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のじゃロリ魔王姫さまはNPCじゃありません!~ネタキャラ? いえ、レアキャラです!~  作者: 十一屋 翠
第4章 幻妖大陸大戦編

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第50話 妖精の虜

「……う、ううん」


 目が覚めたら石造りの天井が見えた。


「知らない天井じゃ」


 なんとなくノルマを達成した気分になりつつ、何故こんな場所にいるのかを考える。


「確か船に乗っていた筈なのじゃが……」


 それに意識を失っていた? ゲーム内で?

 ILLはリアルで意識を失うと安全のために強制的にログアウトされる筈。

 そうならないのは特別な気絶デバフを喰らった時くらいだ。


 つまり何かしらのデバフを受けたのか?

 確か目が覚める前は……そうだ、逃げた妖精の乗った救命ボートに突っ込んだんだ!


「あの妖精は!!」


 慌てて起き上がろうとするも、何故か手足が自由に動かずバランスを崩して倒れてしまう。


「な、なんじゃこれは!?」


 気が付けば俺の体は拘束されていた。


「目が覚めたようだな」


「誰じゃ!?」


 声の聞こえた方向に顔だけを向ければ、そこには妖精達の姿があった。

 そしてその先頭に立つのは見覚えのある姿で……


「お主はさっきの!!」


 そうだ、救命ボートに逃げ込んだ妖精だ!


「元気そうで何より。全く良くないがな。まさかこんな余計な荷物まで転移についてくるとは、やはり古い遺物は信用できんな」


「遺物?」


 何だ? 妖精の由来の新アイテムか?


「まぁそんな事はどうでもいい。ここまでついて来たからには生かしておけんと言っておこう」


「なら何で意識を失っている間に殺さなかったのじゃ?」


 ゲーム的にはメタな意見だが、後で殺すのにわざわざ拘束するって無意味だよね。


「むろんお前の背後を調べる為だ。何故私があの大怪魚に関係していると知っていた」


「は? お主が言っておったのではないか。「こんな所まで追ってくるとは」と」


「え?」


「ん?」


 あれ? これマジで自分の独り言に気付いていなかったパターン?


「バーソン様……」


 これには後ろに立っていた妖精達も呆れた声を上げる。

そしてこの妖精の名前はバーソンと。


「ンンッ! ゴホンゴホン! そんな事よりだ! 私があの大怪魚と関わりがあると知られた以上生かしておくわけにはいかん!」


「あっ、誤魔化したのじゃ」


「全然誤魔化せてませんよ?」


「うるさいうるさい! とにかくこのガキを殺せ!!」


「はぁ……」


 若干呆れつつも、上司の命令とあって手にした槍を構える妖精達。


「くっ! なんとかこれを!!」


 俺は拘束を解こうと縄に力を入れる。

 しかし縄は細い見た目の割に意外と硬く外れる気配がない。


「ははは無駄だ! それは妖精紐!! 魔力の宿ったその紐は刃にも強く生半可な力で引き千切る事など出来ん!!」


「ぬぐぐぐっ、ならば『マッスルパワー』発動じゃ!!」


 俺は『筋肉バカ』の特殊効果マッスルパワーを発動して瞬間的に筋力を3倍にブーストし縄を引っ張る力を込める。

 するとブチッという音がなって妖精縄を引き千切る。

 筋力ブッパ万歳!!


「ば、馬鹿な!? 妖精縄を引き千切るだと!? 貴様魔族ではなくゴリラ族か!?」


「なんじゃゴリラ族って!!」


 そのまま足の拘束も引きちぎると、動揺している妖精達に飛び掛かる。


「うわぁぁぁぁっ!?」


「ひ、怯むな! 槍のリーチで我々の方が有利だ!!」


 そうは言うが小柄な妖精達の槍は人間でいう短槍程度の長さで、リーチ面での怖さは薄い。

 何より相手は俺にビビっている。


「お主等の体も縄の様に引き千切ってくれようかー!」


「「「ひぃぃぃぃぃっ!!」」」


 完全にビビった妖精が及び腰になる。

 もうどっちが悪役だか分からんね。


「わははははっ!!」


相手が怯えた隙を突いて槍を短槍を奪うとバーソンに襲い掛かる。

ボスのコイツを捕まえて情報を吐かせる!


「た、盾よ!!」


 だが俺の攻撃はバーソンの前に現れた光の盾によって防がれてしまう。


「お、おお! 流石は遺物! 使い切りだがその効果は絶大か!」


 バーソンは手にしたアイテムを捨てるとそのまま逃げだしてゆく。


「逃すか!!」


「と、閉じろ!!」


 更にパーソンの叫びと共に壁が落ちてきて行く手を阻まれてしまった。


「ふぅん!!」


「ひぃっ!?」


 力いっぱい槍をぶち込むと、ドゴォンという音と共にパラパラと天井からから石の欠片が降ってくるが、壁を破壊することは出来なかった。

 あと引っこ抜いたら槍が折れてた。


「ふぅ、ふぅ、ふぅ……は、はは! いかにお前がゴリラでもこの壁を破壊する事は出来ないようだな!」


 ならば殴ればと拳を握ったものの、突然体から力が抜ける感覚に襲われる。


「しまった、マッスルパワーが切れたか」


 この能力、持続時間が短いのが難点だな。


「ははははっ! せいぜいそこで大人しくしているんだな! その間にお前を殺す為の兵をかき集めてくれる!」


 なんとも締まらない脅し文句だが、割と危険な状況だなこれ。


「あのー、それなんですがバーソン様。あの娘、魔王国の王女じゃありませんか?」


「なに?」


 え? 何でモブ妖精が俺の素性を知ってるんだ!?


「以前国交回復ライブで見た覚えがあります。あの顔は確かに魔王国の歌姫マルシェラ姫かと」


 またライブかぁぁぁぁぁぁっ!!


「そうか、あの5種族会議に出ていた娘か! 成程、そうなると話は変わってくるな。この娘が居れば魔王国に対して優位をとれるぞ!」


 げげっ、何か厄介な事言い出したぞコイツ!!


「命拾いしたな小娘! いや敬意を込めてマルシェラ姫とお呼びしようか」


「とってつけた敬語は気持ち悪いぞ」


 優位になった途端ビックリするくらいマウント取ってくるじゃん。


「ははははっ! 閉じ込められては自慢の毒舌もキレが悪いですな! せいぜいその貴賓室でゆっくりされるがよい!」


 そう言うとバーソン達の足音は小さくなり、やがて聞こえなくなった。


「これは、不味いぞ」


 俺は急ぎ周囲を見回して脱出の手段が無いかを探る。

 すると近くに俺と同じように気絶しているレフリス達を発見した。


「起きろお主達」


 俺は全員を起こすと、クールタイムが明けたマッスルパワーで全員の縄を引き千切って自由にする。

 そしてさっきまでの出来事を話す。


「はぁー妖精ねぇ」


「それで見知らぬ建物の中に閉じ込められたと」


「って言うか装備全部奪われちゃってるよ」


「魔法は使えるみたいだが流石に防具無しで戦うのはおっかねぇな」


 全員で状況を確認しつつ相談をすると改めて結構ヤバイ状況だと分かる。

 武器はともかく防具がないのがヤバイ。

後衛で魔法使いのモヒカンはともかく、壁役のヒメキは戦力半減、生産職のレフリスに至っては実質無力だ。

 まともに戦えるのは俺とモヒカンくらいかな。


「この際装備は諦めてマッスルパワーで強引に壁を破壊して建物から脱出かのう?」


 素手で壁を破壊出来ればだけど。


「どれだけ敵の戦力がいるか分かんねぇし、馬で追いかけてこられたら逃げきれんぜ」


「むむむ、困ったな」


 なんとかここの部屋を抜け出して装備を取り返さないと話にならないか。


「あー成る程、結構奥まで聞こえるね」


 ふと気付くとレフリスが壁に耳を当てて何かを調べていた。


「どうしたレフリス、何か良い案でも思いついたのか?」


「うん、ちょっと試してみたい事があるんだ」


 と、何かを思いついたレフリスが作戦を提案してきた。


 ◆


「ではやるぞ。『魔姫咆哮』!」


 俺は魔姫咆哮を発動させると歌い始める。

 曲もメドレー式にして途切れないように歌い続ける。

 そうして暫く歌い続けると、俺は歌い終える。


「どうじゃ?」


「うん、来てるよ。命令してみてマルスくんちゃん」


「分かったのじゃ」


 俺は壁に空いた丸い穴に近づくと、そこの向かって話しかける。


「お主等、わらわをここから出してほしいのじゃ」


「……はい、分かりましたマルシェラ姫様」


 すると返事と共に行く手を阻んでいた壁がせりあがってゆく。


「おおー、上手くいったのう」


 壁の向こうには数人の妖精達の姿があった。

 その先頭に立っていたのは、さっき俺の正体を見破ったバーソンの部下だ。


「マルシェラ姫、なんなりとご命令を」


 彼等は熱に浮かされた様な眼差しで跪く。


「うむ、ではわらわ達の装備を返してほしいのじゃ」


「お任せください」


 妖精達はすぐさま駆け出してゆくと俺達の装備を持って戻ってくる。


「感謝するぞ」


「もったいなきお言葉」


 よしよし、これで問題が一つ解決したぞ。


「しっかしすげぇなお嬢のスキルは。これならこの建物を占拠できるんじゃね?」


 何でこんな事になったのかというと、全てはレフリスの作戦だった。


「ほら、ここにマルスくんちゃんの開けた穴があるんだけど、結構向こうの音が聞こえるんだよね。って事はさ、マルスくんちゃんの魅了の歌で近くを通った妖精を魅了できるんじゃない?」


 ものは試しとやってみたらまさかの大成功。

 こうして俺達は自由と装備を取り戻した訳だ。

 しっかし、歌でピンチになったと思えば今度は歌に助けられるとか。

 もう呪われてる気分だよ。


「さぁそれじゃあこの建物を占拠する為に歌いまくろう!!」


「えーこのまま逃げぬのか?」


 正直これ以上歌関係で活躍したくないんですけど。


「建物から逃げる所を見つけられたら折角の優位が失われます。逃げるにせよ戦うにせよ戦力を増やした方が良いかと」


「むぅ」


 しゃーない、こうなったら観念して歌うか。


「あっ、その前にコイツ等に俺の質問に答える様に命令しといてくれよ。お嬢が歌ってる間に情報収集しとくからよ」


「はいはいなのじゃ」


 そんな訳で俺達はこの建物、モヒカンの尋問によると妖精達が支配する砦の中を歌いながら歩いていた。


「らーらーらー」


 魅了効果が掛かるまではある程度時間がかかる為、エリアを移動する度に都度戦いやすい場所に陣取って歌い続ける。

 そして魅了が掛かって引き寄せられてきた妖精達を引き連れ次のエリアに向かう。

 それを繰り返した事で妖精達はかなりの数になっていた。


「何か無限増殖バグで増やし過ぎた画面みたいになってきたね」


「そうなると最後はマシンが処理しきれなくなって強制終了だな」


 リアルなバグ技ネタやめれ。


「これで砦の仲間はほぼ全員マルシェラ姫の配下となりました」


「うむ。では残るはバーソンとその側近達だけじゃな」


「バーソン様は複数の遺物を持っていますのでマルシェラ姫の歌に抵抗していると思います」


「遺物ってこれだよね」


 とレフリスは先ほどバーソンが捨てたアイテムを見せる。

 スマホくらいの大きさのそれは大きな亀裂が入っていて明らかにもう使えそうもない。


「はい、遺物は古代遺跡から発見されるアイテムの一つで、一度きりの使いきりですがその分非常に強力です」


「船からこの砦に移動したのも遺物の力なのじゃな?」


「はい、使い捨ての転移の遺物です」


「使い捨て転移アイテムか。犯罪や破壊工作をする相手には最高の逃走方法だな」


「ですがこのアイテムは数が少なく、使うタイミングの見極めが重要です」


 あー、それはエリクサー症候群になりそうなアイテムだなぁ。


「エリクサーみたいに使わずじまいで終わる奴だ」


 やっぱ思うよな。ヒメキもうんうんと頷いているってことは使わずにゲームクリアした経験あるな。


「バーソン様はこちらにいらっしゃいます」


「……」


 俺達は無言で頷くと静かにバーソンの部屋の扉を開く。

 そして中の様子を伺う。

 するとバーソンは機嫌良さそうに何かの書類を書いていた。

 恐らくは俺を捕らえた事を上役に豊北する為のものだろう。

 近くにはバーソンの護衛らしき妖精が4人。


 再度仲間達と頷き合うと、妖精達の方を向いて合図を送る。

 すると一斉に妖精達が部屋の中へ飛び込んでゆく。


「な、なんだお前達!?」


「バーソン様ご容赦を!!」


「ら、乱心したか!?」


 仲間達が殺到した事に困惑した護衛達だったが、すぐに我に返ってバーソンを守ろうと武器を構える。

 が、本当に攻撃して良いものかとバーソンの指示を待った一瞬の隙を突かれて押し倒され、無数の妖精達がのしかかって来て身動きがとれなくなってしまう。


 そして武器を奪われ、手足を拘束され、口を塞がれて完全に身動きできなくされてしまう。

 そんな彼等の護衛対象であるバーソンも遺物を使えない様に押しつぶされたあとは両手を拘束され、身ぐるみを剥がれて素っ裸にされていた。


「システム制限で最低限の服は残るけどなー」


 まぁその辺は未成年も遊ぶゲームだから仕方ない。


「ありました。デバフ効果を無効化する遺物と転移の遺物です」


 やっぱり持ってたかー。


「形勢逆転じゃな」


 バーソン達を完全に無力化した俺達は悠然と部屋に入ると、床に押し付けられたバーソン達を見下ろす。


「ムガーッ!! ムガガガッ! ムガー!」


 口を塞がれているので何を言っているか分からないが多分「何故自由の身になっている!?」

「何故部下がお前に従っている!?」あたりだろうか。


「ふふふ、お主人望がないのう。お主の部下達はお主よりもわらわの方が主に相応しいと自ら臣従を求めて来たぞ」


「ム、ムガーーーーッ!!」


「わー悪役っぽーい」


「実際魔族はゲームだと悪役が多いしな」


「邪悪な本性を現した少年悪役主、良いな」


 ヒメキさん性癖ステイ。


「けど実際えげつないよな。魅了した敵を突っ込ませて物量の差で圧殺するとかよ。プレイヤー側の戦い方じゃねーぜ」


 いやその邪悪な作戦立案したの君だからねモヒカン君。

「普通に戦ったらどんな遺物を使ってくるか分かんねぇし最悪転移で逃げられる危険がある。だから相手の意表をついて行こうぜ!」って言ったのお前なんだよ。


「じゃあやっちゃおうか!」


 ガシッとバーソンの頭を掴んでこちらに向けてくるレフリス。

 他の妖精達の同じように魅了した妖精達によって強引に顔を向けられる。


「ム、ムガ?」


 これから何をされるのかとバーソンの顔が困惑と恐怖に包まれる。


「なーに、痛い事はせんよ。ちょっとわらわの歌を聞いてもらうだけじゃ『魔姫咆哮』」


 そうして暫く歌い続けた結果……


「「「「マルシェラ姫、何なりとご命令ください」」」」


 すっかり従順になった部下が増えたのだった。


「さて、それではお主が知っている事を教えて貰おうか」


 何せ他の妖精達は下っ端ばかりで碌に情報が集まらなかったからな。


「ここはどこでお主等の目的はなんじゃ?」


「はい、ここは妖精国南部の辺境にある廃砦を利用した建物で、私達の目的は妖精国の乗っ取りです」


「成る程、妖精国の乗っ取り……って、妖精国ぅぅぅぅぅぅぅっ!?」


 おいおいおいおい、妖精大陸って一番最後に行く予定だった場所じゃねぇか!!

 しかもなんか、国家存亡の危機に首を突っ込んちゃったみたいなんですけどぉーっ!?

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