した芸術的冠。頭にかぶる事で人鮪に変身することが出来る。この冠を被ったプレイヤーの周囲に集まると仲間の酸素ゲージが回復する。

売却不能。譲渡不能。廃棄不能。神聖な親子の証、捨てても戻ってくる。


「呪いのアイテムじゃぁぁぁぁぁぁっ!!」


 勝手に変身してセリフとポーズまでキメるとか、あらゆる意味で碌なもんじゃねぇぇぇぇぇっ!!

 変身ヒロインもの第一話としては納得できる流れだけどさ! いや納得できんわ!

 クソ運営め! なんて迷惑なアイテムを作りやがる!!


『うむ、似合っているぞ』


「余計なお世話じゃ!!」


 気が付けば武装は元に戻っていた。ただしブーツ系の装備は解除されたままだ。鮪だからか。変なところで気を回すな!


『さて、それではお前への頼み事だが』


「この状況で話を進めるとか正気か!?」


『我等を救ってほしい』


「……は?」


 ディープシーツナが放った言葉は、あまりにも輪郭がぼやけた頼みだった。

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― 新着の感想 ―
これ運営がこっそり確率操作してたり アイドルに誘導しているやろ
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