第56話 突然の転身
「これで完全鎖国派の拠点は全て潰したか」
完全鎖国派のボスを倒した俺達は、廃墟と化した拠点を掘り起こして他の拠点の情報を探した。
流石本拠地だけあって他の拠点にない情報が盛りだくさんであり、なんなら拠点情報どころか妖精大陸内の遺物が眠る多くの遺跡の情報も見つかりちょっとした騒ぎになったくらいだ。
「手間はかかったが、お嬢の歌が無かったら制圧にはもっと時間がかかってただろうな」
やった事はいつも通り、拠点に攻め込んで俺の歌で魅了。
完全に無効化したら資料と物資を根こそぎ回収して『心酔』状態になるまで歌を聞かせ続ける。
これを繰り返したことによって、完全鎖国派は完全に壊滅したのだった。
うーんとても酷い。一応戦闘もあったけどね。
「でも他の遺跡とかは先を越されちゃったね」
「そうじゃな、わらわ達が完全鎖国派制圧を優先したのもあるが、相手の方が一枚上手だったのは間違いなかろう」
俺達は完全鎖国派の制圧と並行して危険な遺物や封印されたナニカがあるらしい遺跡の探索も行った。
だがその中には既に何者かによって盗掘されていた場所が幾つかあった。
犯人は間違いなく完全鎖国派のボスと一緒に居たフードの人物だろう。
コイツに関しては幹部クラスの妖精達に聞いても良く分からないとかし言わなかったんだよな。
分かっているの見た目的他種族であろうことくらいでボスしか知らなかったんじゃないだろうか。
「そう考えるとあのボスを魅了できなんだのが痛かったのじゃ」
ボスとの戦いじゃ猛毒の継続ダメージの回復に必死で魅了する余裕がなかったもんなぁ。
「自分達が発見した遺跡がもぬけの殻になっていた事を妖精達は知らなかったという事はあのフードの人物が情報を盗んで探索を続けていたのでしょうね」
ついでに言うとイベントで既に盗掘済みでした設定というよりは、他の大陸の種族イベントが並行して進んでいた結果なんじゃないかと思う。
何ならプレイヤーが参加するイベントだった可能性もある。
「けど俺達も色々と装備を更新できたし収穫はあっただろ。かなり便利なアイテムもあったし、多分選んだ遺跡によって残りのどの遺跡がフードの連中に奪われるかが替わったんじゃねーかな」
成程、選択の結果変わっていた可能性も断然あるな。
「何なら相手と鉢合わせて戦いになってた可能性もあるね」
◆
「ではわらわ達はゆく。後の事は任せたぞ」
「「「「ははーっ! お任せくださいマルシェラ姫様!」」」」
完全鎖国派を掌握した俺達は、これ以上は出来る事も無いと判断し国を出る事にした。
彼等には今後の方針を伝え、それに従って活動して貰う事になっている。
「我等は完全鎖国派の解体を宣言し、その後は他派閥と強調して行動してゆきます」
「うむ、よろしく頼むぞ」
「排他的であった我々の突然の方針転換を怪しまれぬように、自然な形で他種族との融和を目指すようにします」
「そうじゃな、あまりに急激な変化は逆に疑いを招きかねん」
「姫様、我々が集めて来た妖精大陸固有の素材と遺物です! 是非お受け取りください!」
妖精達が土産とばかりに大量の素材を持って来てくれる。
「おお、感謝するぞ!!」
こうして完全鎖国派の妖精達と別れを告げ、俺達は妖精大陸を後にしたのだった。
◆
「ふー、やっと帰ってきたのう」
妖精大陸を出た俺達は魔族大陸へと戻って来た。
本来の目的通り他種族の大陸に行くことも考えたのだが、元々乗っていた船が襲撃された上に転移に巻き込まれて妖精大陸に行くというトラブルに巻き込まれてしまった為、もしかしたら俺達が海に放り出されて遭難していると勘違いされていないかと心配になったからだ。
「帰るのは呼び声の彫像のお陰で一瞬じゃのう」
周囲に広がるのは勝手知ったる領都の我が屋敷ってなもんだ。
「領主様!?」
と、執事のセバスティアンが血相を変えてやってくる。
「ご無事でしたか! 船が魔物に襲われて領主様の姿が消えたと聞いて心配しておりました!」
「おお、心配をかけたのう。何か問題は起きなんだか?」
するとセバスティアンは背筋を伸ばして俺が留守の間に起きた出来事を報告する。
「領主様が行方不明になったという報告を受けて一時は動揺が広がりましたが、ガメッツ殿とケーキング様を始めとした家臣団の活動によって混乱は最小限に収まりました」
「おお、あやつらが頑張ってくれたのか」
意外な連中の名前が出て来たな。こりゃ頑張ってくれた奴らには礼をしないといけないな。
「また今回の件で他の貴族や王位継承者が領主様不在の領地を管理する者が必要だと騒ぎ立てたのですが、領民達の暴動も辞さない反対意見によって実効支配しようと強引にやってきた貴族達の馬車を襲撃、撃退に成功しております」
「わらわの領民バイオレンス過ぎんか!?」
何してくれちゃってんの!?
「それだけ領主様が慕われているという事でございますよ。それにこう言っては何ですが、やって来た貴族達は評判の悪い者達ばかりで、万が一領地が支配されたら以前の生活に逆戻りになると危惧したのでしょう」
あー、第3王子時代は領民にとっても悪夢だった訳か。
「なにせ領主様に代替わりした途端税金が減りましたからな。滞っていた開発の再会もしてくださいましたし領主様の評判はうなぎ登りです」
そういやどうせキャラメイクし直すからいいやと思って湯水のように資金投入したんだったわ。
第3王子が横領して買いあさった芸術品を売り払った金を開発に充ててたから現状赤字にはなってないと思うけど、今の開発状況や税収ってどうなってんだろ。
ふと都市開発ステータスを見る。すると
マルシェラ領
領地育成段階:17
市民感情:非常に良い
開拓率:8
軍備:26
税率:20%
収益:640000モール
公共施設の維持費:43000モール
修理が必要な設備の数:37
領地予算:51459234モール
漁業開発 川魚の定期的な収入量増
新村開拓、3村が完成、4村を制作中
鉱山探索進行中
「鉱山? ってなんじゃ?」
「領内の山で鉱石が発見されたので調査中です。もし大規模な鉱床が見つかれば領内が更に潤いますよ!」
おお、鉱石がタダで手に入るってなると夢が広がるな!
「何が見つかったのじゃ?」
「銅でございます」
「銅かー」
なんだ銅か。装備的にも特に美味しくないなぁ。
「何を仰います。産業において銅は重要な素材ですよ。安定した収入が得られるチャンスです!」
バトルゲームの攻略的には美味しくないけど、経営ゲームとしては美味しいって事か。
「調査に関してはお主等に一任する。ただ落盤には気を付けるんじゃぞ」
ちょっと前に意図的に崩落を起こした俺が言うセリフじゃないけどな。
「はっ! 一層気を引き締めさせます!」
とその時だった。広間の一角でざわめきがおこる。
「なんじゃ?」
「魔法通信で何かあったようですな」
呼び声の彫像が設置されたこの大広間には、ギルドメンバーが情報を共有する為に大型のモニターを設置してある。
そしてセバスティアンの推測した通り、魔法通信のモニター前にプレイヤー達が集まっていた。
『もう一度宣言する。我々妖精大陸の完全鎖国派は完全鎖国の方針を撤回し他種族との交流を求めるものである』
おお、完全鎖国派はもう俺達の指示通りに動き出したのか。
「完全鎖国派が方針転換か。何かあったのかな?」
「だろうな、知り合いのパーティが完全鎖国派とちょっと揉めただけでバトルになったってくらい他種族に対して敵対的らしいからなぁ
「和平を結ぶフリをした何かの陰謀かな?」
完全に疑われてて草生えるんだが。
『そして我々は他種族融和の象徴たる歌姫、マルシェラ姫の活動を全面的に応援するものとする! その第一歩としてマルシェラ姫ファンクラブに入会し、妖精大陸に大規模なコンサート会場を建設する事をここに宣言する!!』
ひっくり返った。
「な、なななっ!?」
いきなり何言い出すんだコイツ等!!
この状況でそんな事言いだしたら完全鎖国派と俺の間に何か裏のつながりがあると勘ぐられるだろうが!!
「あー姫様が原因かー。ならしゃーないな」
「また何かやらかしたのかウチの姫様」
「そーいや行方不明になってたっけ。なんかやったんだな」
「わらわの家臣納得が早すぎない!? あと少しくらい心配せんか!!」
何でコイツ等こんなにあっさり受け入れるんだよ! おかしいだろ! 疑えよ!
「金の匂いがしてやってきました」
「ガメッツステイ!!」
こうして、妖精大陸の完全鎖国派突然の転身は、また魔王国ののじゃロリ姫が何かやらかしたんだろうという空気で受け入れられたのだった。
そんな理由で受け入れるなよお前等っ!!
後日、妖精大陸から感謝の印として新たなデザインの呼び声の彫像が送られてきた。
妖精風の格好をした俺の彫像は、俺達がいつでも妖精大陸に行けるよう登録したのちに使節団と共に妖精大陸に戻され、大使館ならぬコンサート会場に設置される事になるのだとか。
「っていうかこれ、コンサートに呼ぶ為に送りつけてきたじゃろ!!」
怪しまれないように自然な形で他種族との融和を目指す筈が、あからさまに強火オタクが公私混同してファン活動してるだけになってるじゃねーか!!
不自然に不自然をぶつけるなっっっ!!




