第54話 敵本拠襲撃作戦
ちょっと手の調子が悪いので連載の更新を毎日更新から週一更新とさせていただきます。
楽しみにしてくださっている皆様申し訳ありません。
「よし、それでは完全鎖国派の本拠地(仮)を攻めにゆくぞ!!」
「「「「おおーっ!!」」」」
完全鎖国派の本拠地らしき場所が分かった事で、俺達は総攻撃をかける事にした。
しかもこれまでに掌握した全ての妖精達を動員しての完全包囲の形だ。
更にこれまで集めた素材をふんだんに使って妖精達は全員フル装備済みだ。
この装備を揃えただけでもかなり戦力アップになっている。
「あとはここが本拠地であると良いのですが」
「今更言っても始まらぬ。本拠地であろうがなかろうが全力で攻めるだけじゃ」
「はっ、仰る通りです」
◆
本拠地を攻めると決めた時、俺達は心酔させた妖精達を戦力として動員するか、するとしてどれだけの数を出すかを話し合っていた。
「最大の懸念はここが本拠地かどうかです。もし違った場合、ほぼ確実に情報が本拠地に送られると思われます」
「それは今までもそうだったんじゃない?」
「いや、権力争いをしていた支部ならまだしも、存在を秘匿される程特別な支部なら組織への忠誠心も高いだろう。我々の襲撃を察知したら面子など気にせず上に情報を送るだろう。そうなったら次に攻めるときはこちらの戦力を研究し対策を練って来るだろう」
「それ以上に最悪なのは敵のボスが地下深く潜伏した場合だな。そうなったら発見はかなり難しくなって長期戦になるぜ」
モヒカンの補足にヒメキが頷く。
「じゃあどうするの?」
「少数精鋭で挑むのが良いと思う。我々と各支部のリーダークラスの強者のみで攻めれば敵に存在を知られる事無く施設に接近が可能だろう。あとは姫の歌で魅了した妖精の手引きで内部に侵入し一直線にボスを目指す」
いつも通りと言われてレフリスはそれなら大丈夫かと頷く。
だがモヒカンは納得していない様子だった。
「お嬢はどう思う?」
「わらわか? そうじゃな、わらわは……」
ヒメキの懸念も分かる。ボスに逃げられる前に一気にのど元に喰らい付けるならそれが最良だろう。だが……
「わらわは前線力を動員した方が良いと思う」
「っ!? 何故ですか!?」
「理由は簡単じゃ。少数精鋭で攻めるということは、万全の状態の敵を少数で相手にするという事じゃ。確かに少数なら敵の本拠地に肉薄するまでバレずに行動出来るじゃろうが、以前潜入に失敗した時のように不測の事態に遭遇する可能性も高い。敵の本拠地と言う事を考えればわらわの魅了対策を施した遺物を装備した妖精が多数いてもおかしくはない」
そう、妖精側にも遺物がある。精神攻撃耐性強化する遺物もある事は確認済みだ。
「それならば全線力で一気に攻めるべきじゃろう。何より、人は死んだらそれで終わりなのじゃからな」
「っ!? ですがそれは……あ、いえなんでも……」
プレイヤーだから死んでも復活できる、と言おうとしたヒメキだったが、彼女は俺が死んだらそれで終わりのNPCだと思い出し慌てて言葉を濁す。
まぁ実際には俺もプレイヤーなので死んでもデスペナで済むんだが、それはそれで非常にマズい事になる。
だって俺はNPCのフリをしてるんだから、復活したらプレイヤーだとバレてしまうじゃないか!
そうなったら最悪俺が現役社会人の筋肉ムキムキマッチョマンのネカマプレイヤーだとバレてしまう。
それは絶対に避けたい。なんとしてでも避けたい。
「そもそもわらわ達の事は既に気付かれている可能性もある。自分から不利になる必要もあるまい。万が一首魁を逃したとしてもこれだけ完全鎖国派の戦力を削っておるのじゃ。何なら開国派と接触して同盟を結び人海戦術で首魁を追い詰める事だって可能じゃろう」
こんなところでどうだとモヒカンに視線を送ると、モヒカンも頷く。
「俺もお嬢に賛成だ。お嬢の力を最大限に活用するなら乱戦に持ち込んで敵がお嬢の歌に対策する余裕を無くさせる方が良い。全員に対策アイテムを持たせるほど懐に余裕も無いだろうから雑魚を魅了してそいつ等に攻撃を集中させたい」
「……そういう理由ならば否はない」
安全策に未練がありそうなヒメキだったが、戦力を減らした場合逆に俺の危険が増す事を失念していた事を恥じるように承諾する。
どちらも一長一短でプレイヤーの戦略としては決して間違ってはいないんだけどな。
というやりとりを経て、俺達は全戦力を以って拠点を攻めていた。
◆
「くっ! 何故開放派にここが見つかったんだ!?」
「しかもこれだけの軍勢を動員するまで気づけなかったのは何故だ!? 連中に潜り込ませた工作員は何をしていたんだ!!」
襲撃を受けた拠点の妖精達は開放派の軍隊に襲われた事に焦っていた。
さらっと開放派にスパイを送り込んでいる事が判明したがそれは後で考えよう。
そんな事よりもなぜ彼等が俺達の事を解放派と勘違いしているのか。
その理由は簡単だ。
俺達は解放派の軍隊に偽装して拠点を攻めていたからだ。
この作戦を考えたのはレフリスだった。
「全員変装すれば完全鎖国派の仲間が裏切ったとバレないんじゃない?」
最初はいやそれはどうよと思ったんだが、ここで完全鎖国派の体制が味方した。
彼等は開国派と部分鎖国派に自分達の勢力がバレないよう、拠点間の情報を秘匿する方針を撮っていた。
つまり一部を除いた大半の構成員が他の拠点の同胞の事を知らないという事だ。
「作戦は大成功じゃな」
結果拠点の完全鎖国派の妖精達は俺達の攻撃を解放派の襲撃と勘違いしてくれたわけだ。
「敵に拠点の情報がバレた事は隠せんが、味方が裏切った事がバレない事は大きいのじゃ」
「迂闊でした。こんな簡単な誤魔化し方に気付かなかったとは」
「生産職のレフリスだから気付けたんじゃ、気にすることはない。それよりも兵たちの指揮を任すぞ」
「はっ! お任せください!!」
やる気を取り戻したヒメキが妖精達の指揮に向かうと、俺も『歌姫の加護』で妖精達に回復バフを与える。
「「「「うぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」
ダメージとMP消費を気にしなくてよくなった妖精達は自身のスキルと遺物を使って猛烈な勢いで突撃を開始する。
「「「「堪えろぉーーーーっ!!」」」」
対する完全鎖国派の妖精達もスキルと遺物を使って徹底抗戦の構えを見せる。
だが数で圧倒的に上回る俺達は拠点の守りで優位をとる完全鎖国派を力ずくで押し込み敵の陣形を小さく圧縮させてゆく。
「くっ!! 砦に戻れ!! 籠城戦だ! この砦の力を見せて付けてやれ!!」
完全鎖国派の妖精達が拠点の狭い門に殺到して中へと戻ってゆく。
「今です姫!」
「『魔姫咆哮』!!」
合図とともに魅了の歌を歌い始めると、妖精達の様子がおかしくなる。
「くっ! 精神攻撃か! 殴って正気に戻せ!!」
すぐさま指揮官が部下達を殴って正気を保つように指示を送る。
だがこちらの攻撃はまだ砦に逃げ込めていない妖精達に容赦なく降り注ぎ、さらに逃げ込んできた妖精達で門が詰まってしまい、閉めたくても閉められなくなっていた。
何より、そんな追い立てられた状況で悠長に仲間を正気に戻す事なんて出来る訳がない。
混乱状態から魅了状態へと移行した敵妖精達が自分の考えて俺の敵を攻撃し始める。
「ぐぁっ!? 何を!?」
「操られているんだ! 容赦するな!! 門を閉めるのが優先だ!!」
仲間を攻撃してでも門を閉じる事を優先しようとする完全鎖国派の妖精達。
だが魅了される妖精はどんどん増えてゆく。
「メーザーフレイム!!」
「ブローアップストーン! バーンロック!!」
モヒカンの炎が門に殺到した妖精達に叩き込まれ、遺物によって威力が上昇した攻撃アイテムが手榴弾のように敵のど真ん中で炸裂する。
「いまだ! 突貫!!」
「「「「おおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」
完全に閉じる事が出来なくなった門目掛けて妖精達が守りを固める遺物を発動して突撃してゆく。
完全鎖国派の妖精達が慌てて迎撃をするも魅了された仲間から攻撃されてそれどころではなくなる。
うーん地獄絵図。誰がこんな地獄を生み出したのか。はい、俺です。
そしてとうとう味方が門を突破し内部に突入してゆく。
砦の内部から幾つもの爆音が響いてくるが、それでも妖精達は躊躇うことなく飛び込んでゆく。
それでも高台から侵入者を減らそうと攻撃していた完全鎖国派の妖精達だったが、こちらの戦力から一斉攻撃を受けて次々に落とされ、遂に門周辺は完全に俺達に制圧されたのだった。
◆
「よし、わらわ達も内部に潜入するぞ!!」
「「「おおーっ!!」」」
周囲を各拠点で仲間にしたボスクラスの妖精達に守られ、俺達は歌いながら進んでゆく。
「うぉぉぉっ! この魔女め!!」
「させん!」
倒れた死体の中から飛び出した妖精が襲い掛かってくるも、護衛の妖精達に阻まれヒメキ達の攻撃に倒される。
「惜しいな、魔女じゃなく魔族だぜ」
まぁ妖精達からしたら似たようなもんだけどな。
「やっぱり魅了対策装備持ちだね。他にも潜んでいると思うから皆気を付けて」
歌を中断できない俺は頷くことで返事を返す。
そしてレフリスが注意したように、魅了対策の遺物を持った妖精達が襲い掛かってくる。
「流石に本拠地(仮)だな。他の拠点よりも精神異常対策をしてる奴が多い」
だがそんな天敵達も魅了された仲間に妨害され、俺にたどり着く前にモヒカン達によって倒されていた。
「ここがボスの部屋です」
そして魅了したこの砦の妖精達に案内され、遂に俺達はボスの部屋へと到着したのだった。
「よし、ゆけ!」
「「「「はっ!!」」」」
待ち伏せを警戒して妖精隊を突入させる。
当然攻撃が飛んできたが、それでもひるまず妖精達が次々に突っ込んでゆく。
「よし攻撃が止んだ! 我々も突入するぞ!」
扉から飛んでくる攻撃が止まったところで俺達も中に跳びこんでゆく。
すると部屋の中には三人の妖精と、そして明らかに妖精とは思えないフードの人物の姿があった。
「おやおや、とうとうここまで侵入されてしまいましたね。たしかこの砦の守りは完璧だったのでは?」
仲間と言う割には呆れたような口調のローブの人物。
一体何者なんだ?
「ええい煩い!! ここで全員血祭りにあげればいいだけだ!!」
「やれやれ、ではお任せすると……おやあなたは」
と、フードの人物が僅かな驚きの声と共にこちらに視線を向けてくる。
「まさか魔王国の歌姫ですか?」
「わらわの事を知っておるのか?」
この場にいる敵全員が魅了耐性の遺物を身に付けているっぽいので、歌をやめて情報収集を優先する。
「貴女は有名人ですからね。ですが何故この国に? もしや我々の計画を察して秘密裏にこの国へ?」
いや深読みさせて申し訳ないけど、完全に事故で飛ばされただけなんだわ。
まぁ言わんけど。
「どうやらアンタが本当の黒幕みたいだな。丁度いいから色々教えてもらおうか」
フードの人物が重要な情報を握っていると察したモヒカンがナイフをペロリと舐めながら杖を向ける。
いや杖向けるんならそのナイフなんだったんだよ。
「熱烈なお誘いで申し訳ないのですが、私も忙しいので。今回は辞退させていただきます」
「おーっと素直に逃すと思ってるのかい?」
「ええ、思っていますとも」
そう言いながらフードの人物が懐から見覚えのあるアイテムを取り出す。
「あっ! 転移の遺物!!」
「その通り。ではさらばです」
「待っ!」
待て、と言い終える前にフードの人物は転移で消えてしまった。
「逃げられたのじゃ……」
明らかに黒幕っぽい奴だったのに逃げられてしまった。
「仕方ない。こうなったら残った完全鎖国派のボスを倒すのじゃ」
元々そっちが本来の目的だしな。
「儂を倒すだと?」
俺の言葉を聞いた完全鎖国派のボスがギロリと睨んでくる。
「この儂を倒すとは大口を叩いたものじゃな!」
「へっ、爺さんこそ年寄りの冷や水って言葉知ってるじゃい? 大人しく捕まるっていうのなら命だけは助けてやってもいいんだぜ」
うーん、ナイフを舐めながら言われるとどっちが悪人なのやら。
「舐めるな! 覚醒を繰り返し古妖精に最も近いと言われたこの儂を小娘共が相手に出来ると思うな!!」
ばさっと上着を脱ぎ捨てると、全身からまばゆいエフェクトを発する完全鎖国派のボス。
「覚醒じゃと!?」
「まさかこの爺さんクラスチェンジ済みか!!」
妖精の部下達がボスの左右に控え、戦闘がはじまる。
「さぁ、年季の違いというものを見せてくれるわ!!」
覚醒した妖精のボス、一体どれだけ強いのか……
「その強さ、見せてもらうのじゃ!!」
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