第42話 湖を奏でる音色
本日は拙作「先日勇者から助けて頂いた聖剣ですが」のコミックスの発売日です!!
最高にキモ可愛い聖剣が活躍する面白ファンタジーですので皆さんぜひお手に取ってみてください!!
「カサータ湖に潜む伝説の魔物カッシーの正体を探るべく、我々探検隊は魔王国南部のカサータ湖へと向かっていた」
「見てください。この巨大な湖! カッシーが居てもおかしくありません!」
「あ奴等は何をやっとるんじゃ」
昔観た『配信が主流になる前の映像番組特集』だったかで見たミステリー番組みたいな事をして遊んでるプレイヤー達が居る。
「まぁ男のロマンって奴だな」
まぁ分からんでもないけど。
リアルだと大抵のUMAは科学的に解明されてミステリーの居場所はどんどんなくなっていってるからなぁ。
諸々の準備を終えた俺達は、カッシーを討伐すべくカサータ湖へとやってきた。
「しかし兄貴に会っとかなくてよかったのかお嬢?」
「例の件は内密にしたいのが先方の希望じゃからな。わらわが会いに行くと痛くもない腹を探られかねん」
「そういうもんかい」
「そういうもんじゃ」
まぁゲームの兄弟だから情もへったくれもないんだけどさ。
「姫、この辺りです」
湖沿いに奥まで進んでゆくとヒメキが目的地に到着した事を告げる。
「確かにいかにも出そうじゃのう。じゃがどうするんじゃ? 出るまで待つのか?」
「ヒメキさんの時はどうだったんですか?」
「私の時は戦闘の真っ最中に現れたな」
「となるとモンスターを湖の傍まで誘導して戦うか」
「いや、もっといい方法がありますよ姫様!」
元気よく手を上げたのは以前一緒に戦ったパンケーキングだった。
「ほう、何か良い手立てがあるのかパンケーキングよ」
「おお! 俺の名前を憶えていてくれたんですか!? 感激です!!」
そりゃそんなふざけた名前した奴いたら忘れられんわ。
いやネトゲとかやってると結構いるけどそういう奴。
「で、その方法とは?」
「ずばりライブです!!」
「……は?」
「姫様の野外ライブを開催してカッシーに騒ぎが起きていると知らせるんです!!」
「待て待て待て待て、何でそんな事せんといかんのじゃ。普通にモンスターをおびき寄せて戦えばいいじゃろ」
「いえ! 俺達はこれからレイドボスと激戦を繰り広げます! なのにいつ戦いに気付くか分からないボスを待って雑魚と延々戦うのは無駄な消耗を引き起こすだけです!」
「むぅ」
ぐうの音も出ない正論。
「これにはもう一つメリットがあります! 姫様の『歌姫の加護』を使って歌えば、レイドボスが姿を現した時点で準備万端で戦いに挑めます! 姫様の回復バフは削り合いの序盤でこそ輝きますし!」
くっ、いちいち正論で攻めてきやがる!
「だからライブしましょう野外ライブ! 湖をバックにライブとか最高にロックですよ!! 姫様の歌声でドラゴンを呼び寄せる! 名付けて天の岩戸ライブ!!」
お前それが言いたかっただけだろ!!
「「「「ラッイッブッ! ラッイッブッ!」」」」
レイドに参加する為にやって来たプレイヤー達がライブコールを響かせる。
「姫! 彼等は姫の為に恐ろしい敵に挑むべくやって来た有志いや勇士達です!! 命がけの戦いをする為にやって来た彼等を応援する為と思ってお願いします!!」
「「「「お願いしまーーーーーーす!!」」」」
ライブコールをしていたプレイヤー達が一糸乱れぬ動きで一斉にスライディング土下座をしてくる。
「土下座をするなーっ!! ああもう分かったのじゃ!!」
「「「「やったーーーーーーっ!!」」」」
勿論だが決して土下座をされたから承諾した訳じゃない。
彼等が皆を騙している俺の為にレイドに参加してくれるからだ。
俺にだって罪悪感はある。
今回で二回目、国交回復調印式を合わせれば三度俺は皆を巻き込んでいる。
決して言えない事情があるからこそ、彼等の働きに報いる必要があると言われれば強くは抵抗できないのが悲しいところだった。
「はぁ、仕方ないのじゃ」
さっさと歌ってレイドボスに出てきてもらおう。
「あっ、歌う前に水着に着替えてくださいね! 今日の為に用意してくださったんですよね」
「何で知っとるんじゃーっ!!」
ってレフリスに決まってるか!!
俺はギロリとレフリスを睨むと、何故か今日に限って彼女は挙動不審気味に視線を逸らすとそそくさと離れようとする。
なんだこの反応?
「姫、カッシーが出てきてから装備変更をしたら姫の歌が中断されてしまいます! そうなるとクールタイムや余計な消費MPが発生してしまいます!」
「それは確かに」
歌姫の加護は歌っている間ずっと効果を発揮する便利なスキルだが、歌が途中で止まってしまうとクールタイムが発生するデメリットがある。
パンケーキングの提案した作戦を考えると確かに最初から水着を装備しておいた方が良いか。
「む? そうなると……」
水着に着替える必要性に納得した俺は、水着と言うワードに引きずられてある事を思い出す。
ああ成程、そういう事か。
「お主の言いたいことは分かったのじゃ。確かにそう考えると先に装備を変えておいた方が良いのう。そうは思わんかヒメキ」
「はっ、仰る通りです」
俺の言葉に同意するヒメキがレフリスの腕をつかんでいる。
素晴らしい、どうやらヒメキも同じ結論に至っていたようだ。
「レフリス、ヒメキ、共に水着に着替えるぞ!!」
「はっ! 装備を変更するぞレフリス!」
「あ、えっと、はい……」
観念したように肩を落として頷くレフリス。
その光景に満足した俺達は水着に装備を変更する。
「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! スク水のじゃロリ姫の湖野外レイドコンサートだぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
「属性とシチュエーションが多すぎるのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「しかもヒメキさんの水着もスゲェ!」
「あれは本当に競泳水着なのか……!?」
「くっ、ころ……ゴホン」
あ、耐えた。
「それにレフリスちゃんもすげぇぞ!! まさかあの子も水着になってくれるなんて!」
「それもかなり際どいデザイン! 自分でデザインしたのかな?」
「うう、見ないでぇ……」
恥ずかしそうに手で水着を隠すレフリスだったが、そんな事をしたら余計煽情的な光景になる訳で、まぁ皆ヒートアップしますよ。
「うぉぉぉぉぉぉっ! 新しい萌えぇぇぇぇぇろ!!」
誰だ今エロって言ったヤツ。
「ともあれ、悪い事は出来んもんじゃなレフリス」
「うぅぅぅ」
レフリスの奴、ホントは俺達だけハデな水着にして楽しもうとしたんだろうな。
でも無難な水着でお茶を濁そうとしてたのがバレて仕返しにデザインを過激に改造されちまったから大慌てって訳だ。
だから過激な水着姿を見られたくなくてコソコソしていたんだろうな。
「はっはっはっ、残念だったな」
「では姫様! ライブお願いします!!」
うん、それはそれとして俺の恥は絶賛進行中です。
うぉーーーーっ!! 一緒に恥をかこうぜぇーーーー!!
◆
カサータ湖で少女の歌声が響く。
はい、俺の歌声です。
ただし歌の内容は湖の神秘性とは真逆の騒がしいアイドルソングだ。
『次のナンバーいくのじゃ!!』
ちなみに歌が終わると強制的に歌姫の加護は解除されるんだが、これには裏ワザとでもいうべき回避方法があった。
その裏ワザとは、曲を途切れさせずにメドレーとして繋げる事だ。
これをやると歌姫の加護は解除されずに継続して効果を発揮するのである。
ウチのギルドの作曲家先生の徹底的なスキル検証で判明した効果だ。
主に頑張ったのは俺だが。
と言う訳で安心して次の曲にいける訳だが、そんな風に騒いでいればまぁ敵が来るよね。
「ぐぉぉぉぉっ!!」
「ばぉぉぉぉぉっ!!」
「うぉぉぉっ!! ライブの邪魔するんじゃねぇーーっ!!」
襲ってくるモンスター達を観客達がタコ殴りにしてゆく。
今の彼等は常時HPMP回復効果があるから、MP切れの心配なくモンスターを迎撃出来ていた。
「「ぎゅぉぉぉぉぉ……」」
更に数の暴力でモンスターが沈んでゆく。正直可哀そうになるぜ。
そんな感じでモンスターを迎撃しながらライブを続けていると、不意に湖が波立ち始めた。
風も吹いていないのに明らかに不自然な光景だ。
ついに来たか!
俺は観客、いやプレイヤー達に敵が来たと視線を送る。
「「「「うぉぉぉぉぉっ!! 姫が俺を見たぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」
「いや俺だ!」
「俺に決まってるだろ!!」
「敵じゃばかもーんっっ!!」
本来の目的を忘れてるんじゃねーよっ!!
ついうっかりツッコミを入れてしまったその時、湖の水が天へとそそり立つ。
「クォォォォォォォォォォンッ!!」
否、水を吹き飛ばして鎌首をもたげるは巨大な水棲爬虫類。
そう、カッシーだ!
「出たなカッシーッ!!」
ここに、第二のドラゴン討伐レイドバトルが始まったのだった!
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。




